職場のモヤモヤ解決図鑑【第94回】
フレックスタイム制の運用
管理職のマネジメントのコツを解説[前編を読む]

職場のモヤモヤ解決図鑑

自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!

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志田 徹(しだ とおる)
志田 徹(しだ とおる)
都内メーカー勤務の35才。営業主任で夏樹の上司。頼りないが根は真面目。

メンバーへのヒアリングをもとに、フレックスタイム制を導入することにした志田さんのチーム。ところが、せっかくヒアリングしたにもかかわらず、導入直後のメンバーの反応は思わしくないようです。導入後にどのような問題が発生し、どう対応すればいいのか。マネジメントのコツについて見ていきましょう。

フレックスタイム制導入による効果と課題

フレックスタイム制は、モチベーションアップやストレス軽減といった従業員の働きやすさ向上につながります。フレキシブルタイムで勤務時間を調整できるため、個々のライフステージに合わせた働き方が可能になります。さらに、従業員が「今日はこの時間までに終わらそう」という意識を持つため、業務効率アップ、生産性向上にもつながります。

一方で、フレキシブルタイムによって従業員の労働時間に対する意識が希薄になってしまったり、コミュニケーションを取る機会が失われたりしてしまうと、業務上の問題が発生することがあります。たとえば、メンバー間で始業時間が異なると、朝会など情報共有をするタイミングが少なくなり、コミュニケーションが不足します。また、フレキシブルタイムで会社の営業終業時間よりも早めに退勤する従業員がいる場合、取引先や顧客への対応が疎かになってしまう可能性もあります。

フレックスタイム制を運用する上での注意点

フレックスタイム制を運用する上で、マネジメントとして注意したい3点について解説します。

【注意点1】コミュニケーション不足

リアルタイムでコミュニケーションを取れる時間が減るため、コミュニケーションツールを積極的に活用することが重要です。ツールでミーティングの議事録を共有するなど、たとえ時間差があっても「誰もが」「いつでも」見られる環境を作ることが重要です。また、経費精算、参加確認など締め切りがあるものは、ツールを通じてリマインドを行います。

不足するコミュニケーションを補うために、メンバーが顔を合わせる場を設けるのも有効です。週一回のランチ会、定期的な面談の実施など、メンバーがコミュニケーションをとれる機会を意識的に設定します。リモートワークを導入している場合は、ビデオ会議システムの利用を促進します。フレックスタイム制の活用状況について聞き取りを行うことも、コミュニケーション不足の解消につながります。

【注意点2】労働時間管理

出社・退社時間が従業員によって異なるため、労働時間の正確な把握が必要です。また、総労働時間の不足や残業時間の超過などが起きないよう、マネジメントを工夫する必要があります。

労働時間管理に有効な方法として、勤怠管理システムの活用があげられます。従業員がパソコンやスマートフォンで打刻できるシステムを導入することは、正確な労働時間の把握につながります。持ち帰りの仕事で残業時間が増えないようにするには、業務の進捗状況を把握してフォローすることも必要です。「ノー残業デー」を設定したり、業務終了時間を明確にしたりするとよいでしょう。定期的に、長時間残業とメンタルヘルスの関係性について周知することも重要です。

【注意点3】公平性の確保

フレックスタイム制は、部署や係ごとに導入できます。したがって、フレックスタイム制が適用される従業員と適用されない従業員の間で不公平感が生じない配慮を行う必要があります。たとえば、フレックスタイム制で働く従業員と、通常通り働く従業員との打ち合わせはコアタイムに設定するというルールを作ることで、調整にかかる手間を減らせます。

また、取引先や顧客対応で不満や不備がないように体制を整えることも重要です。フレックスタイム制が適用されない従業員に負担が増えないよう、従業員のスケジュールを可視化し、情報共有をする必要があります。仕事の進捗やマニュアルが共有されることで、チームで対応できるようになります。

管理職の役割

フレックスタイム制の導入をスムーズに進めるため、管理職には部下の労働時間管理やコミュニケーションの促進への配慮が求められます。

部下の労働時間管理

部下の労働時間が適切であることを確認する必要があります。部下の顧客対応や社内メールの返信時間などに注意し、深夜・早朝に稼働していないか、過重労働になっていないかを定期的に確認しなければなりません。

コミュニケーション促進

コアタイムに定期的なミーティングを導入するなど、チームワークを維持するための工夫を行います。評価面談や1on1ミーティングとは別に、メンバー一人ひとりとのコミュニケーションをとる機会を設けるのも有効です。

公平な評価

フレックスタイム制の利用状況に左右されない、公平な評価制度を運用します。管理職と同じ時間帯に働いている従業員と、そうではない従業員との間に評価に対する不満が生まれないよう、評価制度を見直すことも必要です。評価基準を明確にする、360度評価を取り入れるといった方法があります。

【まとめ】

  • フレックスタイム制を導入することで、メンバーのコミュニケーション不足や過重労働といった課題が発生する可能性がある
  • 従業員の適正な労働時間把握に務めることが、管理職に求められる
  • メンバーのコミュニケーション不足を解消するため、ツールの活用や定期的なミーティングの設定が必要となる

フレックスタイム制にみんな慣れてきたかな。運用を工夫することで、顧客対応もスムーズになってよかった。これからは繁忙期に入るから、長時間労働にならないよう気を配らないと

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

職場のモヤモヤ解決図鑑【第93回】 フレックスタイム制の導入 メリット・デメリットや準備すべきことを解説
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