「グローバル・ストラテジー・アクセラレーター」
――企業の戦略実行を加速させる、人材・組織開発のプロフェッショナル
サイコム・ブレインズ株式会社 代表取締役
西田 忠康さん
プロフェッショナルとしてユニークな価値を提供してほしい
現在の日本企業の人・組織の課題をどのように捉えていますか。
変化のスピードはとても速くなっていますが、それに対して前向きな会社が多いと思います。それは大変良いことですが、日本においては会社と個人の関係がもう少しフラットでもいいのではないでしょうか。私は、会社に対して過剰適応している人がまだ多い気がしているのです。それでは会社の既存の枠組みの中でしか考えないし、会社の評価基準にとらわれてしまうことになります。個人が自分のゴールやスタイルを意識してもっと語るようになれば、新たな可能性が開けると思います。
ただ、最近の「ライフシフト」や「パラレルキャリア」などはいい動きですね。日本では、「キャリア開発」というと、社内でどういうキャリアを目指すかという話になり、その枠を取り払おうとすると異端児扱いされがちです。果たしてそれでいいのでしょうか。自分の会社に過剰適応すると、本人の市場価値は上がらずむしろ下がってしまう。そうなると企業も先進的なことができなくなってしまうのです。イノベーションを重視するのであれば、もっと会社の縛りを緩めるべきだと思います。当社もイノベーション人材の育成を手掛けているので、最近の社会の変化には大いに関心を寄せています。
現在の人材サービス、特に教育研修業界についてどのようにお感じになっていますか。
BtoBの業界にはバイヤーとベンダーが存在しますが、私はその間を行ったり来たりする人がもっと増えてもいいのではと思っています。例えば、教育研修会社の人が、メーカーの人事のポジションに転職して人材育成を担当する、などそうした動きは、業種・業界の成熟化にもつながります。その組織にいなければわからないことが数多くあるからです。
例えば、「ミレニアル世代」とは、1980年代から2000年代初頭に生まれた、新しい価値観を持つ世代を意味しています。この世代の人たちがどういうライフスタイルなのかを最も理解している人は、シニアのマーケティングコンサルタントではありません。彼ら・彼女らに自社の商品やサービスを売っている、あるいは社員として日々接している顧客企業の人たちです。
人材が流動化すると、業界の中で知見がより高まっていくと思います。アメリカのATD (The Association for Talent Development)の年次大会に行くと、企業の人もコンサルタントも一緒になって、人材開発の新しいトレンドやプラクティスを議論しています。残念ながら日本ではこういう場はまだまだ少なく、ベンダーによるプロモーションが多い。
サイコム・ブレインズの今後の展望をお聞かせください。
当社は、パフォーマンスを高めるための施策をグローバルに展開するときに選んでいただく会社になりたいと考えています。特にアジアではその人材ネットワークと経験においてナンバー・ワンになろうとしています。重点テーマは時代の変化に合わせて柔軟に変えていくことも考えています。
西田社長は、「学び方改革」や「ビジョン・戦略の世界展開支援」以外にも「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性も主張されています。具体的には、どのような見解をお持ちですか。
「ダイバーシティ&インクルージョン」は、持続的な成長のためにとても大切なテーマです。私たちも積極的に啓蒙・発信しています。そもそもの問題は、性別や人種といったバックグラウンドで人を分類しラベルを付けようとすることです。それがコミュニケーションや問題解決を阻害します。組織の構成員をそれぞれ個として対応する仕組みを作っていくことが大事だと思います。
最後に、現在人材サービス業界に携わっている皆さん、特に若い方々に向けてメッセージをお願いします。
「プロフェッショナルであれ」と伝えたいですね。プロフェッショナルとは、顧客に提供できるユニークな価値を持っている、ということです。人材サービス業界にはプロフェッショナルとしてのいくつかの軸があります。それは商品開発やマーケティング、ソリューションやアカウントマネジメント、オペレーションやエグゼキューション、講師・ファシリテーター・コーチなどです。どれでもいいので、その軸を高めていくと良いのではないでしょうか。そういう点ではキャリアとしての選択肢が多い業界です。私自身、この業界でプロフェッショナルを極めたい人を応援していこうと思っています。
社名 | サイコム・ブレインズ株式会社 |
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本社所在地 | 東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル7F |
事業内容 | 国内外における研修の企画・運営・実施、公開講座、アセスメント、 新興国体験、オンライン教育事業、映像メディア制作事業、電子商取引事業 |
設立 | 1996年 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。