企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

牧野正幸さん(株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者):
ITは人と組織を支えるツールにすぎない――だからこそ、日本には日本のERPパッケージを

牧野正幸さん

本来、企業活動のIT化は、経営効率の改善に資するものでなければなりません。しかしこれまで日本の大手企業の多くは、投資効率を度外視し、オーダーメードで自前の基幹業務システムを開発してきました。導入・運用に多大なコストと時間を費やすため、ITがむしろ競争力向上の足かせにさえなっていたのです。こうした矛盾の解決を社会貢献と捉えて、日本で初めて国内大手企業向けのERPパッケージシステムの開発に乗り出したのがワークスアプリケーションズ代表取締役CEOの牧野正幸さんです。ITは、HRMに対して何ができるのか。創業に至った経緯と背景をはじめ、事業の意義や独自性、イノベーターとしての心構えなど、おおいに語っていただきました。

プロフィール
牧野正幸さん
株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者

まきの・まさゆき/1963年兵庫県生まれ。大手建設会社、ITコンサルタントを経て、1996年、株式会社ワークスアプリケーションズを設立。日本で初めて、大手企業向けのノーカスタマイズ型ERPパッケージソフトを開発・販売。人事・給与システムでは国内シェアトップを誇る。主な著書に『君の会社は五年後あるか? 最も優秀な人材が興奮する組織とは』(角川書店)、『「働きがい」なんて求めるな。』(日経BP社)など。

オーダーメードの人事システムに固執する日本企業に危機感

 御社はITによって、日本の企業と人材を支えています。牧野さんが大手企業向けERPパッケージソフトを開発するために起業を決意されたのも、日本企業のIT投資効率の悪さを何とかしたいという志からでしょうか。

株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸さんPhoto

そもそもITというのはただのツールです。人に使われて価値を発揮するのがツールであるならば、企業のシステムだって、誰もが簡単に扱えるようになるべきだし、ローコストでなければツールの意味をなしません。IT先進国の欧米でも1970年代までは、各企業が莫大なコストをかけて、自社の業務や組織文化に適合したオーダーメードのシステムを手づくりで構築していました。

ところが80年代に入ると、大手企業向けのERPベンダーが次々と台頭。あくまでツールなのだから、できるだけ費用対効果が高いほうがいいという発想で、ローコストなパッケージソフトが爆発的に普及していったのです。90年代前半にはもう、アメリカで人事システムを手づくりしている企業なんて、たぶんなかったでしょうね。

翻って日本はどうかというと、当時の日本企業は世界市場を席捲していました。カネ余りの一方で人手不足。ITには人手不足を補う業務効率の向上が求められ、システムにどれだけコストがかかるかなんて、ほとんど重視されていなかった。「予算に余裕があるし、ITにでも投資しようかな……」といった気楽なムードさえあったのです。そんな日本企業にコテンパンにやられていた欧米企業が、「高コスト体質を改めて国際競争力を取り戻すためにいかにITを活用するか」という視点からバックオフィスのコスト縮減にまで踏み込み、ERPの導入・普及に突き進んでいったのと比べるとあまりにも対照的な現実でした。本来、ただのツールであるはずのITが高額過ぎて投資価値に見合わず、経営を圧迫している――。当時、外資系のIT企業でシステムコンサルタントをしていた私は、日本企業の先行きに強い危機感を覚えずにはいられませんでした。

 オーダーメードでシステム開発すると、なぜ莫大なコストがかかるのですか。自社の業務や組織に適合させられる分、利便性そのものは高まるのでは。

確かにシステムを細かく作り込むほど、業務効率は向上するでしょう。ただし、その効果は一時的なものにすぎません。社会やビジネスのトレンドが変わるたびに、システムも変えていかなければならないからです。そうして改変を繰り返していくと、もはや利便性のメリットより維持コストのほうが大きくなってしまいます。人事システムでいうと、昔は年功序列型賃金、定昇があって、ベアがあった。いまはもう、そんな時代ではありません。そもそも法制度が変わっています。税法が変われば、社会保険法も変わる。そうすると微に入り細に入り作り込んで、ボタン一個押せばあとはすべて自動的に実行してくれるようなシステムを開発したとしても、翌年になったら前提条件が変わって、また作り直しということになりかねないわけです。

評価制度についてもどんどんトレンドが変化していますね。たとえばいまは、社員個々の適性を見きわめて、タレントマネジメントで人材の最適配置を導き出そうというようなことを、どこの企業もやり始めていますが、ほんの20年前には考えられなかったことです。あるいは評価や教育に関する人事部への権限集中を見直して現場に委譲すべきだとか、いや、やはり戻すべきだとか、組織の構造改革も頻繁に行われています。そのたびに追従し、オーダーメードのシステムを自社で作り直していたら、非常にお金がかかるわけです。

 欧米企業はそういうことにいち早く気づいていた。というより、高コスト体質からの脱却の必要性に迫られて、気づかざるをえなかったわけですね。

日本では一時、「戦略的情報システム」というフレーズがずいぶんはびこりました。しかし戦略といっても、たとえば人事考課システムに、普通では考えられないような独創的で革命的な方法論を入れて、それに合わせたシステムを作り込む必要が果たしてあるのでしょうか。仮に作ったとしてもすぐ陳腐化し、独創的でも革命的でもなくなってしまうでしょう。

むしろ給与の上げ幅を何%に設定するか、誰を評価対象にするか、そういう実質的な部分を最適化する、つまり“運用”の方法論こそが企業の独創であり、戦略です。企業活動の本質は、例えるなら、画期的な計算機能を持つ電卓を作ることではなく、その電卓で何をするか。独創性を追求するのではなく、いかに正当な価格で導入・維持できるかという点にフォーカスし、欧米諸国の企業がたどりついた答えがERPだったのです。

ERPの優位性は導入コストが安いだけでなく、社会のトレンドに追従してスピーディに機能強化ができること。機能を加えバージョンアップをするだけで、基本的にそのまま最新の人事制度にも対応できるから、自社でシステムを作り直すよりも大幅に維持コストを抑えられるのです。


記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

HR業界TOPインタビューのバックナンバー

荻原 英人さん(ピースマインド株式会社 代表取締役社長):
一人ひとりに向き合うメンタルケアで「はたらくをよくする®」
創業22年目の今、働く人にとって一番頼れる存在へ
事業者に従業員のストレスチェックを義務づける改正労働安全衛生法が施行されたのが2015年。それ以来、心の健康も含めた「健康経営」への関心が高まっています。こうし...
2020/05/21掲載
羽生 崇一郎さん(エムスリーキャリア株式会社 代表取締役):
仕事への原動力は一貫して「好奇心」
今は日本の医療に人材という観点から向きあう
日本社会の少子高齢化とともに、医療に対する需要も急速に変化しつつあります。さまざまなニーズに対応できる医療提供体制をスムーズに整えるには、医師や看護師、薬剤師な...
2020/02/21掲載
佐藤 剛志さん(株式会社ジェイック 代表取締役):
「世の中になくてはならない企業」をつくりたい
人材教育と紹介で、就職ポテンシャル層と企業の可能性を拓く
「教育支援」と「採用支援」をかけ合わせた「教育融合型人材紹介事業」を展開する、株式会社ジェイック。フリーターや第二新卒を対象とした、就職講座・面接会一体型の就職...
2020/01/24掲載

関連する記事

8. 人事システム導入にあたっての注意点
●人事システムの導入は中期的・長期的視点で計画的に取り組まなくてはならない。●タレントマネジメントシステム導入は「投資」という発想で計画すべきである。●カスタマ...
2012/10/29掲載よくわかる講座
7. 人事システムの選び方
人事システム、特に人事・給与システムに関しては、多数のベンダーがパッケージソフトをリリースしており、ユーザー企業の規模や成長ステージにあわせて、それぞれ最適の機...
2012/10/29掲載よくわかる講座
6. 人事システム導入のメリット
ITを活用することで、給与計算のような定型業務を正確化・効率化し、コスト削減を行うのはもはや当然だ。今改めて人事システム導入のメリットを考えることは、その人事シ...
2012/10/29掲載よくわかる講座
5. 人事システムの種類
人事システムは大きく「人事・給与システム」と「戦略人事システム」に分けられるが、それをさらに細かく「目的別に見た人事システムの種類」「技術的に見た人事システムの...
2012/10/29掲載よくわかる講座
4. 人事システムの主な機能
同じ人事システムではあるが、タレントマネジメントシステムには人事・給与システムとは異なる機能的な特性が求められる。人事・給与システムの場合、処理する業務も定型業...
2012/10/29掲載よくわかる講座

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

POSITIVEが選ばれる理由 従業員の自律的なキャリア開発を支援する

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


究極の人事給与システムとは何か?

究極の人事給与システムとは何か?

優れた人材を採用し、働きやすい環境を整え、企業の成長に不可欠な人事戦略...


「処遇」から「目標達成」へ<br />
~人事考課における「目標管理」の重要性とは?

「処遇」から「目標達成」へ
~人事考課における「目標管理」の重要性とは?

人は、周囲から評価されて「有用感」を持つことで、働く意欲が高まっていく...