有賀 誠のHRシャウト!人事部長は“Rock & Roll”
【第9回】人事部とリーダーシップ(その5):ポジティブな姿勢
株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括
有賀 誠さん
人事部長の悩みは尽きません。経営陣からの無理難題、多様化する労務トラブル、バラバラに進んでしまったグループの人事制度……。障壁(Rock)にぶち当たり、揺さぶられる(Roll)日々を生きているのです。しかし、人事部長が悩んでいるようでは、人事部さらには会社全体が元気をなくしてしまいます。常に明るく元気に突き進んでいくにはどうすればいいのか? さまざまな企業で人事の要職を務めてきた有賀誠氏が、日本の人事部長に立ちはだかる悩みを克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。
みんなで前を向いて進もう! 人事部長の毎日はRock & Roll だぜ!――有賀 誠
ここまで、「リーダーシップ = 目標を定め、チームを作り、成果を出す力」と定義し、自身がそのような力を備えると同時に、人事部として優れた経営リーダーシップを持つ人間を発掘・育成・登用するべきことを述べてきました。今回は、そのようなリーダーに必要とされる姿勢や志向性について、私の考えをご紹介したいと思います。
前に進む一歩
すでに、自身の中でのポジティブ反転(「××だからできない」→「〇〇すればできる(かもしれない)」)の重要性については説明しました。これを、人に対してのアプローチにも適用してみましょう。英語で、”The glass is half empty” に対して、”The glass is half full” という表現があります。同じ事象をネガティブに見るか、ポジティブに見るか、という違いです。
ある営業マンの今期の予算が100であったとしましょう。彼は90しか達成できませんでした。さて、この▲10に関して、リーダーであるあなたはどのようにコミュニケーションをとるのでしょうか?
できなかった▲10を徹底的に責めるのか、達成した90を認めた上で残る▲10の攻略方法やキャッチアップを議論するのか。もちろん、環境やプロセスにもよるのですが、本人が全力で努力をしたのだとすれば、私は後者のアプローチ(できた部分をまずは認める)をとりたいと思います。
要は、終わってしまったことを必要以上に言及するよりも、その営業マンの来期に向けての士気高揚をはかろうということです。もちろん、叱られた方が発奮するメンバーであったなら、それを否定するものではありません。あくまでも、組織文化やメンバーのキャラクターを踏まえての判断となるわけです。
大きな目標を掲げることは大事ですが、勝負において常に満塁ホームランやハットトリックを狙う必要はないと思うのです。送りバントやパス回しも勝利に結びつく戦術です。少しずつでも、前に進み続けることが重要ではないでしょうか。「昨日よりは今日が良い、今日よりは明日が良い」を心がけていると、気がついたら思いのほか進んでいるものです。リーダーとして、たとえ小さかったとしても、あるいは期待値に届かなかったとしても、前に進んだ一歩を認知し、祝福したいと思います。
ただし、リーダーであるなら、ゴールはイメージしておくべきでしょう。リーダーは、一歩ずつ進む中、到達点や時間軸を見通しておく必要があります。そうでないと、進んではいるものの誤った方向に向かっていたり、最終的な納期に遅れたりするリスクがあるからです。
メンバーへの感謝
私は、リーダーの成果は、スタッフやメンバーの貢献の総和、あるいはシナジーだと考えます。例えばマネージャーの給料は、会社や組織からではなく、実は部下からもらっているようなものだと思うのです。同様に、「キャプテンがキャプテンであるのは、メンバーあればこそ」「家族がいて、家庭が成り立つ」「社員がいるから会社は存在する。逆ではない」とも。
それを踏まえれば、リーダーがメンバーを、マネージャーが部下を、会社(とその人事部)が社員を大切に思い、彼らのモティベーション高揚や成長に期待し、そのための努力をするのは当然のことではないでしょうか。
メンバーへの感謝も、リーダーの責務です。
有賀誠の“Rock & Roll”な一言
昨日よりRock! 明日はもっとRock!とにかく前進。
And Don’t Forget仲間に感謝!
- 有賀 誠
- 株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括
(ありが・まこと)1981年、日本鋼管(現JFE)入社。製鉄所生産管理、米国事業、本社経営企画管理などに携わる。1997年、日本ゼネラル・モーターズに人事部マネージャーとして入社。部品部門であったデルファイの日本法人を立ち上げ、その後、日本デルファイ取締役副社長兼デルファイ/アジア・パシフィック人事本部長。2003年、ダイムラークライスラー傘下の三菱自動車にて常務執行役員人事本部長。グローバル人事制度の構築および次世代リーダー育成プログラムを手がける。2005年、ユニクロ執行役員(生産およびデザイン担当)を経て、2006年、エディー・バウアー・ジャパン代表取締役社長に就任。その後、人事分野の業務に戻ることを決意し、2009年より日本IBM人事部門理事、2010年より日本ヒューレット・パッカード取締役執行役員人事統括本部長、2016年よりミスミグループ本社統括執行役員人材開発センター長。会社の急成長の裏で遅れていた組織作り、特に社員の健康管理・勤怠管理体制を構築。2018年度には国内800人、グローバル3000人規模の採用を実現した。2019年、ライブハウスを経営する株式会社Doppoの会長に就任。2020年4月から現職。1981年、北海道大学法学部卒。1993年、ミシガン大学経営大学院(MBA)卒。
HR領域のオピニオンリーダーによる金言・名言。人事部に立ちはだかる悩みや課題を克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。