すべてはCSマインドから始まる
リピーターを生み出し続けるユナイテッドアローズの「理念経営」とは
株式会社ユナイテッドアローズ
執行役員 山崎万里子さん 人事部長 安田 徹さん
「UNITED ARROWS」「BEAUTY & YOUTH」「green label relaxing」など、全国に200以上の店舗を構える、セレクトショップ最大手の株式会社ユナイテッドアローズ。ファッション好きなら誰もが知っている同社は、2019年に創業30周年を迎えます。長年、たくさんのリピーターを生み出し続けている理由の一つが、接客サービスのクオリティーの高さ。ユナイテッドアローズのブランド力を支える販売スタッフはどのような教育を受け、どんなキャリアを歩んでいるのでしょうか。同社初の女性執行役員である山崎万里子さんと、人事部長の安田徹さんにお話をうかがいました。
- 山崎万里子(やまさき・まりこ)さん
1973年福岡県生まれ。学習院大学経済学部在学中にアルバイトとしてユナイテッドアローズで働く。卒業後、同社に入社し、販売促進、広告宣伝に携わり、2010年に同社女性初の執行役員に就任。18年4月より執行役員 人事担当 。15年に出産し、育児と会社役員を両立させている。
- 安田徹(やすだ・とおる)さん
名古屋市出身。日本大学芸術学部放送学科卒業後、株式会社ワールドに入社。1989年、設立したばかりの株式会社ユナイテッドアローズ(以下UA)に出向。オリゾンティが展開するフランスのショップ「マリナ・ド・ブルボン」をUAが運営代行を行なうことになり、オープニングスタッフとして店頭に。1993年、UA営業課でホールセールス(卸売)担当、同タイミングでワールドより転籍。その後、卸専用ブランド「アナザーエディション」の立ち上げに携わる。2013年12月より現職。
採用のキーワードは「創造的商人」
数あるセレクトショップの中でも、ユナイテッドアローズは確固たるブランドを築き上げていると思います。これまでの成長の土台になっているものとは何でしょうか。
安田:「私たちは世界で通用する新しい日本の生活文化の規範となる価値観を創造し続ける」という理念が、社内に浸透していることだと思います。弊社では創業当初から、ファッション業界において新たなジャパニーズスタンダードを作ることを目標に掲げてきました。新たなジャパニーズスタンダードとは、平たく言うと“日本のオシャレ平均値を上げる”ということです。
ユナイテッドアローズは1989年の創業ですが、1990年から2000年にかけて、セレクトショップという業態がどんどん増えていきました。セレクトショップの浸透が日本に与えた一番の功績は、創業者の言葉を借りると「ファッションの民主化」です。セレクトショップが生まれる前は、海外からのインポートブランドはファッションに興味がある人だけのものでした。その間口を広げたのはセレクトショップだと自負しています。特に、ビジネスマンのスタイルの幅は大幅に広がりました。これはまさに、私たちが目指す「新たなスタンダードを作る」ことの一つですね。
セレクトショップという業態は、89年の創業当初から消費者に受け入れられたのでしょうか。
山崎:最初は、ごく一部の人たちだけでしたね。私は大学2年生の頃からユナイテッドアローズでアルバイトをしていたのですが、その頃はどちらかというと憧れの存在で、大学生には手の届かない印象がありました。しかし、創業者たちは当初から「手の届かない存在を目指しているのではない」とはっきり断言していました。ただし、価格帯を下げるのではありません。もっと広くファッションを楽しんでもらうための存在でありたい、と考えたのです。
その理念を実現するために、貴社ではどんな人材像を求めていますか。
安田:ユナイテッドアローズには、経営理念をブレイクダウンさせた「人材開発理念」と「商品開発理念」があります。人材開発理念の中にあるのが「創造的商人を目指そう」という項目。創造的商人とは、CS(顧客満足)マインドと商売マインドの両方をあわせ持つ人材像のことです。高い目標を持ち、それに向かって主体的に行動できる人。また、行動を商いへとつなげ、その結果を正しく受け止めてPDCAを回せる人。新卒で入社した時点ではすべてができていないので、そのような人材に育成することを目指しています。
新卒採用では、その人の“伸びしろ”をどのように見ているのでしょうか。
安田:CSマインドを持っているかどうかですね。CSが組織文化のベースになっているので、面接で「お客さま」というキーワードを繰り返し使う学生は、創造的商人の素養があると判断しています。
山崎:CSマインドが備わっているメンバーに商売マインドを与えることは、そう難しくありません。しかし、その逆はかなり難しいと思います。利他の精神のような資質が何よりも大事だと考えていて、新卒採用でも中途採用でも、特に注目しています。