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転勤が人生設計に与える影響を考える

ニッセイ基礎研究所 総合政策研究部 研究員 河岸 秀叔氏

転勤イメージ画像

1――なぜ企業は転勤を命じるのか

企業で基幹的な役割を担う総合職は、勤務地を限定せず、幅広い業務に従事する働き方が求められてきた。近年では、勤務地限定正社員や地域職といった制度を採り入れる企業も増えているものの、2024年時点で、正社員男性の53.0%、女性の38.6%は総合職である 1。多くの人にとって転勤は縁のある制度だろう。

転勤は通常、「転居を伴う配置の変更」を指す。総合職のような職種では、「就業規則に定めがあり、勤務地を限定する旨の合意がない場合には、企業が労働者の同意なしに勤務地の変更を伴う配置転換を命じることが広く認められて」いる 2。このような職務内容・勤務地の決定権を配置命令権という。

企業が転勤を命じる理由は、大きく三つに分類される。すなわち、人材育成、人員配置の柔軟性の確保、マンネリ化や不正の防止だ。また、特に人材育成の観点から、転勤経験が昇進につながる場合もある 3

(図表1)女性の理想のライフコース/(図表2)女性の就業数の推移

1 厚生労働省. 令和5年度雇用均等調査.2024-07-31
2 厚生労働省. 転勤に関する雇用管理のヒントと手法. 2017-03-30
3 国立社会保障・人口問題研究所. 企業の転勤の実態に関する調査.2017-10-25

2――転勤が人生設計に与える影響

1|理想のライフコースは、「結婚」×「共働き」×「家庭と仕事の両立」

近頃の若者は結婚しない、とよく言われる。しかし現在でも、多くの若年層は理想のライフコースに結婚を想定している。20代から30代前半の未婚者のうち、「いずれ結婚するつもり」の人は、減少傾向にはあるものの、依然として30代前半の男性で約7割、それ以外で8割弱存在する 4

結婚という理想像が大きく変わらない反面、結婚以降の家族の形は変化している。共働き世帯の増加は周知の通りだが、現在では理想とする共働きの姿も変わりつつある。2010年代までは、「結婚・出産を機に一時退職し、子育て後に仕事を持つ」再就職コースが理想であった。しかし2020年代に入ると、子供を持ちながら仕事も続ける「両立コース」を希望する割合が最も高くなっている(図表1)。

実際、女性のライフコースは変化している。第二次安倍政権の女性活躍推進政策などもあり、2014年以降、女性の正規雇用者数は増加傾向にある(図表2)。また、第一子妊娠中に正規雇用者であった女性が、育児期間中に退職や非正規雇用者となる割合は減少している(図表3)。妊娠や出産を機にキャリアを諦めるのではなく、正規雇用者としてキャリアを積むというライフコースが浸透しつつある。

(図表3)第一子妊娠中に正規雇用者であった者の育児中の就業状態/(図表4)配偶者の転勤に際した離職経験の有無

4 国立社会保障・人口問題研究所. 第16回出生動向基本調査. 2022-09-09

2|転勤の影響(1) 女性のキャリア断絶と生涯可処分所得の減少

労働力人口に占める女性割合は45%を超え、女性の社会進出は進展している 5。しかし、家庭との両立が難しくなり、働き方の調整を要する局面では、妻がその役割を担うのが現実である。

転勤はその最たる例だ。配偶者の転勤に伴う離職は、女性が大多数を占めている(図表4)。また、有配偶かつ前職が正規雇用者のうち、「家族の転職・転勤又は事業所の移転のため」に離職した者の約76%は女性だ 6。こうした、配偶者の転勤により退職した女性は年間約2万人と推計され 7、退職後に転居先で正社員として働く人は1割未満とも言われる 8

退職以外に、夫の単身赴任や、休職・勤務地変更による帯同などが想定されるが、いずれでもキャリアの停滞を招き得る。単身赴任の場合、特に幼い子供を有する共働き世帯への影響は大きい。妻はワンオペ育児と仕事の両立を強いられる。親族の手厚い支援などがない限り、両立の持続は難しい。

勤務地変更や休職など、妻が企業の制度を活用する手段も考えられる。しかし、川端(2018)の指摘のように、多くの企業がこれらの制度を有するわけではない。また、休職はキャリアブランクを生じさせる。このように、配偶者の転勤に際して妻が働き方を調整する上では、キャリアの停滞を招かないケースは限定的と言えよう。

こうした選択肢のうち、特に妻が退職した場合には生涯可処分所得にも影響を及ぼし得る。内閣府の試算では、妻が非正規雇用化や無業化した場合、正社員で働き続けた場合と比べて、生涯可処分所得が最大で約1.7億円低くなる(図表5)。この要因として、企業による非正規雇用への人的投資が正規雇用比で小さいことや、多くの非正規雇用者の業務は正社員に比べて定型的であり、高度なスキルが蓄積しにくいことが考えられる 9

(図表5)妻の出産後の就業状況別生涯世帯可処分所得(試算)の比較/(図表6)現在の会社での転勤経験に照らして困難に感じること

5 厚生労働省「令和5年の働き女性の状況」
6 厚生労働省. 令和4年度就業構造基本調査
7 太田聰一. 夫の転勤による妻の無業化について. リクルートワークス研究所. 2017-03-15
8 株式会社イノベーター・ジャパン. 転勤帯同に関する調査概要. 2022-12-1
9 厚生労働省.能力開発基本調査(令和5年度)

3|転勤の影響(2) 結婚のハードルを高める

転勤やそれに付随するキャリアの断絶は、結婚の障壁になっていると考えられる。東京商工会議所の調査では、東京在勤の独身男性の20.0%が転勤や単身赴任の存在を、独身女性の17.4%はキャリアに支障が出る不安が、結婚のハードルになると考えている 10。また、実際に転勤を経験した20代~30代で約半数前後の人も、転勤によって結婚しづらくなったと回答している(図表6)。

転勤により、理想のライフコースが破綻するリスクを抱える状況下では、雇用や経済力が安定した生活を見込みにくい。それによって、未婚化や晩婚化が進めば、母親の減少や一人当たりの出生数の減少を通じ、少子化にもつながりかねない。転勤により子供を持ちづらくなると感じている若年層や未婚者、子供のいない人々は、少なくない(図表6)。

10 東京商工会議所.「東京在勤若者世代の結婚・出産意識調査」結果. 2024-08-21

3――対策の方向性

従来、多くの企業では従業員の事情に合わせて、個別的な調整を実施してきた。しかし、全世代的な転勤への許容度の低下や、学生からの不評もあり、人手不足・採用難の状況下の近年では転勤制度自体を見直す企業も現れている 11

見直しの方向性は、大きく2つに分類できる。すなわち、(1)転勤の存在意義自体を見直す(2)転勤に対する経済的支援の創設・強化だ。(1)では、主に従業員が転勤リスクをコントロールできるような施策が含まれる。リモートワークによる転勤の廃止や、(一時的な)転勤可否の選択制度がこれに該当する。(2)では、従業員のモチベーション向上を図る。一時金の支給や、転勤手当の増額が該当する。

ただし、(2)は、依然として転居が前提であることには変わらず、人生設計への影響は解決しない。パーソルの調査では、2024年時点で、20代男性の22.0%、女性の27.1%が「どのような条件であっても転勤は受け入れない」と考えている。また、30代でも、それぞれ約2割程度の人が同様に考えている 12。結婚や出産など、多くのライフイベントを控える若年層や、既に子育てを行っている層にとっては、必ずしも経済的支援が退職抑制につながるとは限らない。

さらに、政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針)」にてL字カーブ 13 の解消といった女性活躍推進を、「こども大綱」では、若年層の所得環境の安定を通じて、少子化・人口減少の流れを大きく変えることを掲げる。これらの大局的な流れに対し、(2)は必ずしも合致しないようにも思える。

(2)のような仕組みは、特に40代以降を中心に、幅広い世代からニーズがある 14。また、人事上の障壁が少なく、企業にとっては取り組みやすいこともあり、近年では経済支援を中心とした転勤の見直しが進んでいるという 15。しかし、若年層や子育て世帯の退職抑制や、少子化対策という視点から考えれば、(1)のような、転勤リスクをコントロールできる仕組みの整備についても、検討の余地があるのではないだろうか。

11 河岸秀叔. 見直しが求められる転勤制度. ニッセイ基礎研究所.2024-03-15
12 パーソル総合研究所. 転勤に関する定量調査. 2024
13 女性の年齢階級別の正規雇用比率が30歳以降低下する現象のこと
14 株式会社Indeed. 転勤に関する意識調査 詳細データ集. 2023-05
15 友部温. 転勤後押し、手当で報いる. 日本経済新聞社. 2024-04-29

4――おわりに

転勤には、女性のキャリアの断絶や世帯収入の減少、結婚のハードル上昇につながる部分がある。こうした特徴が、結婚、共働き、家庭と仕事の両立という新しい理想のライフコースと衝突し、特に若年層や子育て世帯の人生設計に支障を生じさせている。

従業員の転勤の許容度が低下し、企業は転勤制度の見直しを迫られている。その方向性は、大きく(1)転勤の存在意義自体を見直す(2)転勤に対する経済的支援の創設・強化という2つに分類できる。ただし、(2)のような経済的な支援だけでは、人生設計への影響は解決せず、必ずしも若年層や子育て世帯のニーズを取り込めるとは限らない。(2)だけでなく、(1)についても、検討の余地があるのではないだろうか。

転勤に対する忌避感が強まる現在、転勤制度を有する企業は、否応でも転勤回避の動きに向き合わざるを得なくなっている。企業がどのように見直しを進めていくのか、今後の動向を見守りたい。

【参考文献】
川端由美子. 配偶者の転勤に対する諸制度とその課題 -異動、休職、再雇用の観点から-. 日本労務学会誌. 2018年19巻第1号

株式会社 ニッセイ基礎研究所

ニッセイ基礎研究所は、年金・介護等の社会保障、ヘルスケア、ジェロントロジー、国内外の経済・金融問題等を、中立公正な立場で基礎的かつ問題解決型の調査・研究を実施しているシンクタンクです。現在をとりまく問題を解明し、未来のあるべき姿を探求しています。
https://www.nli-research.co.jp/?site=nli

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