平均時給が上がる業種は?
~平成28年度地域別最低賃金改定の影響について~
アイデム人と仕事研究所 関 夏海
地域別最低賃金の改定で平均時給にはどんな変化があるのか?(西日本)
表3は、表2で示した項目を西日本の発行エリア地域でまとめたものです。各地域の差額に注目してみると、「滋賀県」は2円増、「京都府」は4円増、「大阪府」は8円増、「兵庫県」は5円増、「奈良県」は2円増、「和歌山県」は3円増、「岡山県」は2円増、「愛媛県」は1円増、「福岡県」は6円増となりました。差額を割合で表した平均時給上昇率は0.5%以下の地域が多く、差額からは大きな変化はみられませんでした。
府県ごとに業種・職種別の改定影響率をみると、東日本同様に地域によって異なる傾向がみられました。地域別改定影響率が高かった「大阪府」と「和歌山県」では、業種・職種別にみても高い影響率となった項目が多くありました。特に「大阪府」では、改定影響率50.0%以上の業種が三つ、職種は四つあり、今回の集計で最も影響を受けている県だということが、改めて判明しました。
最後に、改定影響率を業種ごと・職種ごとに比較してみました(表2、表3)。「製造業」、「小売業」、「飲食業」では、改定影響率40.0%以上の地域がそれぞれ4都府県あり、最低賃金改定の影響を受けやすい業種であると考えられます。一方、「医療・福祉関連サービス業」では、改定影響率20.0%を越える地域はなく、最低賃金改定の影響を受けにくい業種であるようです。「サービス職(その他)」と「サービス職(飲食調理)」では改定影響率40.0%以上の地域が5府県あり、最低賃金改定の影響を受けやすい職種であると考えられます。
一方で、「専門・技術・管理職」では、改定影響率15.0%を越える地域はなく、最低賃金改定の影響を受けにくい職種であるようです。
平成28年6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」、「経済財政運営と改革の基本方針2016」、「日本再興戦略2016」の中には、『最低賃金は年率3%程度の引上げを目途として、全国加重平均が1,000円となることを目指す』といった内容が盛り込まれています。今年10月に発効される地域別最低賃金も、来年の10月になればさらに高額の発効となることが予測できます。そうなれば、今回の調査では改定影響率が低かった地域・業種・職種でも、賃金の引上げをせざるを得ない状況になるかもしれません。
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文/関 夏海(せき・なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。同年8月、人と仕事研究所に配属。賃金に関する統計・分析を担当。人と仕事研究所WEBサイトで発信している労働関連ニュースの原稿作成なども行っている。
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