【コスト削減・業務効率UP・コンプライアンス強化】
要注目の「電子契約」とこれからの企業実務
2. 電子契約の法的有効性
[3]電子証明書の発行元(特定認証業務と認定認証業務)
印鑑証明書は市区町村が発行するのに対して、電子証明書は民間の事業者が発行します。この発行元の信頼性が、電子署名の信頼性に大きく関係します。
電子証明書によって確認される電子署名の方式が、技術的な基準を満たす場合の電子証明書の発行元を「特定認証業務」といいます(電子署名法2条3項)。特定認証業務であって、電子証明書発行のための本人確認の手続き等の運用について、法律上の厳しい基準を満たすことについての認定を受けた発行元は「認定認証業務」といいます(電子署名法4条)。この他に、商業登記に基づいて、会社代表者等に登記所が発行する電子証明書や、住民基本台帳カードに格納される電子証明書(主にe-Taxや電子入札等の公的部門への申請に利用します)があります。
認定認証業務が発行した電子証明書であれば、実印に匹敵する信頼性があります。ただし、認定認証業務から電子証明書を受ける場合には、戸籍謄抄本または住民票の提出が必要になるうえに、費用も高めです。一方、認定を受けていない特定認証業務には、認定認証業務と同等の措置をとっているものもあれば、簡略に行っているものもあります。費用は認定認証業務より安いことが多いようです。
したがって、重要な契約を行うのであれば、認定認証業務に基づく電子署名を用いるべきですが、そうでない場合には、認定を受けていない特定認証業務を用いることも考えられます。その場合でも、特定認証業務がどこまで安全な運用を行っているかを確認すべきです。
(5)電子帳簿保存法
契約書等の国税関係書類は、事業者に保存義務があります。電子契約をはじめとする電子取引の場合には、以下の2つの措置のどちらかを行う必要があります(電子帳簿保存法10条、同施行規則8条)。
[1]電子的なタイムスタンプ等を付けて保存
[2]正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理の規定
ここでいうタイムスタンプとは、正確な時刻を管理しているサーバが、時刻とサーバの電子署名を付けることにより、電子文書の存在時刻の証明を行うものです。電子帳簿保存法に対応する場合には、一般財団法人データ通信協会の認定を受けたタイムスタンプが用いられます。上記の[1]については、現行法では国税関係書類の管理者等の電子署名を付ける必要がありますが、施行規則の改正により2016年からはタイムスタンプだけで済むようになります。
(6)e-文書法
官公庁への申請書類や、法律で保管が義務付けられる書類の多くは、e-文書法および各省の省令で電子化が可能になっています。これらの書類の電子化には、電子署名が必要なケースが大部分です。ただし、書類によって電子化の条件等が定められていますので、電子化にあたっては法令を確認する必要があります。
(7)長期署名
電子証明書には、有効期限があります。通常、有効期間は1年から3年程度です。電子証明書の有効期限後に訴訟が起こったとしても、有効期間内に行われた電子署名は有効ですが、有効期間内の電子署名であることを証明する必要があります。このために、前述のタイムスタンプを用います。タイムスタンプは10年ほどの有効期間がありますが、それ以上にわたって保存する必要がある場合には、長期保存という技術を使います。これは、いわばタイムスタンプを重ねがけして、有効期間を延長する仕組みです。CAdES、XAdES、PAdESなどの長期保存の文書フォーマットが標準化されており、多くの電子契約システムは、長期保存をサポートしています。
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