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田中潤の「酒場学習論」
【第7回】素晴らしい酒場たちと「レジリエンス」

株式会社Jストリーム 管理本部 人事部長

田中 潤さん

Jストリーム 人事部長  田中潤の「酒場学習論」

古今東西、人は酒場で育てられてきました。上司に悩み事を相談した場末の酒場、仕事を振り返りつつ一人で呑んだあのカウンター。あなたにもそんな記憶がありませんか。「酒場学習論」は、そんな酒場と人事に関する学びをつなぎます。

今年の正月に、今の世界を想像できた人はいるでしょうか。現実は人間の想像を超えます。まさに世界史的出来事のまっただ中に私たちはいるのです。そして、愛すべき酒場の皆さんが大変な苦境に陥っています。本稿を執筆している時点で、7都府県に緊急事態宣言が出されています。多くの酒場は緊急事態宣言を前に、営業の自粛や営業時間短縮などの施策をすでにとってきました。SNSでさまざまな酒場のオーナーの声を目にしますが、本当に苦悩の日々です。

しかし、とにかく前を向こうとされています。店舗を開けないと日銭が入ってこない、でも繁盛すると店内が三密に近い状況になりかねない。食事中にマスクをする人はいないので、飛沫感染のリスクもある。自分の店でお客さまに何かがあってはいけない……。営業を早期に自粛された酒場は、自分たちのことではなく、お客さまのことを考えて判断をされています。頭が下がりますし、涙が出ます。

SUGER Sake & Coffee(阿佐ヶ谷)

SUGER Sake & Coffee(阿佐ヶ谷)

営業をするにも、一度の入店客数を極端に絞って社会的距離を保つなど、徹底的な工夫をされています。そして、多くの酒場がテイクアウトに注力しています。家が近ければ毎日寄りたくなるような魅力的なテイクアウトを提供されている酒場がたくさんあります。しかし、現時点では酒類のテイクアウトはできないので、テイクアウトで繁盛しても利益については心配になります。国税庁が飲食店に対して期限付きの酒類小売業免許を付与する決定をしたのは、最近では数少ない、うれしいニュースでした。

良い酒場ほど、実にきちんとした対応をされています。また、ものすごい思いで知恵を絞り、できることをしようと苦闘されています。そんな姿をみて、またその酒場が好きになります。でも、今は酒場で仲間と一献、という時期ではありません。早くこの災いをやり過ごすためには、徹底的に外出を控えるしかありません。

カントニクス(西荻窪)

カントニクス(西荻窪)

酒場の皆さまの奮闘ぶりをみるにつけ、頭に浮かぶ言葉があります。それは、「レジリエンス(resilience)」です。『日本の人事部』のサイトでレジリエンスを調べてみると、次のように定義されています。

「レジリエンス」は、「復元力」や「回復力」「弾力」などと訳される言葉です。近年は特に、「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生きのびる力」を意味する心理学的な用語として使われるケースが増えています。また、レジリエンスの概念は、個人から企業や行政などの組織・システムに至るまで、社会のあらゆるレベルにおいて備えておくべきリスク対応能力・危機管理能力としても注目されています。

困難に直面して、ぺちゃんこにつぶれてしまうのではなく、多少はへこんでも頑張ってしなやかに跳ね返していく復元力を指します。カウンターの中に立つ、あのご主人やあの女将の笑顔が浮かんできます。絶対に復元します、いえ、復元させましょう。

燗屋tamame(千葉)

燗屋tamame(千葉)

こちらも『日本の人事部』のサイトからの引用になりますが、「レジリエンスが強い人」は三つの基本的な心理的特性を持つといいます。

(1)肯定的な未来志向 ……未来に対して常に肯定的な期待を持っていること
(2)感情の調整 ……………感情のコントロールを適切に行えること
(3)興味・関心の多様性 ……興味・関心をさまざまな分野に向けていること

まさに、今の私たちが持ちたい態度ではないかと思います。こんな思いを抱いて、多くの酒場が特殊な形態での営業やテイクアウト、デリバリーに取り組んでいます。量の出ない個店ではデリバリーベンダーに支払う手数料がペイできないので、ご主人や女将自らが自転車でデリバリーに取り組んでいる店もあります。そんな話を聞くと「レジリエンス」という言葉が自然と浮かんでくるのです。

小料理kokoro(新宿)

小料理kokoro(新宿)

ある酒場のオーナーがSNSで、自店が購入している酒販店を紹介していました。どの酒蔵の酒をどの酒販店から買っているかはちょっとした企業機密ですが、これを公開し、店舗を閉めている期間はぜひその酒販店から酒を買って自宅で呑んで欲しいとメッセージングしていました。実に愛に溢れる話です。私たちが酒場でお酒を楽しめるのは、酒場と酒販店と酒蔵の三者がきちんと機能しているからこそです。

酒場のオーナーは、自らの店に人が集い、提供する酒と肴を喜び、ささやかな元気をつけて帰っていく背中を見送るのが好きなのです。酒場は「場」なのです。必ずそんな「場」に笑顔で集える日がまた来ます。今回はテイクアウトで奮闘している「素晴らしい酒場たち」の写真を何店か紹介しています。レイアウトの都合で多く紹介できないのは残念ですが、まだまだたくさんご案内したい酒場があります。お近くの方はぜひ、テイクアウトで美味しい食事を楽しみながら酒場をご支援ください。

karasu(門前仲町)

karasu(門前仲町)

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【第6回】銀座「しらたまや」とトランスファラブル・スキル
【第5回】銀座「バー嘉茂」とアイデアの創出・副業
【第4回】八戸の洋酒喫茶「プリンス」とエンゲージメント、リファラル採用
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田中 潤さん(株式会社Jストリーム 管理本部 人事部長)
田中 潤
株式会社Jストリーム 管理本部 人事部長

たなか・じゅん/1985年一橋大学社会学部出身。日清製粉株式会社で人事・営業の業務を経験した後、株式会社ぐるなびで約10年間人事責任者を務める。2019年7月から現職。『日本の人事部』にはサイト開設当初から登場。『日本の人事部』が主催するイベント「HRカンファレンス」や「HRコンソーシアム」への登壇、情報誌『日本の人事部LEADERS』への寄稿などを行っている。経営学習研究所(MALL)理事、慶応義塾大学キャリアラボ登録キャリアアドバイザー、キャリアカウンセリング協会gcdf養成講座トレーナー、キャリアデザイン学会代議員。にっぽんお好み焼き協会監事。


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東京都 HRビジネス 2020/04/21

 

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