DX化に不安な人ほど備えている!正社員の4割弱は取り組んだことや計画がある
ディップ株式会社
【調査概要】
調査主体:ディップ株式会社
調査手法:インターネット調査(GMOリサーチ「Japan Cloud Panel」利用)
調査実施時期:2021年4月28日(水)~2021年5月5日(水)
対象者条件:47都道府県在住の15~69歳の男女のアルバイト・パート、正社員、契約社員、派遣社員の就業者
有効回収数:11,896サンプル(アルバイト・パート4,726サンプル、正社員4,766サンプル、契約社員1,193サンプル、派遣社員1,211サンプル)
※本レポートでは、主に「正社員」のデータを使用
本レポートについて
正社員として現在就業している人の「DX化に関する予測」や、「仕事のへの影響」に関するレポートに続き、本レポートでは、DXが進み現在の仕事を失う可能性に対する「備えや取り組み」や、仕事を失った場合の「業界・職種・条件や待遇」の変化の許容について調査しました。
DXが進むことへの不安や懸念
前回リリースしたレポートで「DXが進むことによる就業への不安」について取り上げていますが、改めて見ていきましょう。
DXが進むことで「就業への不安がある」5割弱
DXが進むことで就業への「不安がある」と47.5%が回答しました。 DXが進むことに対する就業者の意見には、「進んでほしい」「作業が楽になるので良いと思う」「効率化されて良い」といったDXへの期待がうかがえるものもありましたが、さまざまな観点で不安な声も多く寄せられています。 なかでも、「自分の仕事がなくなるのではないか不安」「仕事の選択肢が減るのではないか不安」「求められるスキルや水準が上がりそう」といった、現在就業している仕事が継続できなくなる可能性や、いずれ求められるようになると思われるスキル水準の高さについて危惧する声などが挙がっていました(その他の就業者の声についてはこちらをご覧ください)。
失業への備えと支援制度の利用意向
仕事を失う可能性に備え「取り組んだこと、取り組む予定がある」4割弱
DXが進むことで現在の仕事を失う可能性に備え、4割弱が「何かしら取り組んだこと、取り組む予定がある」ことが明らかになりました。具体的な取り組みの内容を見てみると、多い順に「資格の取得」15.3%、「副業・Wワーク」13.9%、「その他の取り組み」10.2%、「経験を積むための新しい仕事」8.8%となっています。
比較的すぐに始めることができる「副業・Wワーク」などの複数の収入源の確保だけでなく、資格を取得することで仕事の選択肢の幅を広げたり、市場価値を高めたりすることも必要と感じているのかもしれません。
前出の「DXが進むことによる就業への不安」と掛け合わせて見ると、「就業に不安がある」と回答した人は、仕事を失う可能性に対しての取り組み割合が、全体と比較するとやや高い結果となりました。一方で、「全く不安ではない」と回答している人は「取り組んだこと、取り組む予定はない」が全体と比較し8.2ポイント高くなっています。
就業に不安を感じている人はただ不安を抱いているだけではなく、既に取り組んでいたり、行動に移そうとしていることが見受けられます。
具体的な取り組みとして最も多く行われていたのは「資格の取得」でしたが、新たな資格を取得するための支援制度があった場合、実際に利用したいと思う人はどの程度いるのでしょうか。
資格を取得するために支援制度を「利用したい」7割超
新たな資格を取得するための支援制度があった場合、全体の74.0%が「利用したい」と回答しました。 前出の「仕事を失う可能性に備えた取り組み」と、この「資格の支援制度の利用意向」を掛け合わせて見てみると、「何かしら取り組んだこと、取り組む予定がある」と回答した人のうち8割が支援制度を利用したいと思っているようです。また、「取り組んだこと、取り組む予定はない」と回答した人も、7割弱が支援制度を利用したいと思っていることがわかりました。
では、支援制度を利用し、具体的にどのような資格を取得したいと考えているのでしょうか。
支援制度を利用して「取得したい資格がある」64.0%
支援制度を利用して「取得したい資格がある」と回答した人は64.0%、「特に決まっていない」と回答した人は36.0%となりました。 約6割の人は取得したい資格のイメージがあるようです。 「特に決まっていない」と回答した人は、何かしら制度があれば利用したいという気持ちはあるものの、具体的なことは考えていないといった状態なのかもしれません。
具体的にどのような仕事に活かせる資格を考えているのかを見ると、「IT」が圧倒的に多く34.8%、次いで「医療・福祉」22.3%でした。 経済産業省が公表しているDXレポートによると、2025年頃にはIT人材の不足が約43万人にまで拡大するとされており、「IT」スキルがある人材は今後もますます重宝されていくでしょう。 「医療・福祉」についても人材不足が深刻化している職種であり、少子・高齢化の進展などによりサービスの需要の拡大や多様化が見込まれます。
これらの結果は、人手不足が続く業界にとっては期待ができることと言えるのではないでしょうか。 資格を取得しなくても働くことができる仕事もありますが、このように資格取得に興味をもつ人や、実際に資格を取得し活躍する人が増えていくことは、人手不足が続く業界の課題解決や将来的な社会問題を改善していく糸口にもなるかもしれません。
経済産業省のWebサイトでは、デジタルスキルを学ぶことができる、無料のオンライン講座一覧 「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」が紹介されています。 このような講座も積極的に活用していくことで、何をどのように学んだらいいかわからない・決まっていない人も、学習のきかっけとなったり興味の幅を広げたりすることにつながるかもしれません。
DX化により仕事を失った場合の
「業界・職種・条件や待遇」の変化の許容
これまでに「仕事を失う可能性に備えた取り組み」について見ていきましたが、ここからはDXが進み「仕事を失う場合」について見ていきます。 「業界」「職種」の変化を許容する人はどの程度いるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
「業界・職種」が変わることを許容する、8割超
DXが進み「仕事を失う場合」を想定し、「業界」や「職種」が変わることについて尋ねたところ、どちらもほとんど同じような構成比となり、「変わることを許容する」と回答した割合は8割を超える結果となりました。ただし、「変わることを許容する」と回答した内訳を見てみると、「業界」「職種」ともに「仕方なく許容する」が6割弱を占めています。
次に、条件や待遇の変化について見ていきます。
通勤・勤務時間の増加は「許容する」が5割を超える一方、
休暇や給与の減少は5割を下回る
仕事探しをする上で重要視される四つの労働条件「通勤時間」「勤務時間」「休暇」「給与」について、各条件の変化について尋ねました。
現在よりも通勤時間が長くなったり、勤務日数や時間が増加することについては「許容する」の回答が5割を超えていますが、休暇や給与に関しては5ポイント程度低い結果となりました。 現在と違う仕事を探すことを迫られた場合でも、給与や休暇などはあまり妥協できない項目であることが見受けられます。
正社員の仕事探しの詳細については、今後記事をリリースする予定です。
【参考】第4次産業革命の「仕事・労働」への影響についての論説
DXの実現ステップには、デジタイゼーション(アナログ・物理データのデジタルデータ化)や、デジタライゼーション(個別の業務・製造プロセスのデジタル化)があります。 これにより業務効率や生産性が向上し、仕事や労働にも少なからず影響がありそうです。
経済産業省が公表している「第4次産業革命への対応の方向性」の資料に、イノベーション(技術革新)が「仕事・労働」に与える影響について研究者の考えが載っていたので見てみましょう。
過去を振り返ってみると、コンピュータやインターネットなどのIT(情報技術)の発達や、生産の自動化・効率化などにより、ビジネスシステムの構造的な変化が促されるなどイノベーション(技術革新)による変化を経験しています。これまで経験したイノベーション(技術革新)の影響を参照しつつ、第3次産業革命に続く「第4次産業革命」のインパクトについてさまざまな考察がされているようです。
第4次産業革命とは
第4次産業革命とは、18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である、第3次産業革命に続く技術革新とされています。 コアとなる技術革新としては、「IoT」「ビッグデータ」「ロボット」「人口知能(AI)」などが挙げられています。
※経済産業省 新産業構造ビジョン ~第4次産業革命をリードする日本の戦略~ 中間整理
※内閣府 -好循環の拡大に向けた展望-第2章 新たな産業変化への対応(第1節)第4次産業革命とは
経済産業省が公表している「第4次産業革命への対応の方向性」の資料によると、「楽観論」と「悲観論」に分けられており研究者の間でも意見が割れているようです。 それぞれ見てみると、「楽観論」では「自動化できない作業がある」、「新しい創造的な仕事が出てきている」、「需要が高まり雇用拡大が見込まれる仕事もある」などが挙げられました。 一方で「悲観論」は、「5割弱の仕事や職業が自動化や人口知能やロボットで代替される」、「労働者のスキルの差で労働需要の2極化が発生する」、「賃金水準が大きく下がる」などが挙げられています。
※経済産業省 経済産業政策局 平成28年1月 第4次産業革命への対応の方向性(領域横断型の検討課題:人材・教育)
これまでも「タイピスト」や「エレベータガール」など、イノベーション(技術革新)などにより雇用が減少したり付加価値の高い業務への配置転換など、労働移動が行われてきました。 また、国税調査の職業分類の変化(平成2年と平成27年)を見てみると、上記の楽観論の研究者の意見にもあったように、新しい職業が誕生していることがわかります。
今後の変化や影響度合いについて明確にはわかりませんが、今までの流れを踏まえると、仕事の進め方が変わったり、新しい業務への配置転換などは発生するのではないでしょうか。
DX化への就業者の声のなかに「ついていけるか不安」といった声が挙がっていましたが、自身の仕事だけではなく生活にも変化があることを考えると、イノベーションの波に乗り遅れないように順応していく力は今後より一層必要となっていきそうです。
さいごに
今回のレポートでは、正社員として就業している人の、DXが進み現在の仕事を失う可能性に対する「備えや取り組み」や、仕事を失った場合の「業界・職種・条件や待遇」の変化の許容について調査しました。
明らかになったこと
DXが進むことへの不安や懸念
- DXが進むことで「就業への不安がある」5割弱
失業への備えと支援制度の利用意向
- 仕事を失う可能性に備え「取り組んだこと、取り組む予定がある」4割弱
- 具体的な取り組み内容で最も多かったのは「資格の取得」15.3%
- 「DXが進むことによる就業への不安」を感じている人ほど、仕事を失う可能性に対しての取り組み割合が高い
- 資格を取得するための支援制度を「利用したい」74.0%
- 支援制度を利用して取得したい資格がある64.0%
- どのような仕事に活かせる資格なのかを見ると、「IT」が圧倒的に多く34.8%、次いで「医療・福祉」22.3%
DX化により仕事を失った場合の「業界・職種・条件や待遇」の変化の許容
- 「業界」が変わることを許容する82.1%、「職種」は82.0%
- 通勤・勤務時間の増加は「許容する」が5割を超える一方、休暇や給与の減少は5割を下回る
DXが進むことに対し不安を感じている人ほど、仕事を失う可能性に備えた取り組みを既にしているあるいは、これから取り組む予定があることがわかりました。
具体的な取り組み内容としては「資格の取得」が最も多くなっており、比較的すぐに始めることができる「副業・Wワーク」などの複数の収入源の確保だけでなく、資格を取得することで仕事の選択肢の幅を広げたり、市場価値を高めたりすることも必要だと感じていそうです。
取得したい資格は「IT」の職種で活かせるものの希望が圧倒的に多い結果となりました。
医療・介護・福祉業界だけでなく、経済産業省が公表しているDXレポートによると、2025年頃にはIT人材の不足が約43万人にまで拡大するとされており、「IT」スキルがある人材は今後もますます重宝されていくと考えられます。
DX化に対する就業者の声のなかに「ついていけるか不安」といった声が挙がっていましたが、自身の仕事だけではなく生活にも変化があることを考えると、イノベーションの波に乗り遅れないように順応していく力は今後より一層必要となっていきそうです。
調査設計:ディップ総合研究所 ディップレポート編集課 川上由加里
分析・執筆者:ディップ総合研究所 ディップレポート編集課 太田瑠美子
当社は、「私たちdipは夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」を企業理念と掲げ、夢や目標に向け情熱を捧げる人々を応援する様々な取り組みや活動を展開し、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
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