デュアル・システム
デュアル・システムとは?
35歳未満の若年者を一人前の職業人に育てる人材育成プログラムのことです。もともとドイツで始まった「働きながら学ぶ」職業訓練制度ですが、日本でも厚生労働省と文部科学省が今年度から「日本版デュアル・システム」をスタートさせました。
急増するフリーター・ニート対策
ドイツを手本にした職業訓練制度
デュアル・システムが導入された背景には、若年層のフリーターやニート(→キーワードその3を参照)の急増があります。こうした状況が続くことは若年者のキャリア形成の支障となるだけでなく、日本の経済基盤にも中長期的に重大な影響を及ぼす懸念が指摘されています。
このため昨年6月、厚生労働省など関係各省により「若年自立・挑戦プラン」が取りまとめられ、やる気のある若年者の職業的自立を促すための具体的な施策を展開することになりました。その一環として導入されたのが、「日本版デュアル・システム」です。今年度は全国10カ所で企業側と学校側のコーディネーターをそれぞれ2人ずつ配置したモデル事業を行っています。
具体的には、企業における実習訓練と、これに関連した教育訓練機関における座学を並行的に実施するのが特徴です。たとえば、週3日は専門学校で講習を受け、残りの週2日は、実際に企業で仕事をすることを通じ、訓練生の即戦力を養成します。既存のインターンシップやトライアル雇用と違うのは、(1)職業体験ではなく修了後の就業という確固たる目的を持ち、(2)1〜3年という比較的長い訓練期間を設け、(3)訓練修了後に能力評価を行い、実践力を保証する、という点です。
厚生労働省によると、デュアル・システムは企業にとって良質の人材を確保できるという意味合いはもちろん、ただちに正規採用がむずかしいような場合でも、訓練システムを通じて能力・適性を見きわめたうえで正規採用できるメリットがあるとしています。企業が有期パートなどの雇用形態で受け入れ、職業訓練機関で訓練を実施させる場合には、訓練にかかる費用(受講料)や賃金を負担した事業主に対し、助成金などの支援策(キャリア形成促進助成金の拡充)を準備しています。
日本が手本としたドイツでは、公的な資格制度がよく発達し、労働市場全体が横断的なため、デュアル・システムによって熟練労働者の資格を持たないと、職業に就きにくいという社会構造になっています。そのためドイツのデュアル・システムは若者の7割が経験しています。日本版デュアル・システムがドイツのように機能するためには、雇用と職業訓練を密に結びつける必要があり、訓練後の評価をきちんと行うことが非常に重要です。それによって労働力の質を明らかにでき、デュアル・システムを社会に認知させることができるからです。
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