日本企業が再び成長するためには「モノの見方を変える」ことが不可欠
原理・哲学に基づいた理念を継承し、日本企業を変革
株式会社 ヘイ コンサルティング グループ
高野研一さん
現代の企業が抱える「問題」がコンサルティング会社にとっての重要なテーマ
現在の日本の「人事コンサルティング業界」または「人事コンサルティング」について、どのようなことをお感じになっていますか。
コンサルティングは「問題解決業」です。その時代の「問題」がコンサルティング会社にとってのテーマになります。例えば、1990年に入ってバブル経済が崩壊し、コストが膨れ上がる中で売り上げが下がるという事態が起きました。そこで導入されたのが成果主義です。2000年代に入ると、「グローバル化」が主なテーマに変わってきました。海外で人を雇用する時の人事・処遇、人材マネジメントなどの問題に直面。そこでは日本の常識は通用しません。そこで、人事コンサルティング会社を利用して海外の人材マネジメントを整備する、という流れが2000年くらいから続いています。
環境変化が激しい時代、これまで日本企業がよりどころとしてきたものが、いつまでも通用するわけではありません。グローバル化の時代においては、例えば、人材育成においても、これまでのように新卒から階層が上がるごとに階層別研修を行って育てていくといった方法も変わるでしょう。このように現在、日本企業が直面している問題をどう解決するかが、コンサルティング業界の課題です。
「問題解決」を業としている、という意識がある人は、顧客が直面している新しい問題に積極的に取り組みます。そのために必要な新しいモノの見方を自分で獲得しようとして、新しい環境に飛び込むことにも抵抗がありません。
一方で、特定の方法論があります。例えば、ある特定領域の研修手法、アセスメントやコーチングなど、確立された方法論です。しかし、その方法論や手段ありきで事業を展開しようとすると、環境が大きく変化した際に、従来のビジネスや組織の仕組みが通用しなくなっている企業と同じ問題に直面することになります。自分たちの強みは「モノづくり」、あるいは「この領域のスキル」などと定義してしまうと、そもそもその強みの定義自体が覆されるような環境変化の中では、その強みが弱みになってしまうかもしれません。
コンサルティング会社の経営においては、「問題解決」の意識と特定の方法論の両方が必要なのは事実です。しかし、現在のように環境が大きく変化している時代では、特定の方法論にこだわるコンサルタントの需要が減るように思います。コンサルタント自身がモノの見方を自分で変えなければなりません。特定の方法論が強いと思っているけれど、本当にそうなのかと。もう少し見方を変えたら、こんな手段も提供できるのではないかと自分の得意技を市場のニーズに合わせて変えるようなことが必要になっています。
貴社が「コンサルティング」を提供する上で、最も大切にされていることをお教えください。
我々はリサーチ・オリエンテッドな会社です。創業者の一人であるデービッド・マクレランドは、人のモノの見方、行動パターンの原理に踏み込んで、光を当てた人です。コンピテンシーの概念もそうした活動の中からつくられました。また、当社が有するリーダーシップ開発の方法論は、多くの企業で成果につながり、継続的に活用していただいています。成果が上がるのは、当社の方法論が、人間のモノの見方や行動パターンはどのように形成されるのか、という原理に踏み込んでいるからです。この原理に基づき、顧客にとって効果を生み出すものを提供するという精神をとても大切にしています。
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。