2016年度労働時間総合調査
所定・総労働時間、休日・休暇、時間外労働等の最新実態(労務行政研究所編集部)
4. 時間外労働の実態
時間外労働の実態[図表19]
1人1ヵ月当たり平均18.6時間
15年度の時間外労働時間は、全社または本社の男女計・1人1ヵ月当たりで平均18.6時間となった(時間表示は十進法。以下同じ)。
規模別では、1000人以上21.5時間、300〜999人17.4時間、300人未満14.9時間で大手ほど長い。
また、男女別にも回答があった企業を見ると、男性21.3時間、女性11.7時間で、男性のほうが9.6時間長い。これを年間に換算すると、男性のほうが約115時間長いことになる。
法内残業分を含むか否かで見た実態[図表20]
「法内残業分を含む」ほうが、「含まない」よりも5.2時間長い
1日の所定労働時間を法定労働時間(8時間)より短く設定している場合、終業時刻を超えて実際に働いた時間が8時間に達するまでの、いわゆる「法内残業」が生じることになる。ここでは、[図表19]で見た時間外労働時間を、「法内残業」分を含むか否かに分けて集計し、比較した。
なお、労基法で定める割増賃金の支払い義務が生じない「法内残業」については、割増賃金を一切支払わないケース、通常の時間外と同様に支払うケース、通常とは異なる割増率で支払うケースなど、企業によって取り扱いが異なる。ここでは、こうした割増賃金の取り扱いとは関係なく集計している。
[図表20]を見ると、法内残業の取り扱いについて回答があった216社のうち、「所定労働時間は8時間」の92社を除いた124社では、「法内残業分を含む」が103社(83.1%)と8割以上を占める。1ヵ月当たりの時間外労働は、「法内残業分を含む」19.8時間、「法内残業分を含まない」14.6時間で、「含む」のほうが「含まない」よりも5.2時間長い結果となった。なお、そもそも法内残業が発生しないケースである「所定労働時間は8時間」の場合の時間外労働は18.3時間であった。
休日労働分を含むか否かで見た実態[図表21]
「休日労働分を含む」ほうが、「含まない」よりも6.1時間長い
休日労働分を含むか否かで時間外労働を見ると、男女計では「休日労働分を含む」が平均20.0時間で、「休日労働分を含まない」は同13.9時間だった。「休日労働分を含む」ほうが、「含まない」よりも6.1時間長い。
男女別に見ると、男性は「休日労働分を含む」22.9時間なのに対し、同「含まない」は16.0時間で、前者が6.9時間長い。女性の場合も同様に、「休日労働分を含む」11.9時間、同「含まない」10.5時間で前者が1.4時間長いものの、男性に比べるとその差は格段に小さい。
業種別の実態[図表22]
陸運の月平均33.9時間が最長
[図表22]に、業種別に見た時間外労働の実態を示した。業種によって集計(回答)社数にバラつきがあり、社数の少ないところでは必ずしもその業種の実態を反映していない場合もあるので、利用の際には留意いただきたい。
最も長いのは陸運の33.9時間で、以下、倉庫・運輸関連31.2時間、建設27.5時間、情報・通信24.3時間、海・空運24.2時間、サービス23.8時間、不動産22.5時間と非製造業が続く。製造業で最も長いのは、輸送用機器の21.1時間である。
上記のように、長時間の業種は非製造業のほうで多い。製造業・非製造業別の平均は製造業16.7時間、非製造業21.1時間で、非製造業のほうが4.4時間長い。
■ 所定労働時間と時間外労働との関係
月間所定労働時間と時間外労働時間との関係を見てみよう。両方のデータが得られた企業を、それぞれの平均値(月間所定労働時間158.55時間、1人1ヵ月当たり時間外労働時間18.6時間)を境に、以下の4パターンに分類した(いずれかが平均値と同じ場合は集計から除く。[図表]なし)。
[1]月間所定労働時間、時間外労働時間とも短い…58社(26.9%)
[2]月間所定労働時間は長く、時間外労働時間は短い…56社(25.9%)
[3]月間所定労働時間は短く、時間外労働時間は長い…44社(20.4%)
[4]月間所定労働時間、時間外労働時間とも長い…58社(26.9%)
所定内・外ともに平均を下回っている企業([1])、反対に両者とも平均を上回っている企業([4])がそれぞれ26.9%と、同率で並ぶ。
上記は個別企業ごとに分類したものであるが、次に業種別の状況も見るため、業種別の平均値から得られる所定労働時間と時間外労働の関係を[参考3]に示した。今回の調査では、所定、時間外とも長い傾向にあるのは陸運、輸送用機器、建設など、反対に両方とも短い傾向にあるのは精密機器、化学、繊維、金融・保険である(ただし、集計[回答]社数が少ない業種では、その業種の実態を表さないこともあるため留意いただきたい)。
さらに、年休取得率と時間外労働の両方のデータが得られた企業について、それぞれの平均値を境に、両者の関係を分類してみた(年休取得率の平均は49.5%、時間外労働の平均は18.6時間。[図表]なし)。
(1)年休取得率は高く、時間外労働は少ない…57社(28.8%)
(2)年休取得率は高く、時間外労働は多い…54社(27.3%)
(3)年休取得率は低く、時間外労働は少ない…50社(25.3%)
(4)年休取得率は低く、時間外労働は多い…37社(18.7%)
今回の調査では、年休取得率と時間外労働の間に明確な相関関係(例えば、時間外労働が多い企業では年休取得が進んでいない)は見られなかった。
分布状況[図表23]
「15〜20時間未満」が18.7%で最も多いものの、分布にはバラつきが見られる
男女計の全産業を見ると、最低0.0時間から最高80.2時間まで、幅広く分布している(なお、最高値80.2時間の企業は、法内残業分・休日労働分を含むデータである)。「15〜20時間未満」の18.7%が最も多いが、以下「10〜15時間未満」と「20〜25時間未満」各17.8%、「5〜10時間未満」11.9%というように、分布はバラついている。
男女別では、男性は「15〜20時間未満」19.6%、「20〜25時間未満」16.0%、「10〜15時間未満」12.3%とバラつきが見られる。一方、女性は「5〜10時間未満」31.9%、「10〜15時間未満」27.6%、「5時間未満」16.6%で、10時間未満までに48.5%と半数弱、15時間未満までに76.1%と4分の3が集中している。また、30時間以上の割合を見ると、男性は22.1%なのに対し、女性はわずか4.9%である。
推移[図表24]
11年度以降は17時間台だったが、14年度は4年ぶりに18時間台に乗り、15年度はさらに増加
[図表24]に、08年度以降の時間外労働の推移を示した。リーマンショック(08年9月)後の09年度は、深刻化する景気低迷により08年度を2.8時間下回る16.9時間。ITバブル崩壊直後の01年度(16.8時間)とほぼ同水準となった。その後10年度は18.3時間と増加したものの、以降は11年度17.9時間、12年度17.3時間、13年度17.7時間と、17時間台で推移してきた。14年度は18.1時間で、4年ぶりに18時間台となった。15年度はさらに増加し、18.6時間と18時間台後半になった。
[図表24]に当所調査と併せて示した厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(事業所規模5人以上・一般労働者)では、09年度の12.0時間が最も少なく、以降は漸増傾向にある。
1. 調査項目:
(1)2016年度労働時間・休日日数(本社)
a)1日当たり所定労働時間
b)年間所定休日日数
c)年間所定労働時間(対象期間は原則として2016年4月〜2017年3月の1年間)。また、前年度の労働時間との比較のため、前15年度分も併せて調査
(2)年次有給休暇の取得状況(最近1年間)
(3)年次有給休暇の付与条件と付与日数
(4)時間外労働の実績(2015年度)
2. 調査時期・方法:2016年5月9日に調査票を発送、7月8日までに回答のあったものを集計。
3. 調査対象:全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3515社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)293社の合計3808社。ただし、持ち株会社の場合は、主要子会社を対象としたところもある。
4. 集計対象:上記調査対象のうち、回答のあった230社。集計対象会社の業種別、規模別の内訳は[参考表]のとおり。会社名・所属業種については、調査時点におけるものとした。なお、項目により集計(回答)企業は異なる(項目により回答していない企業があるため)。
5. 利用上の注意:図表の割合は、小数第2位を四捨五入し小数第1位まで表示しているため、合計が100.0%にならない場合がある。また、本文中で割合を引用する際には、実数に戻り再度割合を算出し直しているため、図表中の数値の足し上げと本文中の数値とは一致しないことがある。
【参考表】業種別、規模別集計対象会社の内訳
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