年次有給休暇とは別に、企業が任意で定める法定外の休暇である「特別休暇」が注目されています。以前から慶弔休暇や夏季休暇は多くの企業で設けられていましたが、近年は働く人の多様化にともない、病気休暇やボランティア休暇など、幅広い種類の特別休暇を導入する企業が増えてきました。特別休暇の導入によってどんな効果が見込めるのか。また、導入や運用にあたって注意すべき点は何なのか。実際に職場のニーズに沿った特別休暇を導入し、組織のパフォーマンス向上に役立てているライフネット生命保険株式会社の事例を基に議論しました。
- 小倉 一哉さん
- 早稲田大学商学学術院 教授
おぐら・かずや/早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得。博士(商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構、早稲田大学准教授を経て現職。主要著書は『「正社員」の研究』『エンドレス・ワーカーズ』(いずれも日本経済新聞出版社)など。
- 関根 和子さん
- ライフネット生命保険株式会社 人事総務部 部長
せきね・かつこ/2012年ライフネット生命保険株式会社入社。人事企画、働き方改革、組織風土の醸成、労務、採用、教育研修、安全衛生等の業務を担当し、2022年7月に人事総務部 部長 兼 指名・報酬委員会事務局 になり、現在に至る。
三つのタイプに分類できる特別休暇
まずは「特別休暇」とはどのようなものか、あらためてお聞かせいただけますか。
小倉:特別休暇とは、企業が労使による話し合いを通じて、その目的や取得形態を任意に設定できる法定外の休暇です。したがって労働基準法には規定がありません。多くの人になじみがあるのは慶弔休暇や夏季休暇だと思いますが、近年はそれ以外にもさまざまな特別休暇を導入する企業が増えています。特別休暇は主に三つのタイプに分類できます。
一つ目は、「年次有給休暇の取得促進に資する特別休暇」です。代表的なものとして、病気になった時に休める病気休暇があげられます。年次有給休暇を取り残す人に理由をたずねると、その多くが「病気やけがに備えて残しておきたいから」と回答します。しかし、病気休暇があれば年次有給休暇を残しておく必要はなくなります。
二つ目は、「予測できない事情に備えた特別休暇」です。犯罪被害や災害など、思いがけない事態が生じた際に、安心して休めるようにするための休暇がこれにあたります。実際に使われることは少ないかもしれませんが、いつ誰が直面するかわからない事態に備えておくことで、いざという時に役立つ休暇です。予測できない事情という点から、裁判員休暇などもこのカテゴリーに含まれます。
最後に、「従業員の多様な活動を支援する特別休暇」です。主なものにボランティア休暇、ドナー休暇、自己啓発休暇などがあります。企業側が目的を定めない年次有給休暇と違って、それぞれに一定の目的に沿って取得できる休暇です。
いずれの特別休暇も法律で定められた休暇ではないので、いつ頃から導入する企業が現れたのか正確にはわかりませんが、病気休暇を導入している企業はかなり古くからありました。ドナー休暇も、ヘルスケア業界を中心に自社の姿勢を示すというPRを兼ねて導入されていました。比較的新しいのはボランティア休暇です。1995年の阪神・淡路大震災以降に、ボランティアへの注目度が高まったことが広がったきっかけです。裁判員休暇も裁判員制度が始まった2009年以降に導入する企業が増えました。
ライフネット生命では、どのような特別休暇を導入されているのでしょうか。
関根:もっともよく利用されているのは、「ナイチンゲール休暇」と呼んでいる病気休暇に相当する休暇です。年3日、有給の休暇として付与され、従業員本人だけでなく、パートナーや家族が病気になった時にも取得できます。また不妊治療のために利用できる「エフ休暇」も導入しています。エフ休暇は不妊治療と業務の両立のために、必要な従業員に対して、年8日有給の休暇として付与されます。利用希望がある場合、働き方や職場の配慮、周知範囲の希望を確認するために人事部門の限られた担当と事前に面談を行うようにしています。
さらに、「ナイチンゲールファンド休暇」というものもあります。取得されなかった全社の従業員のナイチンゲール休暇を2年分ストックしておいて、がんなどの病気にかかった従業員が通院や休職準備のために使えるようにした特別休暇です。年10日、有給の休暇として利用できます。
積立休暇のように、個人が使わなかった有給休暇をその人自身のためにストックする例はよくあると思いますが、ナイチンゲールファンド休暇は、使われなかった休暇を従業員のみんなで出し合ってストックし必要な人に拠出するという、保険の「相互扶助」の考え方がベースになっています。また、がんなどの病気のために休職した従業員が、復職後に通院する際などに使える「ダブルエール休暇」もあります。
2024年度から運用している「堂々と部活動休暇」は、部活動のために休める特別休暇で、3名以上の部員が集まれば利用できます。たとえば、ゴルフ部であれば部員同士で平日にゴルフに行ったり、音楽に関する部活動なら野外フェスに行ったりと、部活動の内容に合わせてさまざまな目的で取得可能です。従業員間のコミュニケーションの活性化を目的として導入しました。
1. 年次有給休暇の取得促進に資する特別休暇 | ||
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ナイチンゲール休暇 | 従業員本人の病気療養と家族・パートナーなどが病気やけがをした時の看護のために利用できる休暇 | 年3日 (有給) |
エフ休暇 | 不妊治療のために通院が必要な場合などに利用できる休暇 | 年8日 (有給) |
2.予測できない事情に備えた特別休暇 | ||
ナイチンゲールファンド休暇 | 従業員が命に関わる病気になったときに、通院や休職の準備のために利用できる休暇。会社全体で未使用分のナイチンゲール休暇を2年間積み立て、がん等に罹患した従業員に拠出 | 年10日 (有給) |
ダブルエール休暇 | 命に関わるような病気により休職をした従業員が、復職した後、通院などに利用できる休暇 | 年12日 (有給) |
3.従業員の多様な活動を支援する特別休暇 | ||
堂々と部活動休暇 | 部員が3人以上集まれば、部活動のために利用できる休暇 | 年1日 (有給) |
小倉:ナイチンゲールファンド休暇は興味深い取り組みですね。社内全体で使われなかった休暇をストックする、というところがとてもユニークです。こういった取組をしている会社はほとんどありません。企業が任意に設ける特別休暇には、各社の理念や価値観が反映されます。それぞれの休暇を導入した背景にはどのような狙いがあったのでしょうか。
関根:当社は「子育て世代の保険料を半分にして、安心して子どもを産み育てることができる社会を作りたい」という思いをもって創業した生命保険会社です。ただ、組織の成長とともに「子育て世代を応援する会社なら、自社で働く子育て中の従業員に対する制度もより整備することで、もっと多くの人を応援できるのではないか」という意見が聞かれるようになりました。そこで、子育て中の従業員を支援する特別休暇の導入を検討することにしました。ただ、「子育て中の人のみでなく、全従業員を対象にすることで、より使いやすい制度になるのではないか」という声が多かったため、全従業員対象の病気休暇として2017年に導入したのがナイチンゲール休暇です。
また、ナイチンゲールファンド休暇は、当社ががん保険の販売を開始した際に、がん経験者向けに行ったアンケートが導入のきっかけになりました。病気になった時、経済的な支援と同じくらい、働きながら通院できる職場のサポートを望む人が多数でした。そこで、診断が確定して休職制度を利用するまでの間、通院などに使える特別休暇として、ナイチンゲールファンド休暇を導入しました。この制度があることで、「重い病気になったからといってすぐに辞めないでほしい。働きながら治療することを会社がサポートします」というメッセージにもなっています。
「休みたくても休めない」をなくす
ライフネット生命では、人事制度の中で特別休暇をどのようなものと位置づけているのでしょうか。
関根:当社には、従業員が力を発揮することを会社として支援したいという思いがあり、特別休暇制度はその一環として設けているものです。定年制度がないので、従業員の年齢層も幅広く、年代を超えて活用しやすい休暇制度をつくりたいと考えています。従業員が心身ともに充実した状態で、意欲と能力を十分に発揮できる職場環境を実現するためにも、きちんと休暇を取得してお互いにカバーしあえる体制の整備にも注力しています。
小倉:とても大事な視点ですね。多様な休暇制度があっても、休める環境が整っていないと活用できません。必要な時に休暇を取れる、休んでもカバーしあえる体制づくりはとても大切です。ただ、残念ながら日本企業の多くは、残業ゼロや有給休暇取得100%を実現できるような要員計画にはなっていません。実際に、年次有給休暇を希望通りの日数取得できなかった人に、その理由を聞いた調査では、「業務量の多さ」や、「業務を引き継ぐ人がいない」など、人員やカバー体制の不足に関わる理由が上位にあげられています。
一方、欧州の例を見ると、ドイツでは、全従業員が年次有給休暇を100%取れるように、最初から休暇を考慮した要員計画に基づいて人を確保し、シフトを組んでいるような企業もあります。また、フランスの企業では、年度のはじめに全員の年次有給休暇取得カレンダーをつくります。人事が調整して「あなたの休みはここです」と決めてしまうわけです。日本と異なり、会社側の休暇の時季指定権が強いので、事前に取得時期について希望の聴取や相談はするものの、基本的に労働者は企業が指定した時期に長い休暇を取ります。そのため、従業員は年次有給休暇を100%取得することができます。日本企業もそういった計画性を見習う必要があるでしょう。年度初めに、従業員が年次有給休暇を100%消化することを前提に年間スケジュールを立て、組織体制を整えなければ、目先の仕事に追われて休めなくなります。
休める体制づくりとして、ライフネット生命ではどんな取り組みをしているのでしょうか。
関根:以前は「休みたくても忙しくて休めない」という声が多数ありました。そこでまず、従業員の年次有給休暇に対する意識を変えるために「7DAYS休暇」という特別休暇制度を導入しました。12月までの年次有給休暇の取得が7日未満だった人に、1~3月の年度末までに7日に達するまでの日数、特別休暇を付与するというものです。各部門のマネジャーには、部下が休めるよう協力を依頼してスタートしました。この取組を進めたのは、年5日の年次有給休暇の取得が義務化される3年前です。7DAYS休暇の導入により、「しっかり休んでほしい」という会社からのメッセージを伝えることができ、それまでほとんど休まなかった人も年次有給休暇を取るようになりました。効果が十分確認できたので、7DAYS休暇は1年間の運用で終了しました。
また、休みやすい職場づくりも同時並行で進めました。休めない理由として大きかったのが、創業から少ない人員で職場を回してきた結果、業務の属人化が進んでいたことです。これを解消するために、人員を増やし、業務の複線化やマニュアルの整備に取り組みました。また、より効率的に業務が進むよう業務改善にも注力しました。自分の部署のことはなかなか客観視できないので、他部署からの提案を積極的に受け付け、数値目標を決め、全社をあげて徹底的にやり抜くことで業務全体の最適化を実現していきました。
年次有給休暇は「心を休める休暇」
特別休暇を導入する意義としては、年次有給休暇の取得率改善がいちばん大きいと考えていいのでしょうか。
小倉:1936年に国連専門機関の一つである国際労働機関(ILO)が定めたILO条約では、年次有給休暇は「連続した2週間」を付与するとされています。これには、毎週末の休日は「体を休める」、それに対して年次有給休暇では仕事から完全に切り離されて「心を休める」という考え方が反映されているといえます。残念ながら、日本ではILO条約は批准されておらず、年次有給休暇を長期にまとまって取得するという考え方は一般的ではありません。しかし、年次有給休暇とは本来そういうものなのです。
ですから、特別休暇の意義は、年次有給休暇の取得率改善よりも、年次有給休暇を本来の「心を休める休暇」として使えるようにすること、特別な事情で休む時に年次有給休暇を使わなくてすむことの方が大きいと言えると思います。その中でも、現実的にもっとも有効なのは病気休暇でしょう。ライフネット生命でいえばナイチンゲール休暇です。2023年度の厚生労働省の調査では、大手企業を中心に3割弱が病気休暇を導入しています。
関根:当社でも、特別休暇の中ではナイチンゲール休暇の利用がもっとも多くなっています。ナイチンゲール休暇を導入するまでは、病気に備えて年次有給休暇を残しておく人が大多数でした。その状況を見た会社の産業医から、病気休暇の導入を勧められたことも背景の一つとしてあります。また、当社では、休暇の取得に診断書などの提出は必要ありません。本人だけでなく、パートナーや家族が病気になったときも対象に含めています。使い勝手が良い制度とすることも重要です。
小倉:病気休暇があっても、診断書や医療機関の受診証明書の提出を義務付ける企業は少なくありません。ライフネット生命のように柔軟な制度をぜひ参考にしてほしいですね。
なお、特別休暇としての病気休暇と、いわゆる病気休職・休業は似ていますが、その意義は明確に違います。病気休職・休業は、会社からの人事発令により就業が免除され、数か月から1年以上など比較的長期にわたることが多いです。経済的な補償として、休職中は一定期間、健康保険組合から傷病手当金を受け取ることができます。一方、特別休暇である病気休暇は、毎年数日から10日間程度など、病気休職に比べると短い日数が付与され、従業員の申し出によって利用できるものが一般的です。こうした休暇は、風邪や感染症、体調不良などの際に欠勤にならずに済むというメリットがあり、それにより年次有給休暇の取り控えを防ぐという効果が期待できます。それぞれ別の目的を持った制度ですので、病気休暇を導入していないという企業があれば、こうした違いを理解したうえでぜひ導入を検討してもらえればと思います。
特別休暇制度をつくる時、特に注意した点、工夫した点などはありますか。
関根:人事としていちばん危惧したのは、一度制度を導入すると、従業員のニーズに合わなくなった場合、使われない特別休暇がどんどん増えていくことです。そのような事態を避けたいと考えました。そこで、「ニーズに合わないものは見直す」というルールを最初から盛り込むことにしました。制度を見直す際には、特別休暇に対する従業員の意見を真摯に丁寧に聞き取り、利用実績の調査も毎年実施して、従業員のマイナスにならないように努めながら進めています。実際に、過去には「ボランティア休暇」を一度導入しましたが、活用例があまりなかったため、よりニーズの高いアニバーサリー休暇に変更しました。資格取得を支援する「チャレンジ休暇」も、在宅勤務が多い時にはニーズがありましたが、その後、従業員間のコミュニケーション活性化のニーズが高まり「部活動休暇」に切り替えています。
小倉:新しい制度を導入するだけでなく、従業員のニーズに応じて継続的な見直しをしていくことは非常に重要です。ニーズをしっかりと把握した上で、制度の必要な軌道修正を図っていくべきでしょう。ライフネット生命はそれをとても上手に対応されている印象です。また、トップダウンだけでなく従業員の意見を反映できるボトムアップ的な進め方をしている企業はうまくいっているケースが多い。ライフネット生命の取組は、まさにボトムアップで従業員の声を大事にしながら進めている点が優れていると感じます。
関根:特別休暇のメニューを検討する際は、従業員のニーズを聞くということを常に意識しています。毎年ニーズ調査を継続し、自分たちの意見が制度に反映されるとわかると、必要な制度や、よい制度には、「ずっと続けてほしい」という声がたくさん寄せられるようになりました。また、ナイチンゲールファンド休暇などは、利用しない従業員も多い制度ですが、「こういう制度がある会社でよかった」といった声が届くこともあります。人事部の立場からいえば、良いフィードバックをもらえる機会になるので嬉しく思いますし、やりがいにも繋がっています。そういう環境がつくれていることも大切だと感じています。
小倉:特別休暇の三つのタイプのうち、「年次有給休暇の取得促進に資する休暇」にあたるナイチンゲール休暇について詳しくお聞きしましたが、二つ目の「予測できない事情に備えた特別休暇」は、実際に取得される日数がそれほど多くないという特徴があります。この休暇は年次有給休暇とは異なり、必ずしも取得率が高いことが大事なのではなく、制度があること自体が従業員の安心感につながることが重要です。ライフネット生命では、ナイチンゲールファンド休暇やダブルエール休暇がこれに相当すると思います。
関根:特別休暇の制度化にあたって心がけていることとして、できるだけ多くの従業員が「自分も活用できる」と思える制度にすることが挙げられます。たとえば特別休暇であっても育児中や介護中の人のみを対象にすると、制度を使える社員は一部に限られ、休める日数に差が出てしまいます。従業員同士が「支え合う関係」をつくるには、その差が少ないほうがいいです。「予測できない事情」であれば今は病気にかかっていない人でも、将来もし自分がその立場になったら利用しようと考えることができます。誰かを支え、自分も誰かに支えられることがあるという関係性が、制度が広く受け入れられるかどうかのポイントになると思います。
従業員に寄り添うというメッセージ
特別休暇について、課題と感じていることはありますか。
関根:特別休暇ではありませんが、年次有給休暇の取得率向上には課題を感じています。病気休暇の導入などで年次有給休暇の取得率も改善してきた結果、現在は70%強となりましたが、他社をみると100%を達成しているところもあります。その水準に引き上げるためには何が必要かをいつも考えています。採用増なども取り組んでいますが、それでも「なんらかの理由で休みを取らない人」が一定数います。そういう人にどうしたら年次有給休暇を取得してもらえるのか、悩ましいと感じます。
小倉:年次有給休暇の取得率100%を目指すためには、企業も労働者も考え方を変えることが重要だと思います。「休んでもすることがない」「もっと仕事をさせてほしい」という人はどこにでもいます。しかし、もう少し広い視野で考えてみる必要があるのではないでしょうか。
改めて考えてみれば、休みを取ってできることは実はたくさんあるでしょう。たとえば読書はどうでしょうか。文学でも哲学でも、歴史でもいいでしょう。私は今「源氏物語」を読んでいます。たしかに、古典を読むことでは仕事に直結する知識やスキルは得られないかもしれませんが、生きていく上で何かの時に役に立つことがあると思っています。逆に、いま役に立つ知識はすぐに必要のないものとなってしまうかもしれません。
生成AIの登場など世の中がどんどん変化する時代だからこそ、これからは自分の専門とは違う分野の知識が重要になります。働く世代が新しい知識をインプットするためには、休暇こそが大きなチャンスなのです。企業も「休まずに仕事をさせてほしい」という人に、あえて「しっかりと休んで何か違う経験をしてきなさい」と言うことが必要ではないでしょうか。それが中長期的な学び直しやリスキリングにつながるはずです。目の前の仕事をこなすだけでなく、仕事以外から得られる知識や経験にも目を向けられることが、変化が早く不確実な時代に企業が求める人材像に通じると思います。
関根:当社でも仕事の繁忙期は休めなくても、大きなプロジェクトが一段落したらしっかり休むという人が増えてきました。特に20代・30代は休暇を上手に活用しています。
今後、より注目されていく特別休暇にはどういったものがあるのでしょうか。
小倉:近年は健康経営に関連した特別休暇が増えています。男性も含めた更年期障害を対象とした休暇などです。また、不妊治療のための特別休暇も注目されています。ただ、そういったトレンドよりも、まずは自社の従業員のニーズを丁寧に聞き取り、必要な制度を考えていくとよいのではないでしょうか。
これから特別休暇制度を充実させたいと考えている企業、人事部の皆さんへアドバイスをいただけますか。
関根:特別休暇には、ワーク・ライフ・バランスを整えて組織のパフォーマンスを向上させる効果があります。また、企業は従業員に寄り添ってサポートしていく姿勢や、自社で長く働き続けてほしいというメッセージを込めることができます。多くの企業で導入が進むことで、より働きやすい社会の実現につながるはずです。当社も他社の優れた事例を参考にしながら、さらに改善していきたいと考えています。
小倉:世の中の変化にあわせて、従業員のニーズ、企業のニーズも変化していきます。休暇制度も法律の改正を待つのではなく、特別休暇のような仕組みをうまく使って、時代のニーズに対応していくことが重要です。お話を伺って、ライフネット生命の取り組みは理想的だと感じました。他社でも大いに参考にしてほしいですね。従業員のニーズに気づき、それをいかに具体化できるかがポイントです。きちんと向き合えば、ハードルは決して高くないと思います。
『厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」特別な休暇制度とは』 厚生労働省「特別休暇制度導入事例集2023」
厚生労働省のポータルサイトでは、特別休暇制度の参考資料、他社の取り組み事例、就業規則の記載例等について解説しています。病気休暇、ボランティア休暇、裁判員休暇、犯罪被害者等の被害回復のための休暇などの実際の導入事例や、各休暇の特徴、企業における導入状況等を知りたい方は、上記サイトよりぜひご活用ください。