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現場重視で変化に適応し、事業拡大
社会的なインフラとしての人材サービス企業へ

テンプホールディングス株式会社

水田正道さん

本業を、実直に、確実に積み上げることの大切さ

 そういう中で、テンプグループが40年もの間、業界をけん引し続けていられる理由は何だと思われますか?

本業を、実直に取り組んできたことだと思います。現場重視で顧客に真摯に向き合い、一途に、人材サービスにまじめに取り組んできましたから。その陰には、運が服を来て歩いていると言われるほど強運の持ち主の篠原の存在も大きかったと思います(笑)。

水田正道さん インタビュー photo

そのような当グループにも、いくつかの大きなターニングポイントがありました。その中でも私が考える大きなターニングポイントは、テンプスタッフ創業から20年後に、株式の店頭公開を直前になって取りやめたときだと思います。当時は、いろいろなことを言われました。ここまで準備していながらおかしいじゃないかとか、だから女性経営者はダメなんだとか。でも、後々、その決断が正しかったことは我々の成長が証明しています。当時は、まだマーケットが確立されていなかったので、時期尚早だったと思います。篠原の決断は、まさに英断でした。もし当時無理をして店頭公開に踏み切っていたら、今のテンプグループはなかったでしょう。

また、1998年1月、9万人の登録スタッフの情報が流出してしまったことも、非常に大きな出来事でした。あってはならないことでしたので、正直私は、「会社がつぶれる」と思いました。でも、その大きな危機によって社内の結束力が高まり、次の成長の原動力になりました。

事業を続けていると、ずっと順風満帆なんてあり得ません。失敗はつきものです。ところが、つい「自分だけは大丈夫」と慢心しがちなのです。いつ当事者となってもおかしくありません。だからこそ、失敗によるピンチを、いかにチャンスに変えるかが大事だと思います。逆に、調子が良いばかりではダメで、失敗があってこそ引き締まる。大きな転期になると思います。

 2015年3月期、第2四半期決算でテンプホールディングスは全事業分野で増収、第2四半期として過去最高実績を上げています。そのような強い体制づくりには、積極的なM&Aもあるかと思いますが、いかがでしょうか。

人材サービス業は、広義で言えば情報産業です。良質な情報があるから人が集まる。だからこそ、一人ひとりの求職者ニーズに合ったいかに良質で豊富な情報を集められるか。そしてその情報を的確に編集して提供する能力が求められています。それを実現するには、環境変化や求職者の思考性等、様々な変化をキャッチアップしなければなりません。もちろん情報量も重要です。

そんな中で、インテリジェンスホールディングスのM&Aは大勝負でした。何しろ、当時インテリジェンスホールディングスは、テンプスタッフの時価総額を超える企業でしたから、リスクといえばリスクでした。でも、一番のリスクは何かと考えたとき、何もしないことがリスクだと思ったんです。派遣事業を成長させる自信はありましたが、人材紹介事業では後れを取っていました。紹介・メディア事業に強いインテリジェンスが加わることで、大きな補完関係を構築することができる。金融・証券系や大手製造業などの企業に強いテンプグループと、IT・通信関連企業に強みを持ったインテリジェンスグループの双方の事業が統合する効果も大きい。もちろん、交渉を重ねる中でお互いの信頼関係が増し、共に成長を目指せることを確信できたことも大きかったですね。

おかげ様で、インテリジェンスがグループに加わったことで、マーケットの目が変わったと実感しています。「これでテンプグループは、雇用の幅広い課題を解決できるようになったね」と、お客様からの期待値が上がっていると感じます。補完関係やシナジーはますます発揮していかなければなりませんが、最適なスピード感をもちじっくり進めていく。「急いては事を仕損じる」ことにならないように、お互いの事業を尊重しながら、じっくりと相乗効果を高めていきたいと考えています。

相乗効果に期待し、グループ経営の最適化を図るため、2015年3月期から事業を七つに再編した新セグメント体制に移行しました。地域、専門職、特定企業に強みを有する派遣グループ内の派遣事業を「派遣」に集約し、事務処理センターやコールセンターなどの事務系のアウトソーシングは「BPO(Business Process Outsourcing)」に集約。情報システムに関するコンサルティングから企画・設計・開発・運営・保守等のSIサービスとアウトソーシングサービスは「ITO(IT Outsourcing)」に、自動車の設計開発・実験やデジタルAV機器・ソフト開発など専門性の高い分野のエンジニアリング事業は「エンジニアリング」としています。また、求人広告・転職サービスに関しては、アルバイト・パートを中心とした求人情報サービス『an』を展開する「メディア」と、転職サービス『DODA』を展開する「キャリア」に分け、「キャリア」には従来の再就職支援サービスを展開するテンプスタッフキャリアコンサルティングと海外子会社の事業を加えています。そして、障がい者や保育、介護などの多様な領域での雇用開発を推進する「NED(New Employment Development)」という7セグメントで、意思決定の迅速化と適正な資源配分の仕組みを確立しています。第2四半期決算で、すべてのセグメントが増収しているということが、これらの取り組みの一つの成果になっているのではないかと考えています。

当社はやみくもにM&Aを行っているわけではありません。冒頭にも申し上げましたが、あくまでも、「人材サービス」を実直にやっている過程で、いかにお客様とスタッフにより良いサービスを提供できるかを考えてのこと。例えて言えば、ドラえもんのポケットを持つように、必要とされたときに「これ」という最適なサービスを提供できるようにしたい。そのための事業展開が大事だと思っていて、本業以外に手を出す考えは昔も今も持っていません。

 今年5月には、アジア地域事業の新体制を発表され、グローバル化も積極的に進めていらっしゃいます。

今年、北アジア(主に中国)を統括するケリーサービスとともに設立したTS Kelly Workforce Solutions Limitedと並行して、南アジアを統括するTS Intelligence South Asia Holdings Pte.Ltd.を設立し、アジアでの事業基盤の構築と競争力強化を図りました。それによって、アジア全域におけるNo.1の人材サービス企業を目指したいと考えています。私がすべきことは、5年後、10年後に、会社が持続的に成長しているようにすること。そのためには、人材のグローバル化は待ったなしの課題です。グローバルでの成長のために、一番成長しているアジアで圧倒的に力を発揮することが、非常に重要だと考えています。

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