職場のモヤモヤ解決図鑑
【第27回】社員の育児休業で人事が知っておくべき基礎知識!手続きと育児給付金について解説
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
初めて育児休業の手続きを行うことになった吉田さん。社内初の男性社員の育休取得ということもあり、スムーズに対応できるか不安な様子です。育児休業は法律で保護された労働者の権利。基礎知識を押さえ、実務に役立てましょう。
育児休業とは? 人事が押さえておくべき基礎知識
育児休業とは、「育児・介護休業法」に基づいた労働者が一定期間取得できる休業のことをいいます。仕事と育児の両立を目的に、原則として1歳未満の子ども一人につき1回の取得が可能です。保育所が見つからないなどの理由があれば、最長で子が2歳まで延長できます。
育児休業は法律で認められている権利で、条件を満たした従業員なら誰でも利用可能です。社内で前例がなくても、従業員は申し出れば制度を利用できます。休業中は、一定の条件を満たせば、賃金の代わりとして育児休業給付金が雇用保険から支給されます。
一方、「育児休暇」は企業が独自に設定するもので、社内の制度の有無で対応が異なります。
育児休業の取得条件と対象者
育児休業を利用できる対象者は、「子を養育する男女の労働者」です。取得条件は以下の通りです。
【育児休業の取得条件】
- 取得できる期間:子が原則1歳に達するまでの間で、本人が申し出た期間
- 取得できる回数:子1人につき原則として1回
- 期間の延長:子が1歳になる日に、いずれかの親が育児休業中であり、かつ保育所に入所できないなど事情がある場合には、最大2歳まで延長が可能
育児休業はパートやアルバイトの従業員も取得できる
育児休業は、正社員だけでなくパート・アルバイトなどでも利用できます。ただし、有期契約の場合は、以下の条件を満たす必要があります。
【有期契約労働者の取得条件】
- 1年以上継続して雇用されていること
- 子が1歳半になる日までに労働契約期間が満了・更新されないことが明らかではないこと
また、以下の条件に当てはまる労働者は、労使協定により育児休業の対象外とすることができます。
【労使協定で対象外とする場合】
- 入社して1年未満
- 申し出から1年以内に雇用期間が終了する
- 1週間の所定労働日数が2日以下
育児休業の申し出があった際は、本人の労働契約を確認する必要があります。
変わる育児休業制度、男性の取得促進と制度改正
厚生労働省の「令和元年度雇用均等基本調査」では、育児休業取得率は女性が83%なのに対して男性は7.48%と、まだまだ大きな開きがあります。そこで政府は、両親の育児休業取得を後押しするため、いくつかの特例を設定しています。
- 【出典】
- 令和元年度雇用均等基本調査|厚生労働省
父親の育児休業を促すパパ・ママ育休プラス
「パパ・ママ育休プラス」とは、両親が二人とも育児休業を取得する場合、対象期間を子が1歳2ヵ月まで延長する制度です。パパ・ママ育休プラスを利用すれば、例えば、子が1歳のタイミングで両親のどちらかが復職しても、残りの2ヵ月を利用して夫婦で仕事と育児・家事を支え合う体制作りを行うことで、育休から復職までの負担を軽減することができます。
また、「パパ休暇」では、子の出生8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、特別な事情なしにもう一度育休を取得できます。
出産の状況や子どもの発育など、家庭の事情はそれぞれです。こうした特例は、より柔軟な仕事と家庭の両立につながります。
- 【参考】
- 厚生労働省リーフレット
改正で2022年4月1日から、より柔軟に育児休業の取得が可能に
2021年6月に育児・介護休業法が改正され、さまざまな施策が2022年4月より順次施行されます。これまで育児休業は「本人の申し出」を前提とするものでしたが、改正により、会社が育児に関する制度を個別に周知するとともに、育児休業を取るかどうかの意思確認をすることが盛り込まれました。
以下に、改正のポイントをまとめます。
【育児・介護休業法の改正ポイント】
- 有期契約労働者の取得条件が緩和され、「雇用された期間が1年以上」が撤廃
- 育児休業を分割して2回までの取得が可能に
- 男性の育児休業の取得促進のために、出生直後の時期に柔軟に育児休業が取得できるよう、「子の出生後8週間以内に4週間まで」の育休取得が可能に
- 男性の育児休業の取得促進のために、「子の出生後8週間以内に4週間まで」の育休取得の申し出期限が、休業の1ヵ月前から2週間前に緩和
- 雇用環境整備、個別の制度周知・休業の取得意向の確認が事業主の義務に
- 従業員数1000人を超える企業で、育児休業の取得状況の公表が義務に
育児休業と育児給付金の人事の手続き
最後に、従業員から育児休業の申し出があった際に、人事が行うべき手続きを見ていきます。
育児休業の申し出があったら
育児休業の手続きは、以下の流れで行います。
育休前:希望者から申請書受け取り・通知書公布 |
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育児休業を希望する従業員から、書面にて申し出を受け取ります。原則として育休開始の1ヵ月前までに申し出が必要ですが、出産予定日前に出生したときなど、特別の事情がある場合は、育休開始前の1週間前までの申し出が認められています。 申し出を受け取ったあとは、育休の開始・終了予定日を記載した書面を人事より通知します。 |
育休中:社会保険料免除の手続き |
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育児休業中は、健康保険・厚生年金保険の社会保険料が免除されます。免除期間は、育休を開始した日が含まれる月から終了した日の翌日が含まれる月の前月までの期間です。企業から年金事務所や健康保険組合に「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。 |
育児休業給付金
育児休業給付金とは、育休を取得している従業員で一定の条件を満たした場合、休業開始時日額の最大67%が雇用保険から給付される制度です。
育児休業給付金の対象者 |
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対象期間 |
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必要な手続き |
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【まとめ】
- 育児休業は、原則1歳未満(最大で2歳まで)の子どもがいる従業員が利用できる休業の制度
- 育児休業は有期雇用者も条件を満たせば対象となる
- 2022年4月1日からは、育児休業の分割申請、有期雇用者の条件緩和が盛り込まれた改正が順次施行される。企業は育児休業の対象者に、制度の周知と育児休業取得の意思確認を個別に行なわなければならない
- 育児休業中には、社会保険料免除と育児休業給付金の手続きを企業が行う
後編では、育児と仕事の両立のため人事ができる支援について解説します。
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!