職場のモヤモヤ解決図鑑【第75回】
チームはなぜ、ギクシャクするのか?
チームビルディングの基本
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
-
志田 徹(しだ とおる)
都内メーカー勤務の35才。営業主任で夏樹の上司。頼りないが根は真面目。
-
児玉 夏樹(こだま なつき)
社会人3年目の25才。志田の部下。ネットとサブカルが好き。
他部署との合同プロジェクトに参加した児玉さん。メンバーとの初回ミーティングの雰囲気がギクシャクしていたため、どっと疲れを感じたようです。同じ会社の従業員といっても、普段関わり合いのないメンバー同士では、なにかと緊張してしまうもの。チームの雰囲気を良くしていくために、何ができるのでしょうか。
チームとは
組織やチームには「互いの仕事に無関心」「人間関係がギクシャクしている」「発言量やモチベーションに差がある」など、さまざまな問題が発生します。良いチームの作り方を学ぶにあたり、まずはチームとは何かを「グループ / 集団」「チーム / 組織」との違いから整理しましょう。
グループ、集団
ただ人が集まっている状態を、「グループ」もしくは「集団」と呼びます。グループとは、つまり単に区分けされた人の集まりです。メンバー個人の貢献を足したものが、グループの成果であり、必ずしも集団として一つの目標達成を念頭に置いていません。
チーム、組織
一方、目的を達成するために構成されるのが「チーム」や「組織」です。適材適所を意識したメンバーの配置や業務の効率化などによって、チームの相乗効果を狙い、成果を最大化させます。グループが出す成果よりも、さらに大きな成果を残せることが特徴です。チームや組織をうまく機能させるためには、メンバー全員のゴール設定や明確な目標設定がポイントとなります。
チームの状態を確認する「5段階プロセス」
チームでなにが起こっているのかを把握する際は、チームが今どの段階にあるのかを認識することが重要です。チームがどのようにして形成されていくかを段階的に表した概念に、「タックマンモデル」があります。
タックマンモデルとは、心理学者のブルース・W・タックマンが1965年に提唱したチームビルディングの考え方です。チームが形成されて起こる具体的な変化を、五つの段階にわけて解説。タックマンモデルを理解することで、チームの現状を客観的に分析し、良いチームを作るためにどんなことが必要なのかを考えられるようになります。
1. 形成期(Forming)
形成期とは、チームが結成して間もない時期。メンバーはお互いを理解しておらず、目標や役割が定まっていないため、不安と緊張に包まれています。そのため、積極的なコミュニケーションが大事です。メンバー同士の自己紹介や、交流会など、仕事を離れて自由に発言できる場を設けると、相互理解が進むでしょう。
リーダーは、チームの目標を早期に設定して共有します。チームのゴールや各々が期待することについて、オープンな雰囲気でディスカッションすることも、相互理解に役立つでしょう。
- リーダーの役割:チーム目標の早期設定と明文化
- できること:自己紹介 / 交流会 / オープンなディスカッション
2. 混乱期(Storming)
混乱期は、初期の緊張が薄れて、メンバーが各自の仕事の進め方や役割について主張するようになる時期。不安がなくなったことから活発な意見交換が可能になりますが、一方で考えのズレから衝突が起こることもあります。
この時期は、コミュニケーションの質を重視することが大切です。不満などのネガティブな意見も、率直に話し合える環境づくりが求められます。リーダーにはメンバーの意見に耳を傾け、チームをまとめる調整役としての動きが期待されます。
- リーダーの役割:チームメンバーの話を聞き、まとめる調整役
- できること:不満などのネガティブな意見も率直に話せる場作り
3. 統一期(Norming)
統一期は、チームが一致団結できる時期。メンバーはお互いの考え方や価値観を受け入れられるようになり、人間関係が安定します。この時期には、より深いコミュニケーションを行うとよいでしょう。課題解決に向けて議論したり、仕事内容を互いに共有したりすることで、お互いをサポートしながら目標に向かうことができます。
一方で統一期は、チームがまとまっているからこそ、一つの考えが絶対だと認識してしまったり、それにより誤った方向性に進んでしまったりする可能性が高くなります。リーダーはチームを客観視し、方向性を見誤らないようにしなければなりません。
- リーダーの役割:チームが安定しているからこそ、客観的な視点から方向性を誤っていないかを判断する
- できること:お互いに助け合うための仕事内容や状況の共有 / 悩みの解決に向けた議論
4. 機能期(Performing)
機能期は、チームとしての成果が出てくる時期。メンバーが自信と責任を持ち、リーダーがいなくても自走できるようになります。この時期は相乗効果が生まれ、チームの成果が最大化されます。機能期は、メンバーが仕事に没頭しすぎないように、リーダーが率先してリフレッシュを促すなど、後方支援を行います。
- リーダーの役割:後方支援など、メンバーがパフォーマンスを最大化できるための環境づくり
- できること:業務量のヒアリング / 休暇の推奨 / 悩みの解決に向けた議論
5. 散会期(Adjourning)
散会期は、チームが解散する終わりの時期。メンバーはスキルアップし、次の目標に向けて動き出します。それぞれが満足感や達成感を持っているのが理想の状態です。
チームビルディングとは
チームビルディングとは、「チームの形成段階に合わせ、目標達成できる組織を構築する取り組み」と言えるでしょう。メンバーの協力を促し、パフォーマンスの最大化を狙うのがチームビルディングのポイントです。
良いチームとは、ただメンバーの仲が良いだけではありません。目標を共有し、成果を出すために各々がモチベーション高く行動できる――そのために、チームビルディングが役立つのです。
チームビルディングがもたらすメリット
目標の共有による達成意識の醸成
チームには「目標」が重要です。メンバー同士が目標を共有することで、目指すべき方向が明確になります。とりわけ形成期、つまり初期段階における目標設定は、チーム作りの大事なポイントです。
仲間意識によるモチベーションの向上
目標と同時に、メンバーそれぞれのチーム内での役割をはっきりとさせることも重要です。一人ひとりに役割が与えられることで、メンバーは「チームへ貢献している」と実感することができます。お互いに助け合い、協力することで、より困難なチャレンジも乗り越えられるでしょう。
新しいアイデアの創出
意見を率直に言い合えるチームでは、新しいアイデアが生まれる可能性が高くなります。多様な意見があると、今までにない視点に気づいたり、課題解決への突破口が見つかったりすることにつながるからです。
【まとめ】
- 目標達成に向けて動く人々の集まりを「チーム / 組織」と呼ぶ
- チームは形成期から散開期まで五つの段階があり、段階に合わせてコミュニケーションの活性化や悩みの共有が望まれる
- チームビルディングを行うことで、達成意識の醸成や、モチベーション向上につながる
後編では、具体的なチームビルディングの手法を紹介します。
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!