スピードか、スクリーニングか
企業により異なる「紹介会社に求めること」
かつて、人材紹介は管理職経験者などを対象としたキャリア採用に利用されることが多かった。しかし、現在では若手採用などでも積極的に活用する企業が増えている。採用ターゲットや目的が広がったことで、紹介会社に求められる役割も多様化している。面接までの「スピード」を求められる場合もあれば、「スクリーニング」の精度を求められる場合もあり、同じ会社でも職種や部署によって要求が異なることも珍しくない。紹介会社には、そうしたニーズの違いをきちんと理解して対応することが求められる。
とにかくスピードを求める企業
「経理で4、5年の経験がある人を探しているんです」
E社から依頼された求人は、募集内容自体はさほど変わったものではなかった。しかし、その急ぎようはかなりのものだった。
「できれば、既に前職を退職していて、すぐ勤務ができる方。面接は明日以降なら随時対応しますので、条件に該当する方がいれば、大至急紹介してください」
聞けば、前任の経理担当者が急に体調を崩し、急きょ募集をすることになったという。
「公募は時間がかかるので、今回は人材紹介だけで募集する予定です。何とか助けてほしいのですが、条件にあてはまる方はいらっしゃいますか」
データベースを確認し、概要を伝える。
「ちょうど近い業種で経理を経験されていた方がいらっしゃいました。前職で経理を5年経験されて、現在は離職中です」
「お人柄はいかがですか」
「それが、つい最近ご登録された方で、私どももまだお目にかかっていないんです」
人材紹介では候補者と事前に面談を行い、人材の人柄や希望などを正確に把握した上で企業に推薦するのが原則だ。履歴書に書かれたスペックのみで紹介すると、微妙なズレによるミスマッチがおこりかねない。そうなると最悪の場合、企業側からも人材側からも信頼を失ってしまう。
そのことを伝えたのだが、E社はそれも織り込んで面接するので大丈夫だという。
「退職済みの方であれば、早く決まった方がご本人のためにもいいですよね」
「確かにそうかもしれませんが……」
E社の担当者からの強い要望もあり、結局、候補者には転職相談を省いて電話でE社のことを伝え、希望とマッチしていることを確認した上で、すぐに面接に行ってもらうことになった。結果は採用。なんと一週間後から出勤することになった。
「本当にスピーディーなご紹介を、ありがとうございました」
企業からも人材からもお礼を言われることになったケースだった。私たちとしては、あくまでも特殊な事例のつもりだが、精度よりもスピード、あるいは紹介人数などを求める企業も徐々に増えているようだ。