社員53人で100億円を売上げる驚異の生産率
女性活躍を推進し、チームの力を最大に高める秘訣とは
株式会社ランクアップ代表取締役社長
岩崎裕美子さん
オリジナル化粧品「マナラ」を展開する、株式会社ランクアップ。従業員は53人と少数精鋭ながら、100億円近くの売上を計上する同社では、増収増益を続けているにもかかわらず、ほとんどの社員が「残業なし」という働き方をしています。今やホワイト企業の代表格と評されることも多い同社ですが、5年前は社内が暗く、社員にとってやりがいがない会社だったといいます。そこで同社代表の岩崎裕美子氏は、「本当の働きやすさ」「本当の女性活躍」について考え、社内改革に取り組みます。その結果、年商は56億円から約90億円にまで爆発的に伸びました。女性ならではの力を引き出し、チームの力を最大まで引き出す究極の働きやすさとはいかなるものか。また、社員のやりがいを育てる秘訣とはーー。岩崎さんにお話をうかがいました。
(聞き手:株式会社natural rights代表取締役 小酒部さやか)
- 岩崎裕美子さん
- 株式会社ランクアップ代表取締役社長
いわさき・ゆみこ/1968年2月8日生まれ。北海道出身、東京都在住。藤女子短期大学卒業後、大手旅行代理店に入社する。その後、複数の広告代理店を経て、マナラ化粧品を開発・販売する株式会社ランクアップを設立。
まるでお通夜のように暗い会社
貴社は働き方改革の旗手として高く評価され、「ワークライフバランス推進企業」に認定されたほか、数多くの賞を受賞されています。まずは、働きやすい会社を目指した理由をお聞かせいただけますか。
かつて私は広告代理店の取締役営業本部長を務め、競合他社に勝つために連日終電までハードに働いていました。会社は売上を伸ばしましたが、長時間労働が負担となって慢性的に離職率が高く、部下が育たず管理職も退職してしまう、という状況でした。経営者に労務環境改善を訴えましたが、そのためには「残業をやめても売上を補てんする方法」を提案しなくてはならず、なかなか労働環境を改善することはできませんでした。
また、その会社は経営者以外の社員が全員女性で、このままでは結婚も出産もできないという悩みを誰もが抱いていました。私は仕事のない人生は考えられないほど仕事が好きでしたが、結婚や出産を意識する年齢にもなっており、自身のキャリアについて悩みました。女性がキャリアを積むには大きな壁があることをこの時ほど痛感させられたことはありません。その時の経験から、会社設立にあたって「女性でも生涯活躍できる、働きやすい会社を作ろう」と決意したのです。
会社設立当初から福利厚生を整え、長時間の残業はありませんでした。離職する社員もごく少数だったので、「社員から良い会社だと感謝されているのだろう」と考えていました。
ところが、業績は毎年伸びているのに、社内の雰囲気は沈んだように暗く、朝礼はお通夜のようだったのです。
「社内の雰囲気が暗い」状態について、もう少しお聞かせください。
社員に活気がない、ということです。たとえば当時、仕事中は楽しい雰囲気ではなく、社内は常にシンとしていました。社内で業務上の会話をするときでさえ、内線を使っていたくらいです。社員に当時のことを聞くと、「空気がピリピリ張りつめていて怖かった」「社長がトイレに行くと、すれ違うのが怖くてトイレに行けなかった」と言われます。
また、当時の私は頻繁に社員を叱っていました。たとえば、イベント用のチラシを社員が提案した時に、フォントや背景色など細かな点についても意見を出し、よほど完成度の高いものでなければ許可を出しませんでした。私がすべての業務をチェックし、気に入らなければ容赦無くダメ出しをしたのです。
社員は、社長の命令をこなすだけの存在になっていました。そのため、自分がなぜここにいるのか、どう必要とされているのかが分からず、沈んだ気持ちになっていたのです。このとき私は、働きがいの大切さに気が付いたのです。
では、社内の雰囲気を改善しようと思ったきっかけについて教えてください。
2012年に取引先から紹介された研修プログラムに参加したことがきっかけです。社員の価値観の統一を目的とした2泊3日の研修なのですが、3日目に研修の講師から私の携帯に電話がかかってきて、「大変です、今すぐ来て社員に謝ってください!」と言われました。驚いてすぐにタクシーで研修所に行くと、社員が円になって座っていて、泣いている社員も数名いました。
そこで社員から「もっと私たちを認めてほしい、私たちに任せてほしい」と言われたのです。私はそのとき、自分がいかに社員を認めていないかに気付きました。社員はみんな頑張っていたのです。それなのに私がワンマンでなんでも一人で決めていたために、社員のやる気を失わせていたのでした。この事件がきっかけで、私は会社の風土を本気で改革すると決めました。