経営者・人事の視点で取材!業界の傾向と対策
コンプライアンス、CSR関連eラーニングサービスの現状と傾向
さまざまな企業の不祥事や不正事件など、コンプライアンスやCSRに関連する問題が多発している。メディアや世論の目もますます厳しさを増しており、この問題を軽視していると多大な損害を被るばかりか、場合によっては事業体の存続自体が危うくなる可能性すらある。まずは従業員に対する教育が必要であり、こうした分野はeラーニング(イー・ラーニング)が効果的といわれる。今回は、コンプライアンス、CSR関連のeラーニングサービスをご紹介する。
※この記事は2007年3月に作成し、2018年3月に各社のサービスに関する情報を更新したものです。
コンプライアンス、CSR関連教育の重要性
コンプライアンス(法令遵守)やCSR(企業の社会的責任)が重要という認識は、現在かなり一般的なものになりつつある。連日、マスメディアをにぎわしている事件や問題の多くは、企業が法令や自社の責任を軽視したために起こっているからだ。
具体的に事例を挙げれば分かりやすいだろう。
- 不正会計、粉飾決算、インサイダー取引
- 食品会社による期限切れ材料の使用、異物混入
- 耐震偽装
- 自動車メーカーのリコール隠し
- 湯沸かし器やヒーターの不具合による事故、その対応
- 無理な運行による交通機関の事故
- 談合やカルテル
- 個人情報の流出
- 時間外手当の不払い
- 官公庁での裏金、領収書偽造
いずれも定められた法令に違反したり、企業責任を果たしていなかったことが指摘され、社会的に大きな問題となったものである。その結果、長い時間をかけて築き上げてきた企業の信用やブランドは大きく損なわれ、場合によっては問題を起こした企業自体が解散や売却を余儀なくされている事例も少なくない。目先の利益や企業業績に直結しないからとか、あるいは単に関心がないとか「知らなかった」ではすまされない問題なのである。
コンプライアンス、CSRに関する問題はあらゆる企業で発生する可能性がある。自分たちには関係がない…と安心していられる企業はないのである。決算を行わない企業はないから、適正な会計処理が行われているかどうかは必ずチェックされなくてはならない。何かモノをつくっているメーカーの場合は製造物責任やPL法が関係してくるし、顧客リストを持っている企業なら個人情報の管理や情報セキュリティの問題は避けて通れない。労務管理やセクハラなどは、従業員のいる事業体すべてに関わってくることだ。また、一般企業だけでなく官公庁や団体なども例外ではない。
もう一つ重要なことは、この問題は、コンプライアンス室や法務部など、会社の一部の人たちが理解し対応していればいいというものではないことだ。上で挙げた諸事件を見れば分かるように、経営トップが関与していたものもあれば、工場や営業の現場で発生したケースもある。つまり、コンプライアンス、CSRは全社員一人ひとりが理解し取り組んでいかなくてはならない問題なのである。
多くの大企業では、すでにコンプライアンス、CSRについての対応を行っているが、中小ではまだこれからという企業もあることだろう。その場合、何から取り組めばいいのだろうか。もっとも重要なのは、まず問題そのものを正しく認識するということである。リスクマネジメントという観点からも、コンプライアンス、CSRについての十分な理解、教育を行っておかないと、実際に問題が発生した時には巨額の損失を被ることになるかもしれないのである。
効果的なeラーニングによる教育
ITを用いた教育「eラーニング」は、このコンプライアンス、CSR教育にもっとも適した手法だといわれている。
一般にeラーニングの特性、メリットとしては、以下のような点が挙げられる。
- 全社員の参加が容易
- 学習内容の均質化が図れる
- 階層別研修にも対応できる
- 学習記録を残せる
- コストパフォーマンスが高い
実はこれらはコンプライアンス、CSR教育に欠かせないポイントでもある。前章でも述べたように、コンプライアンス、CSRの問題は一部の人が理解していればいいというものではない。教育は全社員に対して行うことが不可欠となる。一定以上の規模の企業となると、全社員のスケジュールをあわせて集合研修を行うことは非常に困難だが、各自が持ち場で空いた時間を利用して学習できるeラーニングを活用すれば、比較的容易に全社員への教育が可能となるのである。
また、統一の学習コンテンツを使うことで全員に同じ質の情報を届けることができる。微妙な問題が多いコンプライアンス、CSRにおいて、講師によって表現方法が違ってしまうようなことがあると、企業としての統一見解が保てないという事態も考えられる。その意味でも、全員が同じ内容を受講できるeラーニングは効果的だ。
さらに重要なのが、受講記録をシステムによって完全に保存できることである。コンプライアンス、CSR教育を行ったという説明責任のためにも記録は不可欠だ。仮に受講が遅れている社員がいればすぐに把握し、管理者はピンポイントで督促することができる。全員が確実に学ぶことが必要なコンプライアンス、CSR教育に向いているシステムといえる。
コストも見逃せない。集合研修にかかる会場や講師の確保、各拠点からの交通費、仕事を中断して参加することによるロス…などをトータルすると、その費用はかなり積みあがる可能性がある。しかし、eラーニングのサービスを提供している企業のほとんどはASP形式をとっており、コスト面でも圧倒的に有利となっている。
現在、コンプライアンス、CSR教育を導入している大手企業のほとんどがeラーニングをベースに、場合に応じて集合研修などを組み合わせるという形態をとっている。これからコンプライアンス、CSR教育を導入したいという企業の場合も、まずはeラーニングを基本に考えるのが妥当だろう。
eラーニングの導入、運用に何が重要か
次に、eラーニングを活用してコンプライアンス、CSR教育を行う場合、どういった点に配慮が必要かを考えてみよう。
第一は「目的を明確にすること」である。それぞれの企業、業界によってコンプライアンス、CSRで直面している課題も異なるはずだ。目的が明確になれば、予算や必要とするコンテンツもおのずと決まってくる。目的が曖昧だと、ただ単に「やってみただけ」となりやすく、実効性の期待できない研修に終始してしまう危険性がある。
第二には「企業トップが先頭に立って取り組む姿勢を見せる」ことだ。コンプライアンス、CSRはたしかに重要だが、本質的には予防的、保険的な性質のものであり、日々の売上や利益に直結するものではない。そのため、後回しにされてしまう可能性が高い。そこで、企業トップや役員がその重要性を社員に説き、自ら進んで取り組む姿勢を見せる必要がある。eラーニング教材の冒頭に、そうしたトップからのメッセージを組み込み、全社一丸となる意識づくりを行うのも効果的といわれる。
第三には「無理のない運用」が挙げられる。eラーニングはシステムを導入して終わりというものではない。しっかりとした運用を行い、遅れている社員がいれば励まし、全員がきちんと学習したかを管理・記録していく必要がある。ただし、受講する社員数が多くなると相当な労力を伴う業務となるので、すべてを社内で行うのではなく、場合によってはアウトソーシングを活用することも視野に入れるべきである。eラーニング専門企業の場合、そういった管理や事務局機能をすべて代行するサービスもあるので、社内のリソースや予算を検討して適切に利用したい。
第四は「継続、反復しての教育」だ。法令は毎年変わっていくので、コンプライアンス、CSR教育も一度受ければそれでよいということにはならない。また、社員の意識も学習後は高くなっているが、時間とともに薄れるのが一般的だ。つまり、コンプライアンス、CSR教育に終わりはないのである。導入当初から継続、反復のプログラムも念頭において、全体の計画を立てることが求められるだろう。
導入にあたっての課題には、以下に紹介するコンプライアンス、CSR教育、eラーニングの専門企業がコンサルティング機能を持ち、相談に応えている。自社の特性を考慮した提案をしてくれる企業をパートナーとしたいものである。
コンプライアンス、CSR関連eラーニングの注目サービス
eラーニング講座「なるほどコンプライアンスシリーズ」
●全社員教育にふさわしい内容/コンプライアンスの概念や理論をこねくり回した教材ではありません。第一線の現場で働く皆さまの手引きになるような具体的な解説を中心に構成しています。
●受講しやすい構成/活字を追うだけの退屈な教材では受講者の頭に残りません。本シリーズ教材は音声や映像、アニメーションを駆使し、“受講者が飽きない”教材を実現しました。
●教育効果を高める工夫/一方的に知識を押し付けるのではなく、受講者への問いかけ等により、考えながら学習を進めていきます。自社や業界のルール、取組み等を挿入するカスタマイズも可能です。
費用 | 1講座あたり4,000円/名(税別) ※お申込人数、お申込講座数に応じたボリュームディスカウントをいたします。 |
---|---|
導入社数 | 導入社数非公開 |
対象階層 | 全階層 |
対象職種 | 全職種 |
テーマ | 意識改革・モチベーション向上リスクマネジメント・情報管理 |
サービス形態 | eラーニング・学習支援システム |
Q&Aで学ぶコンプライアンス研修
●身近な問題で学び、実用的な知識を習得/よくあるビジネスシーンを多用し、過去の事件や判例も示すなど、実務に役立つ内容を意識。判断の根拠となる法令について考え方も解説し、分かりやすく覚えやすい内容です。
●効率的かつ効果的な研修施策をサポート/スマホ対応や自動メール配信機能などで受講率を高めることで、ご担当者様は運営業務よりも施策全体の成果向上に注力できます。
●カスタマイズが可能/貴社の業務や研修に即した内容にカスタマイズ(改編)が可能です。「社内システムで実施したい」、「独自の研修としてカスタマイズしたい」といったご相談も承ります。
費用 | お問い合わせください。(参考)300 名様でご利用の場合:48 万円~ |
---|---|
導入社数 | 導入社数非公開 |
サービス形態 | 代行・アウトソーシングセミナー・研修 |
対応分野 | 情報マネジメント独占禁止法・下請法不正会計・不正受給対消費者著作権・特許権雇用・労働社員モラル・私生活 |
【eラーニング】ビジュアルで学ぶ コンプライアンスシリーズ
●パナソニックグループ法務部門の制作協力/パナソニックグループ法務部門による制作協力によるコンプライアンス講座です。実践的な知識を身につけることができます。
●実際の事例を元にしたケーススタディ/パナソニックグループで蓄積された実際の事例を元に下請法、独禁法、カルテル、著作権法、PL法、輸出管理などの基礎知識をeラーニングで学べます。
●イラストと解説&問題で知識の定着化を促す/イラストによる概要、解説で、難しくなりがちな内容をわかりやすく説明。ケーススタディからの設問に繰り返し解答することで、知識の定着を促します。
費用 | ○ASP受講(受講期間:3ヶ月) 1講座 12万円(税抜)/50ID ※講座によって価格が異なります。 ※ボリュームディスカウントもございます。お問い合わせ下さい。 ○ライセンス販売 価格例 「下請法(基礎編)」の場合 1年:150万円(税抜) 永年:250万円(税抜) ※講座によって価格が異なります。 ※ライセンス販売には別途LMSが必要です。お客様のシステムへの設定費用は含まれていません。 |
---|---|
導入社数 | 導入社数非公開 |
サービス形態 | セミナー・研修 |
対応分野 | 独占禁止法・下請法不正会計・不正受給著作権・特許権その他 |
【eラーニング】知財マネジメントシリーズ
●蓄積した事例に基づく事例型学習教材/パナソニック ソリューションテクノロジー株式会社が蓄積した実際の事例に基づく事例型学習教材です。
●多くの利用実績あり/パナソニックグループのほか、大手通信機メーカー、大手化学メーカー、大手機械メーカー、大学等で多くの利用実績有り。
●ケース⇒解説⇒理解度テストで体系的に学ぶ/実例から身近なビジネスのシーンを設定し、自分に置き換えて考えられるケーススタディと、解説、理解度テストで知識の定着化を促します。
費用 | ○ASP受講(受講期間:1ヶ月) 1講座 25万円(税抜)/50ID ※ボリュームディスカウントもございます。詳しくはお問い合わせください。 |
---|---|
導入社数 | 導入社数非公開 |
サービス形態 | セミナー・研修 |
【eラーニング】テストで学ぶ 下請法
●下請法の重要なポイントをイラストで学べる/実際の業務をイメージした問題設定で、3コマ漫画形式で楽しく受講ができます。解説もイラストつきで重要ポイントをしっかり理解できます。
●ご要望の問題数でご提供/全40問からご希望の問題数でご提供。学習対象者、業務内容等に応じて必要な知識を学習できます。
●カスタマイズ可能/テスト問題、文言の変更やオリジナル問題の追加(別途費用)など、ご要望によってカスタマイズが可能です。(詳しくはお問い合わせください。)
費用 | ○ASP受講(受講期間:2ヶ月) 9万円(税抜)/50ID ※ボリュームディスカウントもございます。詳しくはお問い合わせください。 ○ライセンス販売 1年:108万円(税抜) 永年:180万円(税抜) ※ライセンス販売には別途LMSが必要です。お客様のシステムへの設定費用は含まれていません。 |
---|---|
導入社数 | 導入社数非公開 |
サービス形態 | セミナー・研修 |
対応分野 | 独占禁止法・下請法 |
サービス選択にあたってのポイント
ここまで見てきて分かるように、コンプライアンス、CSR関連のeラーニングサービスといっても内容やそのレベルは多岐にわたっている。
まずは、自社に何が必要なのかを十分検討する必要があるだろう。何らかの課題があって導入を検討しているはずなので、多くの事例を知っているeラーニングサービス会社の営業担当やコンサルタントと相談してみるのが、もっとも近道だ。そのうえで、必要なソリューション、サービスを見きわめて導入することである。
また、本文中でも述べたように、eラーニングは導入して終わりというものではなく、それに続く運用、及び修了のチェック、さらには継続・反復(学習効果の定着、再確認)までを視野に入れる必要がある。
費用面でも、運用・管理などを内部ですべてやろうとすると、思わぬマンパワーが必要になり別途コストが発生してしまう場合がある。初期費用だけにとらわれるのではなく、そうした運用面の支援の有無や継続時のコストなども考慮に入れて検討することが重要である。
人と組織の課題を解決するサービスの潮流や選定の仕方を解説。代表的なサービスの一覧も掲載しています。