中途採用
中途採用とは?
中途採用とは、新卒採用以外で人材をすることをいいます。変化を続けるビジネス環境への対応が求められる現在、中途採用でいかに優秀な人材を獲得できるかは、企業の成長の鍵といえます。単なる人員補充という意味合いを超えて、人材獲得に乗り出す企業も増えています。
1.中途採用とは
中途採用とは、新卒採用以外で人材を採用することをいいます。つまり、新卒採用以外の採用は、職務経験の有無や年齢層にかかわらず、すべて中途採用に当てはまります。
新卒で採用された後、3年以内に転職する若手人材を第二新卒と分類することがありますが、第二新卒も中途採用の一つ。ただし、第二新卒は新卒とほぼ同じ目的・基準での採用が多いことから、企業によっては新卒採用に分類して採用計画を進めることがあります。
2.中途採用が注目される背景と現状
従来、多くの日本企業では、新卒者を対象とした一括採用を行ってきました。特に大企業では、新卒採用しか行わず、中途採用を全く実施しない企業も少なくありませんでした。しかし現在では、企業の規模を問わず、中途採用を人材獲得の重要戦略と位置づけている企業が増えています。その背景には何があるのでしょうか。
中途採用ニーズが高まっている背景
(1)ビジネス環境の変化
グローバル化の進展にともない、企業を取り巻く競争環境は厳しさを増しています。こうした環境下で企業が成長を続けるためには、変化への対応力、そしてスピードが不可欠です。しかし、専門性を持った人材を育成するには、どうしても時間やコストがかかります。
さらに、企業の価値を生むイノベーションが重視される中で、企業にはこれまで以上に新たな視点や発想力が求められるようになりました。こうした背景から、社内の人的資源だけではまかなえない即戦力を得るため、大企業、中小企業の別なく、中途採用を重要な人材戦略に掲げる企業が増えているのです。
(2)労働者の就労意識の変化
日本企業に浸透していた終身雇用制度が崩壊し、労働者側にも変化が見られるようになりました。現在では転職はネガティブなものではなく、やりがいやキャリアアップ、あるいはワーク・ライフ・バランスなど、自己実現のためのステップと捉えられています。
そのため、中途採用市場には前向きで優秀な人材が多く存在していると考えることができます。企業にとって魅力的な人材を獲得できる大きなマーケットになっていることも、中途採用が注目を集めている理由の一つです。
(3)多様性のある組織の価値
企業の競争力強化において、もう一つの潮流となっているのが、多様性のある組織をつくるダイバーシティ&インクルージョンの取り組みです。
ダイバーシティ&インクルージョンとは、国籍や年齢、性別、障害の有無などにかかわらず多様な価値観を持つ人材を受け入れることで、企業価値の向上やイノベーションの創造につなげる経営戦略です。企業には、多様な人材が活躍できる環境づくりに向けた配慮を行い、受け入れの体制を整えることが求められます。
中途採用のニーズが高まっている背景には、このように多様な人材を求める経営戦略への移行も影響しているといえるでしょう。
中途採用の現状
では、中途採用の現状を見ていきましょう。リクルートワークス研究所が公表した「中途採用実態調査」によると、2018年度の中途採用は「増える」と回答した企業が18.6%(前年比+3.9ポイント)で、「減る」の4.0%を大きく上回る結果でした。従業員規模別に見ると、「増える」の回答率がもっとも高かったのは5000人以上の企業で、25.5%でした。
さらに、2017年度上半期の中途採用における人員確保の状況を見てみると、「人員を確保できた」企業は47.3%、「確保できなかった」と答えた企業は51.5%。「確保できなかった」企業が過半数となったのは、2013年の調査開始以降初めてとなりました。これらの調査から、中途採用のニーズは高まっているものの、予定採用数を満たせない企業が増加傾向にあることが分かります。
これまでは、売り手市場となっている新卒採用で充足できなかった人員を中途採用で確保する企業も多く見られました。しかし、直近の傾向からは、中途採用においても採用難が加速していることが予想されます。人事担当者には、より戦略的な採用活動が求められているといえるでしょう。
3.中途採用のメリット
企業が中途採用を行うメリットは何でしょうか。新卒採用との違いを比較しながら見ていきましょう。
即戦力を獲得できる
中途採用を進める企業が期待することとして、まず挙げられるのが即戦力としての活躍です。自社に必要な知識やスキルを有する人材を獲得できるため、入社後すぐに戦力化できるというメリットがあります。
各部署に最適な実務経験を明確にし、管理職または管理職候補としての職能を見ることで、さまざまな配属に合致する人材を採用することが可能です。
専門性の高いスキル・ノウハウを獲得できる
新規事業の立ち上げや競争優位性を生み出す事業改革を行う際には、専門的な知識・スキルが必要となることもあります。すでにこれらの知見や実績を持っている人材を採用できれば、自社にはなかったスキル・ノウハウを獲得することができます。
組織が活性化される
中途採用者は、自社の社員とは異なる価値観を持っていることが多くあります。そのため、組織に新たな気づきや発見をもたらし、活性化につながることが期待できます。また、前職での経験から、これまでとは違った視点で業務効率化を行ってくれることも期待できるでしょう。
人材育成コストがかからない
ポテンシャル採用といわれる新卒採用では、基本的なビジネスマナーの研修から始まり、戦力化するまでの育成コストがかかります。実務経験を持っている中途採用者であれば、新卒者ほどは研修などの育成コストがかからないというメリットがあります。
また、既存の社員を未経験の仕事に配属した場合にも、新たな知識・スキルを習得してもらうためのコストがかかります。すでに実績やノウハウを持っている人材を中途採用できれば、これにかかるコストと時間も抑えることが可能です。
通年採用が可能
新卒採用ではほとんどの場合、4月入社となっていますが、中途採用では入社時期を調整することが可能です。すぐに欠員を補充したい場合はもちろん、たとえば、新規事業や店舗増設など事業拡大のタイミングに合わせて採用できるメリットがあります。
企業のイメージアップ
中途採用を行っている企業は、「積極的に人材を雇用している企業」「事業を拡大している企業」というように、良好な印象を与えます。企業姿勢や事業展開とともにアピールすることで、企業全体のイメージアップにつながることが期待できます。しかし、採用の理由が「欠員の補充」などの場合、頻繁に募集をかけると人材が定着しない企業だという印象を与えることもあるため、注意が必要です。
4.中途採用の流れと留意すべきこと
ここからは、実際の中途採用における流れと留意すべき事項について見ていきます。
採用計画
中途採用では、採用目的によって求める人物像が異なるため、事前にしっかり採用計画を立てることが大切です。採用計画で検討しなければならない主な事項は以下の通りです。
(1)採用目的と目標
中途採用をする目的は、主に以下のように分けることができます。
- 欠員の補充
- 事業拡大による人員増強
- 高度な専門スキルを持つ人材の獲得
- ダイバーシティの推進
これらの目的によって、求める人物像・選考基準・募集人数・募集期間などが変わります。まずは目的を整理し、目標として落とし込むようにしましょう。
(2)求める人物像
採用目的に合わせて、どのような人材が必要か、求める人物像を明確にします。観点としては、「スキル(学歴・知識・資格・経験・能力など)」と「タイプ(志向性・行動特性・意欲の方向性など)」の両面を考えることが大切です。
(3)選考基準
求める人物像をもとに、選考基準を決めます。具体的にどのようなスキル・タイプそれぞれで、どのような点が必須で、どのような点があれば望ましいのか、あらかじめ言語化するようにしましょう。
募集方法の選定
採用計画を策定した後は、採用ターゲットに合致する募集方法を選定します。新卒採用とは異なり、中途採用ではターゲットを効率的に集められる募集手段を検討することが重要ポイントになります。代表的な方法には、次のものがあります。
- ハローワーク
- 求人メディア
- 人材紹介サービス
- 合同会社説明会(転職フェアなど)
- 自社ホームページ
- リファーラルリクルーティング
- ダイレクトリクルーティング
選考
次に採用選考となります。以下の点に留意して進めましょう。
(1)選考フロー
採用目的や応募人数などを考慮しながら、書類選考・面接・小論文・適性検査などの選考内容とフローを決めます。
人材を慎重に見極めることは重要ですが、選考スピードを上げることも重要な戦略となります。優秀な人材を獲得するための競争が激化する中で、重点を置くところを定め、簡略化できるところは省くといった工夫も、人事担当者には求められます。
(2)面接の対策
ポテンシャルを判断する新卒採用とは異なり、中途採用では募集目的に合う経験やスキル、志向性などを判断することが重要になります。主なチェックポイントは以下の通りです。
- 職務に必要な知識・経験・スキルがあるか
- 自社が求める志向性・行動特性を備えているか
- 勤務条件への適合性があるか
評価をするうえでは、転職理由や応募動機も注視するようにしましょう。また、応募者の疑問や不安を解消するため、質問を受ける場を設けて迅速に回答することも大切です。
内定後のフォロー
採用が決定したらすみやかに内定通知を出し、入社の意思確認を行います。転職希望者は、同時に複数の企業の選考を受けていることが多く、優秀な人材ほど他社からも内定をもらっている可能性が高くなります。人材を逃さないためには内定を出した後も定期的に連絡を取るなど、しっかりフォローを続けることが重要です。
入社後には、中途採用者がいち早く職場に慣れるよう、社内の受け入れ体制を整えておくようにしましょう。
5.中途採用に寄せられる期待と人事の役割
現在の中途採用マーケットには、大きく二つの期待が寄せられています。一つは、売り手市場が続く新卒採用で人材を充足できない企業が、人員充足を期待して中途採用を行っているケースです。二つ目は、事業の成長あるいは存続において、専門性を有する人材への期待が高まっていることです。
以前より新卒マーケットで苦戦を強いられてきた中小企業は、中途採用を積極的に行ってきました。しかし、現在は大手企業においても中途採用枠が増加傾向にあり、今後さらに競争が激しくなることが予想されています。
近年、人事には企業の成長に寄与する戦略人事としてのあり方が求められています。人事担当者にはこうした競争環境を理解したうえで、事業戦略を実現するための採用計画・活動が求められています。中途採用が自社にもたらすメリットを十分に理解し、より提案性の高い採用活動を行う必要があるといえるでしょう。
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