生産性向上の具体的な方法
生産性向上とは、低い投資で高い成果をあげることを目指す用語です。「生産性」とは成果に対する投資の割合を示すもので、アウトプット(産出・価値・成果など)をインプット(投入資源)で割った比率を指します。
生産性向上の方法には個人・組織・企業の三つの観点があります。個人レベルでは、業務プロセスの改善・タスク管理など、組織レベルでは、マネジメント・設備投資・評価制度の整備などが方法として挙げられます。企業レベルでは、課題の可視化・施策後の成果の可視化を行うとともに、社員への「シワ寄せ」がないかチェックを行い、個人・組織両方の生産性向上を支援していくことが大切です。
個人で行う生産性向上
1)業務プロセスの改善
個人でできる生産性向上でまず挙げられるのは、業務プロセスの改善です。現在担当している業務内容を洗い出し、プロセスごとに必要の有無を判断していきます。これまでやってきた作業だからという理由で、継続する必要はありません。必要がないプロセスを省くことで、作業時間を短縮することができます。
新入社員や真面目なタイプの社員に多いのが、「何でも受けてしまう」「最後まで完璧にやろうと思ってしまう」という傾向です。しかし、自分のキャパシティを超えてしまうと、長時間労働や精神的ストレスの一因につながり、結果として生産性を下げてしまいます。
一人で抱え込んでしまわないよう、周囲に相談しながら「できること・受けていいこと・周りに頼めること」を判断し、業務に取り組むことが重要です。
2)タスク管理
スムーズに仕事をこなしていくには、タスクの管理が重要なポイントとなります。必要なタスクを整理しておくことで、仕事のやり残しや遅延を未然に防ぐことができます。
手順としては、まず必要なタスクをすべて洗い出します。さらに作業工程を分解できるものは分解し、それぞれにどれくらいの時間をかけているのかを確認します。次に優先順位を決め、午前・午後など時間帯に応じてタスクを整理します。
一日の始めには仕事の流れをイメージし、作業が終わったら振り返りを行うことが効率化のポイントです。必要であればタスクの順番を変更しながら、より効率よく仕事が進むように改善していきます。
3)モチベーションの維持
仕事に対するモチベーションを維持したり高めたりする工夫も、生産性向上を実現するうえで重要です。たとえば、仕事のオン・オフを切り替えるため、終業後に自分へのご褒美タイムを用意しておくという方法があります。長時間労働の是正や、仕事への集中力を高めるうえでも効果的です。また、就業時間内はしっかり仕事に集中できるよう、環境を整えることも大切です。
4)スキル習得
ほんの少しのスキルでも、全体として見たときに業務の効率化につながることがあります。たとえば、どの部署でも使うであろうパソコンスキルの習得は、大きな改善ポイントとなるでしょう。ショートカットキーを覚える、新しい資料作成方法のノウハウをインプットする、といった工夫が生産性向上につながります。
この他にも、円滑なコミュニケーション術や、より高い専門技術の勉強など、現在の職場環境で生かせるスキルを学ぶ努力は大切です。
組織で行う生産性向上
1)マネジメント力強化
社員一人ひとりが生産性向上を目指すことは大変重要ですが、それだけで事業全体として生産性向上を実現できるわけではありません。部署やチームといった組織レベルで、取り組んでいくことが必要です。
チーム全体で生産性向上を実現するには、リーダーのマネジメント能力が重要なポイントになります。社員の能力を最大限に引き出し、信頼関係を築くことがモチベーションアップや業務効率化へとつながるからです。
また、チーム全体のコミュニケーション力を高めることも大切です。問題に対して率直に意見を言いあい、必要に応じて連携できる環境を整えることは、チーム全体の成果につながります。
2)IT活用などの設備投資
設備投資は、生産性向上に大きく寄与します。たとえば業務の効率化を図る設備投資として、勤怠管理・品質管理にITシステムを導入すれば、社員の作業時間が短くなり、生産性が向上します。
また、近年注目を集めているAI・ロボットなどへの設備投資は、深刻な人材不足の解決策として、今後さらに導入する企業が増えると予想されます。
3)モチベーションと連携する評価制度
社員が高いモチベーションを維持しながら仕事に集中できる体制を整えることも大切な施策です。人事評価においては、生産性と連動する評価制度を導入するというやり方があります。たとえば、残業せずに成果を生み出している社員を評価する仕組みなどがこれにあたります。
この他にも、有給休暇を取得しやすい環境をつくるなど、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ることもモチベーションを高める施策となります。
生産性向上のために企業が考えるべき要点
現状における課題を分析できているか
生産性を向上するには、まずは現状をよく理解することが重要です。課題を可視化して分析することで、必要な対策を講じることができます。
まずは現状におけるコスト(材料費・人件費など)を把握し、どの部分が生産性を下げる要因となっているのか分析します。さらに改善案を考え、どれくらいのコストで生産性向上を期待できるのか具体的に試算します。実際に改善をした結果、どれくらいの生産性向上が実現したのか結果を算出するという一連の流れで、生産性を高めていきます。
働いている時間の中身の分析ができているか
生産性向上のためには、「短い時間で成果を挙げる」ことが求められます。ゆえに、一体なににどのくらいの時間を使っているかを見える化することが重要です。
たとえば、付加価値を生み出している時間を「稼働時間」とし、付加価値を生み出すために必要な準備時間を「準稼働時間」、何も付加価値を生み出さない時間を「非稼働時間」とします。
営業職であれば訪問と提案が「稼働時間」、提案資料作成やメール処理が「準稼働時間」、探し物やメール・書類の二度見が「非稼働時間」です。これをもとに、具体的に「稼働時間が4時間、非稼働時間が3時間、非稼働時間が1時間」と分析し、稼働時間の割合をなるべく増やしていくことがポイントです。
社員へのしわ寄せがないか
生産性向上を求めるあまり、社員に大きなしわ寄せがいっていないかどうか、注意しなければなりません。たとえば、無理な業務効率化を図ったことで社員が自宅に仕事を持ち帰ったり、休日にサービス出勤したりしているようでは、本来目指すべき生産性向上とは相反する状態といえます。生産性向上や効率化を進めるときは、社員の業務が本当に改善されているかを注視しなくてはなりません。
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