受入拡大迫る!
外国人雇用よくあるトラブルと対応
行政書士
佐野 誠
Q6 在留資格「特定技能」での注意点
来年の4月から「特定技能」の在留資格が設けられ、単純労働であっても外国人を雇用することができると聞きました。弊社は介護サービスを営んでおり、この新しい在留資格の活用を検討しています。現時点で考えられる注意点やトラブルになりやすい点があれば教えてください。
A6
新しい在留資格「特定技能」は2019年4月から設けられ、原則として従来は認められなかった単純労働分野においても外国人労働者の就労を認める方向で調整が進んでいます。制度の詳しい内容については現時点では不明な部分も多くありますが、無制限の受入れは、犯罪の増加や治安の悪化などにつながることも懸念されることから、厳格な対応がなされると予想されます。
在留資格「特定技能」は、平成30年12月25日閣議決決定「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」により、第2号技能実習を修了した者については、1号特定技能外国人に必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているものとして扱う、という旨が記載されています。そのため、技能実習2号から特定技能1号への変更が認められる可能性が高いといえます。ちなみに、技能実習3号については、法務省入国管理局によると2019年2月15日現在では対応を検討中とのことです。また、海外から直接「特定技能1号」として入国することも検討されています。さらに、その在留資格で5年間の滞在の後、試験への合格などを条件に「特定技能2号」への変更が認められ、永住権の申請なども認められる予定です。
2018年10月には、法務省が発表した政府基本方針により、受入れ機関(雇用企業)の基準が示されました。
在留資格「特定技能」における受入れ機関の基準 |
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(1)外国人と締結する契約は、報酬額が日本人と同等以上であることなどを確保するため、所要の基準に適合することが必要
(2)適格性に関する基準
(3)支援体制に関する基準(特定技能1号外国人材の場合に限る)
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また、受入れ機関の責務としては以下の内容が示されています。
受入れ機関の責務 |
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制度としては別物ですが、2017年11月に新たに「技能実習法」が施行された技能実習制度を参考に捉えると、残業代の不払い、有給の扱い、社会保険への加入などの労働基準法に関する違反については特に厳格な対応がなされることが予想されます。さらに、違反があった場合には制度上のペナルティとは別に、外国人労働者からの訴えにより労使紛争が起きる可能性も十分に考えられます。雇用企業としては違法な就労をさせることがないように、法律を適正に守り、コンプライアンスを遵守する姿勢が今まで以上により強く求められると予想されます。
【執筆者略歴】
●佐野 誠(さの まこと)
株式会社ACROSEED 代表取締役(行政書士)
外国人雇用に特化した行政書士法人、社会保険労務士法人、税理士法人を併設し、大手企業から中小企業までの外国人雇用コンサルティング、在留手続を得意とする。その他、専門性の高い許認可の取得コンサルティング、外国人雇用に関する講演活動などを精力的に行っている。
【著書】「外国人雇用実践ガイド」(第一法規)、「外国人のための雇用・受入れ手続マニュアル」(日本加除出版) など
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