コストコ ホールセール ジャパン株式会社:
正社員とパートタイムを同じ「時給制」の下で処遇
「社内公募制度」でキャリアアップを図り、
管理職の早期育成を実現(前編)
コストコ ホールセール ジャパン株式会社 人事・総務 マーケティング 部長
中川 裕子さん
「社内公募制度」を活用し、誰もが大きく成長できるオープンな環境を整備
一般的に日本企業では、正規社員・非正規社員という採用の入り口の段階で、その人のキャリアが決まってしまい、なかなかその壁を乗り越えるのは難しいように思います。
コストコには「社内公募制度」を活用し、能力次第で誰もが会社とともに大きく成長できるオープンな環境が整っています。たとえば正社員、パートタイム関係なく、入社して90日間の試用期間が終了すると、本社、倉庫店を問わず誰もが国内の全ての募集に対して「異動願」を提出することができます。つまり、コストコでは将来のキャリアに関して、入り口がどのような雇用形態であるかを問わないのです。「社内公募制度」を使って、どんどん上に行けるチャンスがありますから、採用の段階では「パートタイムで入社したからといって、そのまま終わることはありません。あなたのやる気次第で、いくらでもチャンスがありますよ」と必ず伝えています。本人もそのつもりで入社してくるので、最初から意欲的に仕事に取り組みます。このような施策が実現できるのも、コストコが成長し続けているからです。新店舗の出店などにより、新しいポジションがどんどんと生まれています。また、常に社内公募が行われている状態で、やる気があればチャレンジする機会が日常的に用意されています。
もちろん、中には管理職になることを望まない人もいます。そのため、「転勤はしたくない」「今の仕事をずっと続けていきたい」という人は、今のままの状態で正社員として働き続けることができます。
また、管理職から正社員に戻ることも可能です。介護や育児など、家族やライフステージ上の問題から、「管理職の立場にあるが、その責務を全うできないので一時期、正社員に戻して欲しい」などと、自らステップダウンを申し出る人もいるからです。その後で管理職に戻ることも可能で、数年間介護に携わった後に管理職に復帰し、さらに副倉庫店長までステップアップを実現した社員もいます。
一般企業では、ステップダウンすることのできる制度があったとしても、そこから復職して活躍することはなかなか難しいのではないでしょうか。しかし、コストコでは「ぜひ元のポストに戻ってきて欲しい」と大歓迎します。それだけの“経験値”を積んだ人材が自社にいることを、会社として大きな財産だと考えているからです。
こういった選択の多様性が実現されていることもあり、離職率は業界の中でも、非常に低い水準となっています。従業員における男女比率は、五分五分。また、管理職に占める女性比率は約3割です。日本全体で見れば高いように感じますが、コストコのグローバルスタンダード目標値は5割なので、まだまだと言えます。今後は、世界と同じレベルを目指して頑張っていきたいと考えています。
現在、コストコの日本法人ではどのような課題がありますか。
ここ数年は、1年間で3~4倉庫店をオープンさせ、出店した各地域で多くの正社員を雇用してきました。近隣企業の賃金水準を押し上げるなど、地域経済に対して一定の貢献ができていると思います。しかし、それ以前の出店ペースは年に1倉庫店でした。そのため、新規オープンの際は社内で“人の準備”が問題なくできていたのですが、毎年3~4倉庫店をオープンするとなると、「社内公募制度」を使って異動してくる人材がどうしても不足します。その結果、各倉庫店で核となる人材が減ってしまうという事態が生じたのです。
例えば、300人の採用予定数に対して100人が「社内公募制度」で新倉庫店に来てくれたら、残りの200人を地域で採用したとしても、100人もの核となるベテラン社員がいるので、きめ細かく新人に指導・アドバイスを行うことができます。ところが出店ペースが上がったことにより、新規オープンした倉庫店に来てくれる人材が、今までの半数の50人程度という状況になってしまったのです。これでは、各部署で教えることのできるベテラン社員の絶対数が足りません。そのため、採用した後の新人トレーニングが今まで以上に必要となり、人の育成に関する部分に、より時間とコストがかかるようになりました。これが、急成長するが故の大きな課題となっています。