職場のモヤモヤ解決図鑑【第70回】
アルムナイ採用の流れ。
戻ってきた社員に活躍してもらう方法とは?[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
-
吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
-
石井 直樹(いしい なおき)
人事労務や総務、経理の大ベテラン42歳。部長であり、吉田さんたちのよき理解者。
アルムナイ採用の導入が決まり、受け入れ体制を整えることになった吉田さん。ほかの採用とは異なり、アルムナイ採用だからこそ気を付けることもあります。再雇用後も活躍してもらうためには、どのような支援が必要なのでしょうか。
アルムナイ採用の流れ
アルムナイ採用は、退職者を積極的に再雇用する制度です。しかし、アルムナイだからといって無条件で採用するわけではありません。求める人材や採用の基準を明確にした上で、アルムナイと良好な関係を維持することが重要です。また再雇用時は、就業経験があるからといって育成をおろそかにせず、ほかの新入社員と同様に支援する必要があります。
【STEP1】
再雇用の条件を決めておく
アルムナイ採用を行うにあたっては、面接の回数や採用基準を社内で固めておく必要があります。また、採用した場合の待遇や評価について既存の従業員が不満を抱かないよう、両者にとって公平な制度を設けなければなりません。
アルムナイ採用の条件を明確化し、既存の従業員に周知するといいでしょう。適切な選考を経て採用していると伝えることで、アルムナイ採用へのネガティブなイメージを防ぐことができます。
【STEP2】
退職時に再雇用制度があることを伝える
従業員が退職する際は、退職時面談などで改めてアルムナイ採用の運用、条件について伝えます。アルムナイ採用の意義を伝えて「退職者を裏切り者扱いする企業ではない」と示すことで、退職後も良好な関係を築きやすくなります。
【STEP3】
アルムナイネットワークを維持する
アルムナイネットワークの運用方法を決定します。ネットワーク構築には、SNSで緩くつながりを維持する方法や、アルムナイに特化したサービスを活用する方法があります。そのほか、定期的に交流会などのイベントを開催するのもいいでしょう。継続してアルムナイと接点を持つことは、外部の知見獲得という点でもメリットがあります。
【STEP4】
アルムナイ採用を行う
再雇用時は、事前に労働条件や働き方について細かくすり合わせを行うことが重要です。在籍時と現在では、制度や待遇、職場環境が異なる場合もあります。そのギャップを埋めるため、本人の要望に耳を傾けつつ、会社が求める役割や提示できる条件を改めて説明します。合わせて、退職理由や当時の会社への不満、再入社後に心配な点なども確認しておくといいでしょう。再雇用にあたって不安を解消することで、両者とも安心できます。
【STEP5】
アルムナイへのオン・ボーディングを実施する
入社後は、会社の事業内容や経営目標などを改めて説明する機会を設けます。加えて、業務で関わる他の社員を紹介し、新しい事業について詳しく説明するなど、オン・ボーディングを行うことが重要です。職場に早くなじめるように支援することで、即戦力化を目指します。
- 【参考】
- オン・ボーディング|日本の人事部
アルムナイ採用のポイント
アルムナイ採用を効果的に実施するためには、退職時の対応や受け入れ体制を整えることが重要です。
イグジット・マネジメントを行う
アルムナイ採用には、従業員へのイグジット・マネジメントが効果的です。イグジット・マネジメントとは、組織の健全な新陳代謝を促すために、退職を戦略的に計画・管理する人材マネジメントのことです。スムーズかつ建設的な関係解消を容易にすることで、アルムナイ採用につなげます。
- 【参考】
- イグジット・マネジメント
イグジット・マネジメントのポイントの一つが、「エンプロイー・エクスペリエンス」です。エンプロイー・エクスペリエンスは、従業員が企業において体験するポジティブな経験を指します。従業員の働きがいやエンゲージメントを向上させる効果が期待できます。
長時間労働の削減や有給取得率の上昇など、日頃の労働環境を整備することは、円満退職の基盤となります。さらに、退職表明から退職まで「オフボーディング」に気を配ることも重要です。例えば、従業員から退職の意向を聞いた際、執拗に引き止めるとネガティブな印象を与えてしまいます。「一緒に働けてよかった」「次の場所でも○○さんなら活躍できる」と、温かい言葉をかけて送り出すといいでしょう。
受け入れ体制を整える
既存の従業員に対して、アルムナイ採用の意義や制度の詳細、採用方法などを伝えます。アルムナイが会社に戻ることで職場に生じるメリットを理解できれば、社内でアルムナイを歓迎する雰囲気を醸成できます。
多様な雇用体系を用意する
ライフスタイルの変化など、さまざまな事情でフルタイム勤務ができないアルムナイもいます。時短勤務や業務委託、副業など多様な雇用体系を用意しておけば、より戻りやすくなります。
アルムナイ採用を実践する企業事例
最後に、アルムナイ採用を実践する企業の事例を紹介します。
人的ネットワークの活用やビジネス知識の蓄積|双日株式会社
総合商社である双日では、プラットフォーム「双日アルムナイ」を設立し、アルムナイと双日の役職員との関係をつないでいます。アルムナイは、講演会や交流会に参加できるなど、交流を通じてビジネスナレッジのアップデートが可能です。アルムナイにとって、交流を続けることのメリットを上手に掲示している例といえます。
退職後もバーチャル社員証でつながり続ける|スープストックトーキョー
スープストックトーキョーでは、希望する退職者に「バーチャル社員証」を発行。現社員と同様に店舗での割引待遇を受けられるほか、社内イベントへの参加や社内報で情報を得られるなど、さまざまな接点を構築しています。雇用関係に留まらず、「卒業した後も仲間」というメッセージを込めています。
- 【参考】
- バーチャル社員制度
【まとめ】
- アルムナイ採用は、ネットワーク構築のほか、採用基準の明確化や周知が重要
- 退職表明から退職までのオフボーディングに気を配ることで、アルムナイと良好な関係を築くことができる
- 再雇用者には会社の現状を説明する機会を設けるなど、オン・ボーディングの体制を整える
社員の在職中から良好な関係を築くことがアルムナイ採用のポイントなんですね
退職時に無理な引き止めなどで関係がこじれてしまっては、元も子もないからね
アルムナイの採用基準を周知できるように整えないと……まだまだやることがあるなあ
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!