【ヨミ】イーラーニング eラーニング
社員の早期戦力化やスキルアップに欠かせないのが社員研修です。しかし、研修を実施するためのコストや労力にくわえ、学ぶ側の時間調整や効率といった問題から、従来の社員研修にはさまざまな課題も存在します。そうしたなか注目を集めているのが、時間と場所を選ばず学べるeラーニングです。ここでは、eラーニングを導入するメリット・デメリットをはじめ、実施方法や注意点について説明します。
1.eラーニングとは
eラーニングはelectronic learningを略したもので、電子技術や情報技術を活用した学習方法のことをいいます。パソコンやスマートフォン、タブレットなどのデジタル機器を使用し、インターネット環境などを通して提供されるコンテンツを自主的に学習する方法です。
eラーニングを導入することで、学習者はデジタル機器を使用して、自分の好きな時間・場所で主体的に学習できるようになります。新人研修や各階層の研修をはじめ、ナレッジの共有、社内制度の理解促進、資格取得などさまざまな場面で活用されています。
現在ではSNSなどの仕組みを利用してコミュニケーションをとることができる、双方向性を持つ学習スタイルが増えています。学びやすさだけでなく、学習意欲の向上を目指した手法を取り入れるなど、学習効果を高める工夫がなされています。

2.eラーニングの導入が進む背景
eラーニングは、近年急速に普及が進んだ学習方法です。この背景には、従来型の研修スタイルと現代のビジネス環境との間にさまざまな課題が生じていることがあります。eラーニングの歴史を追いながら、導入する企業が増えている理由を見ていきます。
eラーニングの歴史
従来行われてきた集合研修には多くの手間やコスト、時間がかかるため、効率のよい研修方法が求められてきました。そこで登場したのがeラーニングです。
(1)「CAI(Computer Aided Instruction)」1970年代~
eラーニングが登場したときは、今のスタイルとは少し異なっていました。このころのeラーニングはCAI(コンピュータ支援学習)と呼ばれ、コンピュータを研修や学習の補助的な道具として使おうという考え方が広がります。理解度に応じた研修内容を用意するために、さまざまなシステムが考えられました。
(2)「CBT(Computer Based Training)」1990年代~
1990年代になると、パソコンが一般家庭に普及します。さらに、CD-ROMの登場によって大容量のデータを格納できるようになりました。これによって、パソコンとCD-ROMを使って学ぶという、現在のeラーニングに通じる学習スタイルが一般に広く浸透していきます。
(3)「WBT(Web Based Training)」2000年代~
CD-ROMを使った学習方法では、コンテンツの修正があった場合に、その都度記録し直す手間やコストがかかります。また、学習の進捗を管理しにくい、というデメリットもありました。
2000年代に入ってインターネットの普及が進むと、CBTのデメリットを解消するWBT(Webラーニング)が登場し、「eラーニング」という言葉が頻繁に使われるようになります。WBTはインターネットを通じて研修を受けられるもので、現在のeラーニングではこの形態が多く活用されています。
このように電子技術を活用した学習スタイルは時代とともに進化を遂げてきましたが、CAIやCBTがなくなったわけではありません。eラーニングというと、インターネットを利用した学習方法と捉えられがちですが、広義にはこれらの電子技術を活用した学習方法の総称となっています。
eラーニングを導入する目的
OJT(On-The-Job Training)では学べない知識や技術を習得する方法として、従来から社員研修は重要な位置づけとして認識されてきました。しかし、従来型の集合研修では多くの手間やコスト、時間がかかるため、実施に踏み切れない、または何度も行えないという現状がありました。
eラーニングでは、これらの課題を解決しながら社員に学習の機会を与えることが可能です。個々の能力開発はもちろん、モチベーションアップにつなげるなど、組織力向上を目的に導入するケースも見られます。
スピードが重視される現代のビジネス環境において、早期戦力化に役立つ学習法として企業の導入が進んでいます。
3.eラーニングのメリット
eラーニングを導入することで、学習者側(従業員)・企業側のそれぞれにどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に見ていきます。
学習者側のメリット
(1)場所を選ばず学習できる
eラーニングの受講者はインターネットがつながる環境であれば、場所を選ばず勉強できるので、自分のスタイルに合わせて学習できます。
(2)コストがかからない
eラーニングは、パソコンやスマートフォン、タブレットを使って、指定されたサイトにアクセスするだけで研修を受けることが可能です。受講するために特別な器具などは必要ないため、コストの負担がありません。
(3)自分のペースで学習できる
eラーニングは集合研修と違い、研修を受ける時間が指定されていません。空き時間を利用して研修を受けることもできます。また、受講期間内であれば、途中まで学習して続きは明日というように、自分のペースで研修を受けることができます。一度受講した内容を再度繰り返して、復習することも可能です。
(4)画像や音声で理解度を深めやすい
eラーニングでは画像や音声を効果的に用いた研修が多くあります。文字のみの教材よりも理解度を深めやすい、というメリットがあります。
(5)フィードバックを受けられる
eラーニングの研修のなかには、理解度テストを行うものもあります。テストの結果を即座にフィードバックしてくれるため、短期間で習熟度を上げることが可能です。
企業側のメリット
(1)運営コストを削減
eラーニングを導入することで、集合研修の実施時にかかっていた会場代や会場までの交通費、講師費用などを削減できる可能性があります。とくに大人数で実施していた場合には、コストメリットが大きくなります。
(2)研修担当者の負担が減る
集合研修では、受講者のスケジュール調整や研修場所の確保、講師との打ち合わせなど、研修担当者に多くの負担が発生します。eラーニングではその手間がなくなるので、研修担当者が別の仕事に時間をかけられるなど、時間を有効活用できるようになります。
(3)受講者の進捗管理が簡単にできる
eラーニングでは、ネットワークによって誰がどこまで研修を受けているのか、簡単に進捗を確認できます。遅れている人には受講を促すなどして、対象者が滞りなく受講を完了するよう管理することが可能です。
(4)最新の教材を提供できる
eラーニングでは、自社に合った研修教材(コンテンツ)を作成することができます。また、保険料率などの法令関係では、毎年のように改正があるため、つねに新しい内容の教材を提供する必要がありますが、eラーニングでは、研修の教材を簡単に修正することが可能です。

- 【参考】
- eラーニングと集合研修の特徴
4.eラーニングのデメリット
次に、eラーニングを導入した際のデメリットを学習者側(従業員)と企業側に分けて見ていきます。
学習者側のデメリット
(1)リアルタイムの交流ができない
eラーニングでは、「よくある質問」やFAQ、ナレッジなどを用意していますが、集合研修のように講師へリアルタイムに質問するなどの交流はできません。
(2)体験をともなう研修ができない
eラーニングは、パソコンやスマートフォン、タブレットによる研修がメインのため、実技をともなう体験型の研修には向きません。ただし、昨今では、VRを活用したeラーニングも増えているので、実技学習に使用されることもあります。
企業側のデメリット
(1)配信・管理するためのシステムが必要
eラーニングを自社で行うには、コンテンツを配信したり管理したりするシステムが必要となります。そのため、初期費用がかかります。
(2)教材制作に専門性や技術が必要な場合がある
コンテンツによっては、作成にあたって専門知識や技術が必要になる場合があります。そのため、コンテンツ作成者の育成に手間やコストがかかるケースも出ています。
(3)受講者の学習意欲の低下
eラーニングでは、集合研修のように受講者と対面式でやりとりができません。受講者の質問にタイムリーに答えるなどのフォローができないことで、学習意欲や理解度が低下し、当初の計画より成果が出ない可能性もあります。

- 【参考】
- eラーニングの目的別活用法
5.eラーニングを行うために必要なもの
ここからは、実際にeラーニングを実施するにあたって、必要となるものを説明します。
学習管理システム(LMS)
LMSはLearning Management Systemの略で、eラーニングを運用管理する学習管理システムのことを指します。eラーニングでの学習を進めるにあたっては、インターネットを通じてコンテンツを配信する学習管理システム(LMS)が必要になります。
LMSの主な役割は受講生の学習状況の管理と教材(コンテンツ)の管理です。テストの実施やフィードバック、結果データを集計して蓄積するなどの機能を備えているほか、SNS機能を持たせるなど、さまざまなものが出ています。LMSを通じて、これらを一元管理することができます。
eラーニング教材
eラーニングで学ぶ教材を準備する必要があります。パワーポイントなどで作成することも可能ですが、文字や音声、画像、動画などの要素を入れたコンテンツが現在の主流となっています。自社独自の内容で作成する、または、オンライン上で提供されている学習コンテンツから利用することもできます。
教材は自社で制作する方法、外部に委託する方法があります。学習内容や予算に合わせて検討するとよいでしょう。
eラーニング運用支援
学習管理システム(LMS)とeラーニング教材がそろえば、eラーニングを開始することができます。くわえて、eラーニングを開始する前にもう一つ決めておきたいのが、eラーニングの支援体制です。
受講者のモチベーション維持や受講が遅れている人へのフォローなど、学習のトータルケアを行うアドバイザーや、質問に回答するチューターといった運用支援担当者を決めておくと、運営がスムーズになります。

6.eラーニング実施時の注意点
eラーニングを実施する際は、学習の目的と対象者、学習タイミングを明確にしておくことが重要です。これらが不明瞭のまま実施してしまうと、効率的に学習効果を上げていくことができません。
また、eラーニングは受講生にとって利便性の高い学習方法である反面、モチベーションを維持するのが難しいという側面を持っています。受講生同士のコミュニケーションツールを活用する、ステップアップの実感を得られるようにするなどの工夫も必要といえます。
eラーニングを導入する企業には、従業員の効率的かつ自発的な学習を促すことで、知識や技術の早期獲得を目指す狙いがあるでしょう。しかし、eラーニングには、集合研修で得られるような社員同士の接触や共感醸成が難しいという弱点があります。
eラーニングによる効果やメリットは大きなものですが、これらのバランスを考えながら、最適な導入方法を検討することが必要といえるでしょう。