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ダイバーシティ・リーダーシップが会社を変える、
日本を変える
「自分で決められる人材」の育て方とは

東洋大学理工学部生体医工学科准教授
埼玉県雇用・人材育成推進統括参与

小島 貴子さん

裁量権があっても決められない、簡単なことほど丁寧に決める訓練を

「自分で決められる力」を養うにはどういうトレーニングが必要でしょうか。

小島 貴子さん Photo

先ほど決断には責任が伴うと言いましたが、自分自身に関する問題なら、それほどでもないでしょう。だから最初は“自問自答”、自分のことについて考えて決めるトレーニングから始めるといいんですよ。それもごく簡単なことから。たとえば私は研修でよく参加者に「お昼に何を食べますか」と聞いて、それをどう決めたかを書いてもらいます。今朝何を食べたか、昨日何を食べたかで決める人もいれば、今晩の食事の予定で決める人もいます。他にも場所や予算など、いろいろな条件が挙がってくるんですが、私が一番素敵だなと思ったのは「これが最後の食事だと思って決めた」という答えです。人生最後の食事だと思ったら、自分の中のあらゆる選択肢、あらゆる可能性を持ちだして選ぶでしょう。もちろん現実的には無理だけど、それくらいの思いで選択したほうがいい。

とりあえず決めるのではなくて、最大限の気持ちと思考を踏まえて、決めていくという考え方の人なら、プレゼンテーションにも説得力が出るだろうし、ホスピタリティーの面でも素敵じゃないですか。だから簡単に決められそうなことほど丁寧に、本気で決める。「決める」という行為自体を深く、つきつめて考える練習を早いうちから積んでおいたほうがいいと思いますね。

日本の教育は子どもや若者に「自分で決めていい」という承認を与えてこなかったということですが、近年は若手社員の多くが、仕事上の問題だけでなく、自分の人生やキャリアについても自分で決められないといわれます。やはり教育が大きな原因ですか。

二人の子どもを育てた経験からしても、それは否めませんね。二人とも自然保育を行う保育園に通っていましたが、そこでは本当にのびのびとしていました。子どもは何をしてもかまわない。雪の降る真冬に3歳児が裸で水遊びをしていても、保育士さんたちは「禁止」の言葉をいっさい使わず、見守りながら、本人が納得するまでやらせるんです。子どもを決して大人の指示で育てないんですね。

小さい頃にそういう経験をさせれば、何でも自分で決めるようになるだろう、そして決めたことに対しては人のせいにしたり、ねたんだり、うらやんだりしないようになるだろうと思っていました。ところが小学校へ上がると雲行きが怪しくなってきて、それまで私は一度も子どもたちに指示をしたことなんてなかったのに、指示を求めるようになってきたんです。自分のことは自分で決めていいのよ、自分で考えてやりなさいと伝えても、「学校では自分で決めちゃいけないんだもん!」と聞かないんです。どうも先生に「小島君は何でも勝手にやる」といわれたみたい(笑)

学校という集団生活のなかで指示されて動くことに慣らされてしまうわけですね。

会社も同じですよ。管理する側にとっては、指示をしたほうが簡単なんです。でもこれだけ環境の変化が激しいと、上からの指示だけで人が育つことはありません。指示を出した翌日に状況が全部覆ったりするわけですから。だからこそ、私はいま「『自分で決める』を考える」をテーマに、企業の新人研修や内定者研修の支援を行っているんです。権限がないから自分で決められないという人がよくいますが、決して裁量権の問題じゃない。裁量権を与えても、決められない人は決められません。自分一人で決めなくてはいけない怖さと、自分一人で決めていいんだという自己肯定感を両方ともきちんと身につけることで、人はさまざまな領域に挑戦していけるんです。

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