1.流通・小売・サービス業の人事部門を取り巻く環境
個人消費の低迷、デフレ傾向が続いている中で、震災による影響が広がるなど、企業を取り巻く環境は、一段と不透明さを増している。このような状況下、流通・小売・サービス関連企業には、業務の一層の効率化と事業継続性の再確認が求められている。しかし、これらの企業は、さまざまな問題を抱えている。まず、パート・アルバイトや派遣社員など、就業形態が多様化していること。また、時間外労働の削減と年次有給休暇の活用を目的として改正労働基準法が施行されるなど、就業を取り巻く環境がここへきて大きく変化していることも大きな問題となっている。
具体的な課題
-
法制度面
改正労働基準法が2010年度から施行 -
経済面
名ばかり管理職や、度重なる過重労働者が注目を浴びたことで、労務コンプライアンスの見直しが進む -
社会面
- パート・アルバイト、派遣社員など多様な就業形態が広がる
- 少子高齢化に伴う労働者人口の減少に対応して、仕事と生活の調和、いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」の実現を求める社会的要請などが高まる
実際、企業では、「就業管理」に関する業務負担が増加。2010年の経団連の調査(図表1)によると、労使交渉の結果、賃上げ・賞与・一時金以外の項目で取られた処置は、就業管理に関連した処置が上位を占めていることがわかる。また、「人材育 成施策の充実」も、上位に位置している。
2.多岐にわたる人事部門の業務
そこで以下では、企業人事にとって重要なテーマである「就業管理」「給与計算」「人材管理」の3つについて、その課題を見ていこう。
人事部門の業務は非常に幅広く、多岐に渡る(図表2参照)。流通・小売・サービス業では、これらを多数の店舗・拠点、多数のパート・アルバイトを含む従業員に展開していかなければならない。他の業界と比較しても、人事部への負担は大きいといっていいだろう。
3.就業管理に関する課題
流通・小売・サービス関連企業の「就業管理」における課題を見ていくことにする。この業界では、多数の店舗・拠点を抱えているため、採用・契約・書類管理・労基対応などを、「現場」で行なわなければならないことが多い。しかし、実際には「店舗には管理まで任せられない」「店舗の仕事を増やすと不満がでる」といった声もある。とはいえ、人事部がそれらを全て引き受けることになれば当然対応は遅くなり、現場からは不満の声も出てくるだろう。では、管理に関する負荷を低減していくためには、どうすればいいのだろうか。
具体的な課題
- パート・アルバイト採用時の店舗と本部での二重登録/タイムラグが発生する。
- 社会保険加入や所定労働時間などの契約条件の実施管理の徹底が難しい。
- 雇用契約書・賃金台帳・従業員一覧など法的に必要な書類が各店舗・拠点で出力できない。
- シフト管理が「売上」や「人件費」「繁閑予測」と連動しないため不足人員・余剰人員が発生しやすい。
4.勤怠集計・給与計算に関する課題
「勤怠集計」「給与計算」に関しても、課題は多い。まず、各店舗からデータがバラバラにくること。量が多く、手順が複雑になっていることが大きな問題だ。また、人的コストの最適化のため給与体系が複雑化。また、多数の拠点・人員によって、勤怠情報は膨大な量となっている。これらをこなすためには、業務効率化が重要課題といえるだろう。
具体的な課題
- 勤怠の集計の為に、毎月残業が必要になる。
- 店舗などから寄せられた情報に問題があるとき、修正のための連絡・相談に時間がかかる。
- 作業種別やシフト・勤務場所によって単価が異なる場合があり、勤務実績の把握と人件費の計算に手間がかかる。
5.店長候補・拠点リーダーを育成する人材管理の課題
今後は、各店舗・拠点の競争力を上げていくために、売上とサービス品質の向上、事業の継続性をどのように実現いくかが重要になる。そのためには、店長候補やリーダーの育成も考えていかなければならない。しかし、実現に向けては、ここでも多くの問題を抱えている。
具体的な課題
- 売上とサービス品質の向上に不可欠な、キー人材(店長候補、拠点リーダー)の育成が現場まかせになっている。
- キー人材の育成のために、教育や研修などを充実させてきたが、受講履歴や効果測定結果を把握する仕組みが弱く、なかなか効果が上がらない。
- 人材の流動性が高く、優秀な人材がなかなか定着しない。
- 人材育成や評価に必要な情報を共有する仕組みが弱く、属人化している。
- 新規出店や拠点を展開する際に、実績や地理的条件から最適な人材を選定するのが困難。
以上、流通・小売・サービス関連企業が抱える、数多くの問題点を見てきた。今後、人事部はこれらの問題を解決していくために、さまざまな施策を進めていかなければならない。そのためには、自社のノウハウだけでは難しく、さまざまなソリューションを活用し、業務を効率化していくことも必要となる。
効率化によって、高度な人事戦略マネジメントを立案・実行するための時間を作り出すことも可能になるだろう。また、さまざまなソリューションをうまく使いこなすことができれば、タイムリーな人事情報の取得、労働・雇用環境の変化にも素早く対応できるはず。今後は、人事部門がリーダーとなり、企業経営を先導していくことが期待される。
(記事作成:株式会社クレオマーケティング)
クレオマーケティングは、人事給与パッケージ・会計パッケージといった企業の基幹業務を支える総合的なソリューションにより、お客様が直面する課題を共に解決し、17年に渡って 信頼と実績を築いてきました。ZeeMは、その過程で培った業務に関する実績とノウハウを盛り込み、人事給与・会計などの基幹系業務ソフトウェアからアウトソーシングまで、お客様のプロフェッショナルな業務を支援するトータルソリューションを提供しています。
2011年4月に、株式会社クレオから分社化し、ZeeM事業を引き継ぎました。