職場のモヤモヤ解決図鑑【第86回】
専門的なことを聞かれたら?
上司が押さえるべきキャリア面談の進め方[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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山下 健悟(やました けんご)
関東圏のメーカー課長職45歳。20人ほど部下がいる。部下がもっと働きやすく、活躍できるチームを目指し、試行錯誤の日々。
キャリア面談の説明会に参加した山下さん。同僚の越谷さんと一緒に、キャリア面談の準備をしています。タイプの異なる部下たちを前に、うまく面談を進められるのでしょうか。キャリア面談の具体的な進め方、部下の話を引き出すために日頃からできること整理します。
よくある上司の悩み
キャリア面談を行うにあたって、「部下が話をしてくれるのか」「質問に的確に答えられるか」といった悩みを抱える上司は少なくありません。
【よくある上司の悩み】
- 部下の話をうまく引き出せるか
- 意欲的な部下の要望に応えられるか
- タイプの違う部下にどう接すればいいのか
- 専門的な話になったときに対応できるか
- プライベートにどこまで踏み込んでいいのか
- 社内のキャリア支援制度などに不明な点がある など
キャリア面談の時間を有効活用し、部下の成長につなげるために、事前準備はもちろんのこと、面談での答え方について押さえておきましょう。
キャリア面談の具体的な進め方
キャリア面談は、準備、実施、フォローアップの三段階にわけて進めます。
準備
- 部下についての情報を集める。タレントマネジメントシステムや過去の評価面談の内容を読み返したり、事前にキャリア面談シートの記載を求めたりすると、面談が充実する。
- 社内のキャリア支援制度などについて理解を深める。
- 社内のロールモデルについて学ぶ。キャリア面談では、上司自身もキャリア形成についてイメージを持っていることが重要。さまざまな従業員のロールモデルを学び、キャリアを形成する意義について理解を深めておく。
実施
- 面談の時間は30分~1時間程度。
- オープンスペースではなく、個室など区切られたスペースを確保。部下が自身のキャリアについて話しやすい環境を作る。
- 急に本題に入るのではなく、まずは「最近の仕事はどう?」などと、別の話題で場を和ませる。
- 問いかけで部下の話を聞き出す。
キャリア面談で使える質問例
- 「将来どのようなキャリアを築きたいですか?」
- 「5年後、社内でどんなポジションに就きたいですか?」
- 「目標を達成するために必要なスキルや経験はなんですか?」
キャリアがはっきりしない部下に対しては、価値観や仕事のやりがいから話を引き出すのも有効です。
- 「今の仕事にやりがいを感じていますか?」
- 「どのような業務に興味がありますか?」
やりたいことだけではなく、困っていることについても質問すると、悩み・課題を引き出すことができます。
- 「今の会社に満足していますか?」
- 「会社や職場、働き方について改善したい点はありますか?」
- 「伝えておきたい個人的な事情はありますか?」
フォローアップ
キャリア面談のあと、期間をおいて部下の様子を見守ります。フォローアップ面談を設け、以下について直接確認するのもよいでしょう。
- 面談中にあがった課題を解決できているか
- 会社からのサポートを適切に受けているか
キャリア面談に必要なスキル、姿勢とは?
傾聴スキルは、キャリア面談で部下の話を引き出すのに有効です。上司が準備段階でロールプレーイングを導入すると、ヒアリングスキルが高まり、面談に望ましい姿勢・態度を習得できます。
キャリア面談で上司が陥りがちなのは、自身の成功体験を語ってしまうこと。上司本人にとって「良いキャリア」であっても、部下に適したキャリアとは限りません。キャリアの多様化を踏まえ、部下自身の考えを尊重することが求められます。部下の要望が会社の期待する役割とは異なるものだったとしても、面談を行う上司は部下の話を受け入れる姿勢を心がけることが重要です。
キャリア面談で、親の介護や本人の病気、マネープランといった専門的な話が出た場合、無理に上司だけで解決する必要はありません。ヒアリング内容をもとに人事部に共有することで、専門的な支援につなげることが可能です。
また、部下がキャリアについて相談しやすいよう、日頃からコミュニケーションをとることも重要なポイントです。
【まとめ】
- 部下に関する情報を収集し、社内のキャリア支援制度への理解を深めたうえで面談に臨む
- 面談では部下の考えを尊重しながら、話を引き出す
- 介護やマネープランなどの専門的な質問に対して、無理に答えようとしない
- 面談実施後は、部下の様子を見守りながら適宜フォローアップを行う
- ロールプレーイングを通じて、傾聴スキルを向上させる
流れをイメージするために、ロールプレーイングもやってみようかなあ。越谷さん、ちょっと付き合ってくれない?
そうね、キャリア面談シートをもとにやってみようか
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!