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メンバー・部下育成

メンバーや部下の育成は、企業が成長を続けるために大切な取り組みです。近年は少子高齢化による人材不足が顕著になっており、社員の能力を最大限に生かす必要性が高まっています。

更新日:2024/02/26

メンバー・部下育成の目的・考え方
~企業としての成長につながる~

メンバー・部下育成の目的は、スキルや知識の習得、仕事への姿勢、行動・考え方などの会得によって、社員一人ひとりの能力を高めることです。活躍できる人材へと成長を促すことで、組織全体が活性化し、最終的には企業成長につながります。

育成にあたっては、表面に見える強みだけでなく、潜在的な強みを引き出すことがポイントです。一人ひとりの社員が持っているポテンシャルを引き出すことで、生産性が高まり、企業に新たな価値をもたらします。社員が自身の成長を実感できるようになることで、モチベーションアップや企業への定着などの効果も期待できます。

指導する側である上司自身のスキル向上も必要です。上司が十分なスキルや知識を身に付けてこそ、有意義な部下育成を実現できます。また、育成は中長期的な視点で取り組むことが求められます。短期的な計画で教育を行うと、意識・行動が変化することなく終わってしまう場合もあります。

メンバー・部下育成の手法・進め方
~職種や年次ごとの育成ポイントも紹介~

メンバー・部下育成の代表的な手法と進め方、テーマ別の育成ポイントを解説します。

メンバー・部下育成の代表的な手法

OFF-JT

「OFF-JT(Off the job Training)」とは、実際の業務からは離れて、学習する場を別に設ける育成方法のことです。代表的な手法として、集合研修があります。一度に大人数を対象とした育成を行えるため、「新人研修」「中堅社員研修」など、テーマに沿った育成の実施に適しています。

外部講師を招くほか、社員が講師となって研修を行うこともあります。全員が同じ講師のもとで学習するため、習得する内容にばらつきが生じにくいメリットがあります。一方で、外部講師への報酬や会場を準備するコストがかかります。

OJT

OJT(On the Job Training)」とは、業務を遂行する中で必要な能力を習得する育成方法を指します。指導担当の社員を選び、日々の業務の中で伴走しながら指導していきます。

実践的なスキルや知識が身につくことや、指導者にいつでも相談できる点がメリットです。ただし、指導者によって育成効果に差が出る場合があります。また、近い距離で指導にあたるため、指導する側と指導される側の相性にも配慮が必要です。

eラーニング

eラーニング」とは、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの機器を使用して、インターネット上で提供される教材を自主的に学習する方法です。場所や時間を選ばないため、自分のペースで学べるメリットがあります。育成に時間を充てる余裕がない企業でも、eラーニングであれば個々の社員が学習を進められるため、気軽に実施できます。

一方で、eラーニングは実体験を伴う育成には向いていないため、基礎知識の習得などインプットを中心とした学習に活用するといった工夫が必要です。

メンバー・部下育成の進め方

メンバー・部下育成の進め方について、以下のステップに分けて解説します。

  1. 現状を把握する
  2. 企業に必要な人材像を明確にする
  3. 育成計画を立てる
  4. 育成手法を検討する
  5. 育成の実施・改善

1 現状を把握する
育成の方向性を定めるために、まずは自社が抱えている課題を明確にします。重要なのは、経営層やマネジメント層の視点から把握するだけでなく、実際に業務にあたっている現場の社員の声を参考にすることです。現状把握が曖昧なまま進めてしまうと、効果的な育成にはならないため、経営側の視点と現場の意見を擦り合わせながら進めます。

2 企業に必要な人材像を明確にする
企業目標や経営理念をもとに、自社に必要な人材像を明確にします。企業としての目標・経営理念を実現するためには、どのような人材が求められるかを考えます。

求める人材像は、できるだけ具体的に設定することがポイントです。例えば「立派な人材に育てる」という目標だけでは、何をもって「立派」なのかが不明で、育成の方向性が定まりません。「必要なスキル」「求める仕事への姿勢」など、要件を細かく設定します。

3 育成計画を立てる
現状の課題と理想とする人物像のギャップを踏まえて、成長させるための道筋を考え、育成計画を作成します。理想的な人材に求めるスキルの習得には、どのくらいの時間を要するのか、いつまでに習得させたいのかを整理しながら、計画を立てます。習得させたい要素が複数ある場合は、優先順位を付けながら計画を立てるとスムーズに進められます。

4 育成手法を検討する
育成計画を実行するうえで、スキルや知識などの習得に最適な育成手法を検討します。現在はオンラインで実施できる手法も増えているため、自社の働き方や課題などにあわせて、柔軟に検討することが必要です。

5 育成の実施・改善
育成計画の内容に沿って、実際に育成を進めます。実践していく中で、メンバーや部下の成長状況を確認し、計画や育成手法を適宜改善することが大切です。

代表的な職種の育成ポイント

職種によって、育成の方向性やポイントが異なります。代表的な職種について、その育成内容や目標設定の考え方を解説します。

ITエンジニア職

ITエンジニア職にとって重要なスキルは、プログラミング能力です。仕事の成果に直結する要素となるため、まずはプログラミング能力の向上を育成します。

視野を広げ、もう一段上の成長を遂げるには営業マインドを身につけることも大切です。顧客がどのような悩みを持っているかを把握して、的確に問題解決を図る能力が高まれば、顧客の満足度を高めることにつながります。

ITエンジニアのキャリアを大きく分けると、チームを動かす立場の「マネジャー」タイプと、ある分野に特化した専門性を持つ「スペシャリスト」タイプがあります。目標設定のポイントは、一人ひとりのキャリアビジョンから逆算して、必要なスキルや知識の習得を盛り込むことです。

営業職

営業職の役割は、自社のサービスや商品の魅力を顧客に伝え、売上につなげることです。そのために欠かせないスキルがプレゼンテーション能力です。営業職の活躍は、企業の業績に直結するため、若手の育成にも力を入れることが大切です。

目標を定める際のポイントは、「●●ヵ月で売上●●円達成」「来週のアポイント数●●件」のような、具体的な数値設定です。売上が目標になりがちですが、成約率やリピート率などのさまざまな数値を用いて具体的に設定します。

販売職

販売職に求められるスキルとしては、第一に販売力が挙げられます。顧客にとって心地よい接客や、ニーズを的確にくみ取って最適な内容を提案する力など、商品・サービスを販売するまでの一連のスキルを総合的に高めることが重要です。

目標設定では、定量的な目標と定性的な目標に分けます。定量的な目標とは、「個人の売上●●円」「リピート率●●%」のような数値で具体化できる内容です。定性的な目標は「常に笑顔で接客する」「商品に対する詳しい知識を身に付ける」など数値化できない内容が該当します。

社員の年次別の育成ポイント

次に、社員の年次別の育成内容や目標設定の考え方などを紹介します。

新入社員

新入社員の育成では、基本的なビジネスマナーや仕事への姿勢について伝えます。主体性・積極性・思考力・責任感・話し方など、今後自社で活躍するうえで必要なスキルを総合的に学んでもらいます。

はじめのうちは業務に慣れていないため、小さな目標を達成しながら自信を高められるようにすることが育成のポイントです。必要以上に高いレベルを求めず、達成可能な水準で目標を設定します。

若手社員

若手社員は、新入社員の域を抜け出し、自ら成長するための力を養う必要があります。育成にあたってはヒントやアドバイスを与えるにとどめ、自ら考え、行動できる環境を作ることがポイントです。組織を活性化させるうえでも重要な役割を担うため、発信力も磨く必要があります。

近年は、入社から数年以内の早期離職が問題視されています。長期的に活躍してもらうためにも、モチベーションを高める育成を意識することが大切です。

目標案は部下自身に設定してもらい、上司と話し合いながら決定するようにします。自分で設定した目標は納得感を持って主体的に行動できるうえ、やりきる責任感も醸成します。仕事に対する楽しさややりがいが増し、モチベーションも向上するでしょう。

中堅社員

新入社員やベテラン社員の育成に比べると、安定的に働いている中堅社員の育成は疎かになりがちです。経験やスキルをある程度身に付けているがゆえに、次のステップへの目標を見失っている場合もあるため、しっかりと育成することが大切です。

中堅社員は、組織の根幹を担っていく次世代リーダーのポジションです。課題解決力や企画提案力など、チームを動かすうえで必要な能力を育成します。

目標設定においては、「リーダーとしての立場を自覚させること」「リーダーに必要なスキルを向上させること」がポイントです。部下がリーダーになるうえで不足している考え方やスキルを整理し、目標に盛り込みます。

ベテラン社員

ベテラン社員の多くは部下のマネジメントにも関わっており、組織を円滑に動かすうえで重要な存在です。組織の中核を担うポジションであり、ベテラン社員のモチベーション向上は企業の成長に大きく関わってきます。

キャリアを棚卸ししながら目標を設定し、前向きな気持ちで業務に取り組めるように育成します。また、経験が豊富なだけに、自分のやり方に固執してしまう傾向も見られます。視野を広げるための育成も、ベテラン社員の能力を引き出すポイントです。

メンバー・部下育成で求められる上司やマネジャーのスキル

育成する立場にある上司やマネジャーには、下記のようなスキルが求められます。

  • コミュニケーションスキル
  • 承認スキル
  • 分析スキル
  • 目標設定スキル
  • コーチングスキル

コミュニケーションスキルは、上司と部下の信頼関係を築くうえで基本となるものです。双方の間に信頼関係がなければ、部下は指導内容を受け入れようとせず、育成自体が成り立たなくなります。

承認スキルは、部下が自分自身のことを認められていると感じられるようにすることです。例えば、結果やプロセス、仕事の姿勢、行動などを承認された部下は、成長を実感でき、前向きな気持ちで目標へと向かえるようになります。

分析スキルは、部下が持つ顕在的な強み・潜在的な強みを見つけることです。これにより、的確な育成・指導が可能です。

目標設定スキルは、定量・定性の両面から適切な目標を設定する力です。実現可能な目標を設定することが必要であり、適切な目標設定は達成へのモチベーションを高めます。

加えて、目標を達成できるように自主性や能力を引き出すためには、部下の成長状況を確認しながら導いていくコーチングスキルも必須です。

育成時の注意点

一方的なコミュニケーションにならないようにする

部下の育成にあたっては、相互理解を深める姿勢が重要です。上司が感情的になったり、考えを押し付けたりすると、多くの部下は萎縮してストレスを感じます。育成の効果を最大限に高めるうえでも、話しやすい雰囲気を心がけ、部下が本音を言える環境を作ることが大切です。

また、「上司側が偉い」という感覚でいると、「これをやっておいて」などと圧迫感のある指示をしがちです。これでは、部下はどのように頑張れば良いのかわからないうえに、“やらされている”という感覚を持ってしまいます。部下育成の第一歩はコミュニケーションであることを念頭において取り組むことが大切です。

コーチングにおいて強制はしない

コーチングでは、部下の自主性を引き出しながら、自ら考えて目標に向かえるよう導くことが大切です。部下の方向性を上司が強制的に定めることはしません。

コーチングは、大きく「コミュニケーション」「質問」「傾聴」「承認」「提案」から成り立ちます。このうち、特に「提案」では注意が必要です。上司が答えを与えてしまうと、部下の考える力や自律性が育ちません。部下の意見・考えを引き出しながら育成を進めます。

メンバー・部下育成に役立つ本とサービス・研修
~メンバー・部下を正しい方向へ育成するために~

実際に部下育成を行う際に活用できる本やサービス、研修を紹介します。

『若手育成の教科書』(著:曽山哲人 出版・ダイヤモンド社)

3,000人以上の採用と300人以上の管理職育成に携わったサイバーエージェントの人事部門役員が、若手の育成メソッドについて解説。すぐに現場で使える実践的な内容が盛り込まれており、企業研修でも活用できます。

曽山哲人(2021)『若手育成の教科書』|ダイヤモンド社

『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと』(著:マーカス・バッキンガム 出版:日本経済新聞出版)

部下のマネジメントに関する根本的な考え方について述べられています。「リーダー」と「マネジャー」の本質的な役割の違いについても説明されており、育成する立場としての方向性や考え方の根幹を作りたい人に最適です。

マーカス・バッキンガム(2006)『最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」|日本経済新聞社

サービス・研修

メンバー・部下育成の実施には、研修やサービスの利用も効果的です。オンラインで利用できるものが増えており、場所や勤務形態にかかわらず活用できるようになっています。

サービスの一例を挙げると、社員が持つ能力を可視化できるシステムがあります。部下のスキルや特徴を可視化できるようになれば、レベルにあわせた指導や、伸ばすべき能力の正確な把握が可能になります。

専門的なノウハウを有する外部講師を招いて研修を実施すれば、メンバー・部下育成について、より高度な知見を学べ、組織全体の底上げにつながります。

『日本の人事部』では、メンバー・部下育成について学べる研修やサービスを検索できます。

「部下育成」のサービス一覧|日本の人事部

「部下育成」のセミナー一覧|日本の人事部

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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この記事ジャンル 人材育成概論

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