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有賀 誠のHRシャウト!人事部長は“Rock & Roll”
【第12回】人事部とリーダーシップ(その8):人事部門の志

株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括

有賀 誠さん

有賀 誠のHRシャウト! 人事部長は“Rock & Roll

人事部長の悩みは尽きません。経営陣からの無理難題、多様化する労務トラブル、バラバラに進んでしまったグループの人事制度……。障壁(Rock)にぶち当たり、揺さぶられる(Roll)日々を生きているのです。しかし、人事部長が悩んでいるようでは、人事部さらには会社全体が元気をなくしてしまいます。常に明るく元気に突き進んでいくにはどうすればいいのか? さまざまな企業で人事の要職を務めてきた有賀誠氏が、日本の人事部長に立ちはだかる悩みを克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。

みんなで前を向いて進もう! 人事部長の毎日はRock & Roll だぜ!――有賀 誠

INDEX[表示/非表示]

本連載では、「リーダーシップ=目標を定め、チームを作り、成果を出す力」と定め、人事部門にとって二つの意味でそれが重要としてきました。一つはビジネス・リーダーとしての自らのリーダーシップ、もう一つは人事の仕事として組織内にリーダーシップを構築することです。後者については、将来の社長や経営幹部のタレント・パイプラインを作ることと言い換えても良いでしょう。

リーダーシップの定義は、目標を定め、チームを作り、成果を出す力

自分を主語に

リーダーを自認するのであれば、自分の考えを、自分の言葉で発信しましょう。会社や他人のせいにすることなく。メンバーに決定や指示を伝える際に、「社長が言ったから」「会社として決めたこと」などと他責の姿勢を見せることは良くありません。そのようなリーダーに付いて行きたいとはだれも思わないでしょう。きっかけが社長や上司からの指示だったとしても、あるいは会社としての立場だったとしても、言葉を発信する段階では、それを自分のものとして責任を持ちましょう。

もちろん、時として、会社や上司の決定にあなた自身が必ずしも同意していない場合もあるでしょう。その場合も、最終的になぜ自分がそれに従うことにしたのかを、正直に説明しましょう。「自分はAで行くべきだと思ったし、おそらくみんなもそうだろう。しかし、社長はBとおっしゃった。意見が食い違ったことになるが、この分野について社長は豊富な経験をお持ちである。自分たちの意見とは異なるが、ここは社長を信じて、その言に従ってみようと思う」といったように。リーダーが自らの考えと判断を正直に伝えれば、そこには納得感と信頼感が生まれるはずです。

メッセージの主体が自分でなければ、思いは伝わりません。あなたが人事部長であろうとなかろうと、リーダーならば、自分を主語に。

人事部門として

ここまで、いくつかのリーダーシップのスタイルをご紹介してきました。「率先垂範 vs 泰然自若」「専制的 vs 民主的 vs 自由放任的」「ビジョン型 vs コーチ型 vs 調整型 vs ペースセッター型」「監督タイプ vs キャプテン・タイプ」など、いろいろな分類があるわけですが、あなた自身はどこに当てはまるでしょうか。自分が得意とするスタイルを自覚し、仲間に伝えておきましょう。そして、その仲間たちそれぞれのスタイルも理解しておきましょう。チーム内のコミュニケーションがスムーズになるはずです。

ただし、局面によってリーダーには、自分本来のキャラクターとは違うアプローチが求められることもあります。たとえば、自身が民主的なリーダーシップを持ち味としていたとしても、危機管理の現場(火事や地震など)では、即断即決/トップ・ダウンが必須です。今どのようなリーダーシップが求められているのかを瞬時に判断し、それを演じることも、リーダーには必要な資質と言えます。

また、組織やチームの編成はリーダーの仕事です。組織長であれば、採用や教育や異動を通じて、その組織を強化することを常に考えているはずです。管理職ではなかったとしても、あるプロジェクトやタスクで誰に声をかけるか、という判断はしていることでしょう。これも、一種のチーム編成です。

そして、そこに自分と同じようなスタイルの人を集めるのか、あえて多様性を盛り込むのかが、人選における一つのポイントとなります。同様のタイプを集めた方があうんの呼吸で動けるので、チームのスピードは速くなるでしょう。ただ、モノトーンの組織は横風にはもろいかもしれません。

一方、多様性がある組織ではいろいろな意見や価値観が衝突し、意思決定に時間がかかります。その代わり、さまざまな状況への対応力は高まるかもしれません。果たすべき役割やタスクの性質を考えたとき、どちらを目指すのか。この人材ポートフォリオの決定はリーダーの使命です。

人事部門にとって重要なこと

以上、リーダーシップ・スタイルに関するチーム内での相互理解、状況に応じたリーダーシップの発揮、チームの人材ポートフォリオの考察について触れました。人事部門の使命としては、自らがそのような感性を持つとともに、それらに長けた人材を発掘、育成、登用するということになるでしょう。志を高く掲げ、頑張ってください!

有賀誠の“Rock & Roll”な一言
将来の社長を見出すこと、それがあんたの最大の仕事だぜ!
That is Your Leadership!

有賀 誠
有賀 誠
株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括

(ありが・まこと)1981年、日本鋼管(現JFE)入社。製鉄所生産管理、米国事業、本社経営企画管理などに携わる。1997年、日本ゼネラル・モーターズに人事部マネージャーとして入社。部品部門であったデルファイの日本法人を立ち上げ、その後、日本デルファイ取締役副社長兼デルファイ/アジア・パシフィック人事本部長。2003年、ダイムラークライスラー傘下の三菱自動車にて常務執行役員人事本部長。グローバル人事制度の構築および次世代リーダー育成プログラムを手がける。2005年、ユニクロ執行役員(生産およびデザイン担当)を経て、2006年、エディー・バウアー・ジャパン代表取締役社長に就任。その後、人事分野の業務に戻ることを決意し、2009年より日本IBM人事部門理事、2010年より日本ヒューレット・パッカード取締役執行役員人事統括本部長、2016年よりミスミグループ本社統括執行役員人材開発センター長。会社の急成長の裏で遅れていた組織作り、特に社員の健康管理・勤怠管理体制を構築。2018年度には国内800人、グローバル3000人規模の採用を実現した。2019年、ライブハウスを経営する株式会社Doppoの会長に就任。2020年4月から現職。1981年、北海道大学法学部卒。1993年、ミシガン大学経営大学院(MBA)卒。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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この記事ジャンル 戦略人事

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【用語解説 人事辞典】
セキュアベース・リーダーシップ
PM理論
チーミング
グローバル人材
コンティンジェンシー理論
Tグループ
非認知能力
オーセンティック・リーダーシップ
ファシリテーション
グリット