転職失敗、再び利用した人材紹介
在籍期間が短い場合は、紹介が簡単でないことも
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信頼してくれた思いに応えたいが
「さっそくですが、現在ご紹介可能な求人がこちらです。業種、職種ともに広めにご用意しています」
電話をもらった翌日、Sさんとの転職相談の面談を行った。紹介できる求人票は、どうしても前回よりは少なくなる。
まず前回紹介した企業のうち、書類選考などで不採用になった企業は、インターバルの短さを考えても厳しいだろう。さらに、選考が進んだもののSさんが辞退した企業については、Sさん自身が「あわせる顔がないので除外してほしい」と言うので除外せざるをえない。結果的に、直近1ヵ月で新たに発生した求人や、前回は他の企業と比較して応募しなかった求人の中から、案件を選んで紹介することになった。
「まずは話を聞いてみたいので、全社にご推薦いただいてもいいですか」
Sさんも、幅広く検討することを意識していたようだった。
ところが、書類選考の結果は厳しいものだった。合格になった企業が一社もなかったのだ。やはり、直近のキャリアが「1ヵ月で退職」であることが、企業にとって大きなリスクと映ったようだ。早期退職の事情については、私からも各社に伝えたのだが……。
こうなるとSさんがすでに退職を決めてしまっていることが悔やまれた。さらにいえば、1ヵ月前に私の紹介していた企業を選ぶよう説得していれば、と自分を責めたい気持ちにもなる。結局、その後も転職活動が難航したSさんは、自身の縁故を頼って、一時的に知人の会社を手伝うことになったという。
転職をする際、誰もが多かれ少なかれ不安を抱いている。Sさんのように、入社してみて「想像していた環境と違う」と感じることもあるかもしれない。他にも内定をもらっていた企業があれば、「そちらを選んでいればよかった」と後悔することもあるだろう。転職してすぐに大きなギャップを感じたのであれば、なおさらだ。しかし一度企業に入社してしまった以上、経歴をリセットすることはできない。
日本企業において、早期に離職してしまった人への風当たりは、まだまだ強いのが実情だ。「自社に入社してもすぐに退職してしまうのではないか」「少しでも嫌なことがあれば我慢できない性格なのではないか」といった懸念を持たれやすいのだ。もちろん、入社した企業がメンタルに不調をきたしてしまうような環境であれば、留まり続けることは得策ではない。しかしそうでなければ、転職が成功するかわからない以上、基本的には在職したままで転職活動を行うことを勧めている。
とはいえ一番いいのは、転職者が事前に聞いていた内容とギャップがなく、入社した企業でいきいきと働けることだ。そのためにも、仲介役となる人材紹介会社の果たす役割は大きい。コンサルタントとしての責任を、改めて感じた出来事だった。
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