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HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者

牧野 正幸さん

ITは人と組織を支えるツールにすぎない
だからこそ、日本には日本のERPパッケージを

2013/02/18
牧野正幸さん
本来、企業活動のIT化は、経営効率の改善に資するものでなければなりません。しかしこれまで日本の大手企業の多くは、投資効率を度外視し、オーダーメードで自前の基幹業務システムを開発してきました。導入・運用に多大なコストと時間を費やすため、ITがむしろ競争力向上の足かせにさえなっていたのです。こうした矛盾の解決を社会貢献と捉えて、日本で初めて国内大手企業向けのERPパッケージシステムの開発に乗り出したのがワークスアプリケーションズ代表取締役CEOの牧野正幸さんです。ITは、HRMに対して何ができるのか。創業に至った経緯と背景をはじめ、事業の意義や独自性、イノベーターとしての心構えなど、おおいに語っていただきました。
プロフィール

牧野正幸(まきの・まさゆき)●1963年兵庫県生まれ。大手建設会社、ITコンサルタントを経て、1996年、株式会社ワークスアプリケーションズを設立。日本で初めて、大手企業向けのノーカスタマイズ型ERPパッケージソフトを開発・販売。人事・給与システムでは国内シェアトップを誇る。主な著書に『君の会社は五年後あるか? 最も優秀な人材が興奮する組織とは』(角川書店)、『「働きがい」なんて求めるな。』(日経BP社)など。

オーダーメードの人事システムに固執する日本企業に危機感

―― 御社はITによって、日本の企業と人材を支えています。牧野さんが大手企業向けERPパッケージソフトを開発するために起業を決意されたのも、日本企業のIT投資効率の悪さを何とかしたいという志からでしょうか。

株式会社ワークスアプリケーションズ代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸さんPhoto

そもそもITというのはただのツールです。人に使われて価値を発揮するのがツールであるならば、企業のシステムだって、誰もが簡単に扱えるようになるべきだし、ローコストでなければツールの意味をなしません。IT先進国の欧米でも1970年代までは、各企業が莫大なコストをかけて、自社の業務や組織文化に適合したオーダーメードのシステムを手づくりで構築していました。

ところが80年代に入ると、大手企業向けのERPベンダーが次々と台頭。あくまでツールなのだから、できるだけ費用対効果が高いほうがいいという発想で、ローコストなパッケージソフトが爆発的に普及していったのです。90年代前半にはもう、アメリカで人事システムを手づくりしている企業なんて、たぶんなかったでしょうね。

翻って日本はどうかというと、当時の日本企業は世界市場を席捲していました。カネ余りの一方で人手不足。ITには人手不足を補う業務効率の向上が求められ、システムにどれだけコストがかかるかなんて、ほとんど重視されていなかった。「予算に余裕があるし、ITにでも投資しようかな……」といった気楽なムードさえあったのです。そんな日本企業にコテンパンにやられていた欧米企業が、「高コスト体質を改めて国際競争力を取り戻すためにいかにITを活用するか」という視点からバックオフィスのコスト縮減にまで踏み込み、ERPの導入・普及に突き進んでいったのと比べるとあまりにも対照的な現実でした。本来、ただのツールであるはずのITが高額過ぎて投資価値に見合わず、経営を圧迫している――。当時、外資系のIT企業でシステムコンサルタントをしていた私は、日本企業の先行きに強い危機感を覚えずにはいられませんでした。

―― オーダーメードでシステム開発すると、なぜ莫大なコストがかかるのですか。自社の業務や組織に適合させられる分、利便性そのものは高まるのでは。

確かにシステムを細かく作り込むほど、業務効率は向上するでしょう。ただし、その効果は一時的なものにすぎません。社会やビジネスのトレンドが変わるたびに、システムも変えていかなければならないからです。そうして改変を繰り返していくと、もはや利便性のメリットより維持コストのほうが大きくなってしまいます。人事システムでいうと、昔は年功序列型賃金、定昇があって、ベアがあった。いまはもう、そんな時代ではありません。そもそも法制度が変わっています。税法が変われば、社会保険法も変わる。そうすると微に入り細に入り作り込んで、ボタン一個押せばあとはすべて自動的に実行してくれるようなシステムを開発したとしても、翌年になったら前提条件が変わって、また作り直しということになりかねないわけです。

評価制度についてもどんどんトレンドが変化していますね。たとえばいまは、社員個々の適性を見きわめて、タレントマネジメントで人材の最適配置を導き出そうというようなことを、どこの企業もやり始めていますが、ほんの20年前には考えられなかったことです。あるいは評価や教育に関する人事部への権限集中を見直して現場に委譲すべきだとか、いや、やはり戻すべきだとか、組織の構造改革も頻繁に行われています。そのたびに追従し、オーダーメードのシステムを自社で作り直していたら、非常にお金がかかるわけです。

―― 欧米企業はそういうことにいち早く気づいていた。というより、高コスト体質からの脱却の必要性に迫られて、気づかざるをえなかったわけですね。

日本では一時、「戦略的情報システム」というフレーズがずいぶんはびこりました。しかし戦略といっても、たとえば人事考課システムに、普通では考えられないような独創的で革命的な方法論を入れて、それに合わせたシステムを作り込む必要が果たしてあるのでしょうか。仮に作ったとしてもすぐ陳腐化し、独創的でも革命的でもなくなってしまうでしょう。

むしろ給与の上げ幅を何%に設定するか、誰を評価対象にするか、そういう実質的な部分を最適化する、つまり“運用”の方法論こそが企業の独創であり、戦略です。企業活動の本質は、例えるなら、画期的な計算機能を持つ電卓を作ることではなく、その電卓で何をするか。独創性を追求するのではなく、いかに正当な価格で導入・維持できるかという点にフォーカスし、欧米諸国の企業がたどりついた答えがERPだったのです。

ERPの優位性は導入コストが安いだけでなく、社会のトレンドに追従してスピーディに機能強化ができること。機能を加えバージョンアップをするだけで、基本的にそのまま最新の人事制度にも対応できるから、自社でシステムを作り直すよりも大幅に維持コストを抑えられるのです。


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