給与の日割り計算
月の途中に従業員が入退社した場合や欠勤があった際に必要となる手続きが、給与の日割り計算です。給与計算は、ミスやトラブルが起こりやすい業務の一つ。正確に遂行するためには、日割り計算のルールや計算方法を理解することが重要です。
1. 給与の日割り計算と法律の関係性
給与の日割り計算は、法律に特別の定めがありません。そのため、計算方法などのルールは各企業の裁量で決定できます。ただし、自由に決めてよいといっても、根拠のある合理的な計算方法が求められます。また、就業規則などに計算方法を明記し、全従業員に対して公平に適用することが重要です。
2. 給与の日割り計算の方法
給与の日割り計算においては、基本給と手当で考え方が異なります。
基本給の日割り計算
基本給の日割り計算方法を、三つ紹介します。暦日を使う方法、所定労働日数を使う方法があり、後者は二つに分かれます。
暦日を用いる方法
当該月の暦日を用いて計算する方法です。計算方法は下記のとおりです。
【例】基本給150,000円の従業員が、11月に10日間出勤した場合
150,000円÷30日×10日=50,000円
この計算方法の特徴は、暦日が少ない月は金額が高くなり、暦日が多い月は金額が安くなる点です。例えば、2月は28日もしくは29日であるため金額が50,000円以上になり、5月や10月など31日ある月は50,000円より安くなります。シンプルでわかりやすい計算方法のため、計算過程のミスが起こりにくいことや、事務の煩雑化を防ぐメリットがあります。
当該月の所定労働日数を用いる方法
日割り計算が必要となる月の所定労働日数を用いて計算する方法です。計算方法は下記のとおりです。
【例】基本給150,000円の従業員が、所定労働日数22日の月に10日間出勤した場合
150,000円÷22日×10日=68,181.81……円=68,182円
所定休日分を数えないため、暦日を用いる計算方法よりも金額が高くなることが特徴です。月ごとの所定労働日数には違いがあるため、月によって1日当たりの金額が変わります。
月平均の所定労働日数を用いる方法
一月当たりの平均所定労働日数を用いて算出する方法です。これまで紹介した二つの方法よりも、少し計算が複雑です。計算方法は下記のとおりです。
年間所定労働日数÷12=月平均の所定労働日数
基本給÷月平均の所定労働日数×出勤日数=支給額
【例】基本給150,000円の従業員が、所定労働日数22日の月に10日間出勤した場合
※年間所定労働日数は246日と仮定する
246日÷12ヵ月=20.5日
150,000円÷20.5日×10日=73,170.73……=73,171円
この計算方法の特徴は、月平均の所定労働日数を用いるため、いずれの月でも1日当たりの単価が同じになることです。月による損得が生まれないというメリットがあります。
手当は日割り計算の対象外とすることが多い
手当は生活の負担を補う福利厚生的な意味合いが強いことから、日割りにする理由がないケースが多くなります。例えば、住居手当や扶養手当は、出勤日数に関連して必要性が変動するものではありません。
手当について日割り計算をする合理的な理由がない場合は、計算の対象外として満額支給することが望ましいでしょう。
3. 日割り計算の注意点
計算方法の他にも、日割り計算を行うためにはルールの明記とトラブル防止の心構えが重要です。
計算方法は就業規則や賃金規定に明記する
日割り計算の方法は、就業規則や賃金規定に明記し、それらに準拠して運用する必要があります。法律による明確な決まりがないからこそ、従業員全員がわかる形にしてルールを明らかにすることが重要です。
計算方法が統一されていないと、給与計算の担当者によって計算方法が変わってしまい、同じ条件で働いている従業員間に格差が生じる可能性もあるでしょう。規則に盛り込むことで計算方法が統一され、事務上のミスや煩雑化を防げるというメリットもあります。
従業員の不利にならないようにする
日割り計算の方法は企業側が自由に決めてよいものではありますが、従業員にとって極端に不利になる計算方法は適切ではありません。仮に当該月に1日しか勤務していなかったとしても、労働に対する対価として適切に支払う必要があります。
給与の正確かつ公正な支払いは、従業員の信頼に直結する要素です。従業員の不利になるような計算方法は、従業員の信頼を失うことにつながり、トラブルに発展する可能性もあります。
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