若手社員1,200人の意識調査
4割の新人が「業務支援が不十分」と感じている
累計13,000社420万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞﨑大輔)および人と組織の未来創りに関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所は、2024年10月12日~15日の期間で、社会人1年目から4年目の若手社員1,200人に対し意識調査を実施いたしました。本レポートでは業務上どのような支援をしてもらい、それをどのように捉えているか、業務支援*1の実態を調査・分析いたします。
*1 業務支援とは、業務における遂行手順・生産性の向上・効率化・負担軽減の支援を指します。
〈背景〉
2024年の新入社員意識調査の結果より、2024年入社の新入社員が抱く理想の上司として「間違いを指摘して正してくれる」という項目がトップにあがりました。また、成長するために必要なものには、仕事を通じた経験だけでなく、「上司や先輩からの事後のフィードバック」も求めていることが明らかになりました。これらの結果より、新入社員は正しく成長していくために、上司や先輩からフィードバックやアドバイスがもらえる環境を望んでいることがうかがえます。
上司や先輩からの若手社員への支援には、大きく分けて「業務支援」「精神支援」「内省支援」の3つの支援があると言われています。本レポートでは「業務支援」にフォーカスし、社会人1~4年目の若手社員が感じる、上司や先輩からの業務支援の実態を公表いたします。
■調査結果の概要
・半数以上の若手社員が業務支援を「してもらっている」と実感
一方、5人に1人の新人は「全くしてもらっていない」と回答
・業務支援をしてくれる相手は「同じグループ・チームの先輩」がトップに
・業務支援内容、職種・業界・社会人としてのマインド・知識・スキルへの支援が手厚い結果に
・業務支援があると「安心」「感謝」「成長のために頑張ろう」とポジティブに捉える傾向に
苦手業務へのアサインは、成長意欲が高まる結果に
<考察> 場当たり的なアサインメントではなく、中長期的な育成計画立案と定期的な見直しが重要
■調査結果の詳細
●半数以上の若手社員が業務支援を「してもらっている」と実感。一方、5人に1人の新人は「全くしてもらっていない」と回答
まず初めに、社会人1年目~4年目の若手社員に対して、上司や先輩からの業務上の支援が十分と感じているか質問しました。
結果、「十分にしてもらっている」「してもらっている」と回答した割合は、社会人1年目は60.0%、社会人2年目は60.6%、社会人3年目は57.0%、社会人4年目は58.0%となり、半数以上の若手社員が業務支援をしてもらっていると感じていることがわかりました。その中で、「十分にしてもらっている」と感じる割合は、社会人1年目が最大で24.7%となりました。
一方、「全くしてもらえていない」との回答は、社会人1年目が20.7%と最大の割合となり、5人に1人が業務支援されていないと感じている実態が明らかとなりました。
●業務支援をしてくれる相手は「同じグループ・チームの先輩」がトップに
次に、業務支援をしてもらっていると回答した若手社員に、誰から支援を受けているか質問しました。
社会人1年目は、42.7%が「同じグループ・チームの先輩」と回答し、最も高い結果となりました。この選択肢は、他年次においても最大となりました。次に「役職が1つ上の上司」(31.3%)、「同期」(23.0%)と続きました。
社会人2年目も同様に「同じグループ・チームの先輩」(38.0%)と回答する人が最も多く、次に「役職が1つ上の上司」(33.7%)、「同僚」(22.0%)と続きました。
社会人3年目は、「同じグループ・チームの先輩」(36.0%)、「役職が1つ上の上司」(35.3%)、「役職が2つ以上、上の上司」(23.0%)。
社会人4年目は、「同じグループ・チームの先輩」「役職が1つ上の上司」が同等の38.3%、「同僚」(28.0%)と続きました。
全年次共通して「同じグループ・チームの先輩」と回答する割合が最大となり、若手社員にとって距離の近い先輩が業務を支えてくれていると感じていることが分かります。また、年次が上がるにつれて「役職が1つ上の上司」から支援を受ける割合が高くなる傾向が見られました。さらに、社会人1年目では「同期」、社会人4年目では「同僚」の存在も大きいことも特徴と言えるでしょう。
●業務支援内容、職種・業界・社会人としての、マインド・知識・スキルへの支援が手厚い結果に
ここからは、具体的にどのような業務支援をしてもらっているか、全年次まとめた支援内容の結果を見ていきます。
結果、「職場における必要なマインド・知識・スキル」が27.2%と最大となり、次に「業界における必要なマインド・知識・スキル」が22.5%、「社会人としての必要なマインド・知識・スキル」が20.2%となり、知識・スキルのインプットは手厚く支援されていることが分かりました。
一方、「業務に詳しい関係者の紹介」「新しい切り口での考え方」「得意を伸ばすための業務アサイン」「苦手を克服するための業務アサイン」は1割以下の結果となり、比較的支援されていない実態も明らかとなりました。
●業務支援があると「安心」「感謝」「成長のために頑張ろう」とポジティブに捉える傾向に
苦手業務へのアサインは、成長意欲が高まる結果に
最後に、業務支援の内容を若手社員はどのように捉える傾向があるか見ていきます。この章では、「職種における必要なマインド・知識・スキル」「業務遂行におけるルールや段取り」「業務アサイン(未経験業務・得意業務・苦手業務)」の3つの支援内容を取り上げます。
職種におけるマインド・知識・スキル
「職種における必要なマインド・知識・スキル」への支援とは、例えば、営業職の場合は提案力や傾聴力など、企画職の場合は市場分析力やプレゼン力など、職種ごとに求められるマインド・知識・スキルに対する支援を指します。この支援を受けた若手社員は、「安心した」(44.8%)、「感謝の気持ちを抱いた」(42.5%)、「成長のために頑張ろうと思った」(31.7%)とポジティブな気持ちを抱く傾向にあることがわかりました。
業務遂行におけるルールや段取り
「業務遂行におけるルールや段取り」への支援とは、業務を遂行する上で指定されている順序や作業手順の方法などをレクチャーしてもらう支援を指します。この支援をもらっている若手社員は、「安心した」と回答する割合が半数以上いる結果となり、この割合は他の支援内容と比べて最も高い割合となりました。次に、「感謝の気持ちを抱いた」(45.7%)、「成長のために頑張ろうと思った」(26.4%)が続きました。
業務アサイン
「業務アサイン」への支援とは、上司や先輩から特定のタスクや役割を割り当てることを指し、意図的に未経験業務や、得意・苦手業務などを割り当てることで、成長を促すことを指します。このようなアサインに対してどのような捉え方をしているかを見ていきます。
「未経験業務」へのアサインでは、「安心した」と回答する割合が最も高く49.2%となりました。次に、「感謝の気持ちを抱いた」(43.7%)、「成長のために頑張ろうと思った」(31.0%)と続きました。
「得意業務」へのアサインでは、「感謝の気持ちを抱いた」が46.3%となり、次に「安心した」(41.1%)、「成長のために頑張ろうと思った」(36.8%)と続きました。
「苦手業務」へのアサインでは、「成長のために頑張ろうと思った」(45.4%)、「感謝の気持ちを抱いた」「安心した」が41.2%と同等の割合となりました。
少数ではありますが、業務のアサインにより「モチベーションが下がった」とネガティブに捉えている若手社員も一定数いることも分かります。
■まとめ
本調査結果より、半数以上の若手社員が業務上の支援をしてもらっており、年次共通して「同じグループ・チームの先輩」から支援をしてもらっていることがわかりました。しかし、入社して右も左もわからない社会人1年目においても、5人に1人は、「全く支援してもらっていない」という実態も明らかとなりました。
実際にどのような支援をしてもらっているか、支援内容を調査した結果、「職種における必要なマインド・知識・スキル」への支援と回答する割合が多くなり、このような支援に対しては、「安心」「感謝」のようなポジティブな気持ちを抱くこともわかりました。
一方、「新しい切り口での考え方」や「業務に詳しい関係者の紹介」などの視野を広げるような支援を受けている若手社員の割合は低いことも分かりました。要因として考えられるものは、支援者側の知識・スキルが不足しており、視野を広げるような切り口での支援が行き届いていないことが考えらます。また、支援を受ける若手社員が、直属の上司や同じ組織に所属する先輩など、特定の支援者としか関わりが持てておらず、支援者以外の多角的な視点での支援が届きにくい可能性も考えられるでしょう。
さらに、「得意業務」「苦手業務」のアサインによる支援も、相対的にみると少なく、アサインをしていても「モチベーション低下」などネガティブな感情を生んでしまっている可能性があることも分かりました。考えられる要因として、支援者側の意図的なアサインができていない、もしくは、アサインする際に期待の伝達をしておらず、意図的なアサインであることが伝わっていない可能性もあるでしょう。業務支援は、社会人としての経験が浅い若手社員の成長に欠かせない、基本的な支援の一つです。様々な壁に直面する若手社員が、壁を乗り越え、会社の中核を担う人材になるためには、本人の乗り越える力だけでなく、組織の乗り越えさせる力も大切と言えるでしょう。
■CLM(最高育成責任者)の考察
場当たり的なアサインメントではなく、中長期的な育成計画立案と定期的な見直しが重要
今回の調査結果から、若手社員の業務支援に関する実態が明らかになりました。半数以上の若手社員が業務支援を受けていると感じている一方で、5人に1人の新人は全く支援を受けていないと回答しています。特に「同じグループ・チームの先輩」からの支援が多く、年次が上がるにつれて「役職が1つ上の上司」からの支援が増加する傾向が見られました。
一方で、「新しい切り口での考え方」や「業務に詳しい関係者の紹介」の不足が課題として浮かび上がりました。これらを解決するためには、決められた少人数の上司や先輩だけでなく、組織の縦軸や横のつながりを超え、他部門も含めた縦横斜めの多様な視点を取り入れる「面」での育成が必要です。若手社員の育成に関わる周囲の関係者に対して、育成方針や育成目標などを共有することで共通認識を持ち、標準化された支援を行なう体制を整えるとよいでしょう。
また、苦手業務のアサインが成長意欲を高めることも分かりました。育成対象者の業務状況を把握し、適時適切なストレッチアサインメントを行なうことで、小さな成功体験を積ませ、成長意欲を促進することが重要です。この前提となるのは、中長期的な育成計画と定期的な見直しです。場当たり的ではなく育成目標や育成計画から逆算した、意図的なアサインメントを推奨いたします。既に苦手業務のアサインメントができている場合は、業務を任せる際に、業務の意義や意図を上司や先輩から明確に伝えることができているかを確認するとよいでしょう。
■調査概要
- 調査対象者
社会人1年目~4年目の就労者 - 調査時期
2024年10月12日~10月15日 - 調査方法
調査会社によるインターネット調査 - サンプル数
1,200名(社会人1年目300名、社会人2年目300名、社会人3年目300名、社会人4年目300名) - 属性
(1)業種
農業,林業 19人(1.6%)、漁業 7人(0.6%)、鉱業,採石業,砂利採取業 9人(0.8%)、建設業 52人(4.3%)製造業 171人(14.3%)、電気,ガス,熱供給,水道業 20人(1.7%)、情報通信業 80人(6.7%)、運輸業,郵便業 32人(2.7%)、卸売業,小売業 76人(6.3%)、金融業,保険業 53人(4.4%)、不動産業,物品賃貸業 23人(1.9%)、学術研究,専門・技術サービス業 27人(2.3%)、宿泊業,飲食サービス業 28人(2.3%)、生活関連サービス業,娯楽業 15 人(1.3%)、教育,学習支援業 66人(5.5%)、医療,福祉 221人(18.4%)、複合サービス事業 23人(1.9%)、サービス業,他に分類されないもの 91人(7.6%)、公務 47人(3.9%)、その他 61人(5.1%)、わからない 79人(6.6%)
(2)企業規模
1-50名 221人(18.4%)
51-100名 182人(15.2%)
101-300名 219人(18.3%)
301-1,000名 168人(14.0%)
1,001-5,000名 153人(12.8%)
5,001名以上 117人(9.8%)
わからない 140 人(11.7%)
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(ALL DIFFERENT株式会社 /12月23日発表・同社プレスリリースより転載)