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 社会経済生産性本部の「2005年度新入社員意識調査」から

会社のためなら上司の指示通りに行動します…
「新入社員」の倫理面が悪化している結果に


自分の良心に反する仕事でも、会社のためなら上司の指示の通りに行動する――そう考える新入社員の割合が2年連続して4割を超えたことが社会経済生産性本部(東京・渋谷区、牛尾治朗会長)の調査でわかりました。また、転職や起業、成果主義に否定的な意見の割合も増加するなど、ここにきて新入社員の意識は大きく変化しているようです。その背景には何があるのでしょうか。調査の結果の詳細をリポートするとともに、調査を担当した同本部の岩井茂さんと高橋史郎さんに分析していただきました。

(取材=編集部)

上司の命令に従って有罪判決の例もあるが…

財団法人社会経済生産性本部では新入社員の意識トレンドに関する調査を1990年から継続的に行っています。今回の調査は今年3~4月、同本部が開いた新入社員研修の受講者や、同本部が講師を派遣した企業の新入社員研修の受講者を対象に実施。研修の合間にアンケート用紙を配布し、その場で回答を書き込んでもらう方法で、1848通の有効回答を得ました(回答率94.6%)。ちなみに回答者の男女比率は男性72.4%、女性27.6%。約7割が従業員300名以上の企業に入社した人たちです。

調査結果を見てみましょう。意外に思えるのは「上司から、会社のためにはなるが、自分の良心に反する手段で仕事を進めようと指示された。そのときあなたは?」という設問に対する回答です。「あまりやりたくないが、指示通り行動する」と答えた人の割合が43.3%で、過去最高だった前年度とほぼ同じ割合となり、「できる限り避ける」と答えた人(41.1%)を2年連続で上回りました(表(1)参照)。

表1 上司から会社のためにはなるが、
自分の良心に反する手段で仕事を進めるよう指示された。そのときあなたは?


上司の命令に従い、「会社のため」と思ってやったことでも、法に触れれば摘発されるのは一連の企業不祥事で記憶に新しいはずです。たとえば雪印食品の牛肉偽装事件では「実行犯」の社員が一審で有罪判決を受けましたが、監督責任を問われた上司の役員は無罪になりました。「上司の指示通りに行動する」と答えた新入社員が、こうした事実をどう考えているのか、聞いてみたい気がします。

転職・起業に関して否定的な意見が増加の傾向

また、「あなたは発注者の立場であれば、取引先からお中元やお歳暮や食事などを受け取ることは問題がないか」という設問に「そう思う」と答えた人の割合も、ほぼ半数に近い45.5%に上りました。この数字を見る限り、日本の企業社会の悪しき慣習と言われる接待や役得をある程度、容認しているようにも見えます。多くの企業にとって、不祥事防止のためのコンプライアンス(法令遵守)が大きなテーマとなっているだけに、新入社員の倫理面にこうした傾向が見られるのは、人事担当者としては少し気になるのではないでしょうか。

長年続いた終身雇用制が崩壊し、ビジネスチャンスを求めて転職したり、起業を志したりする若者が増えていると言われます。しかしこの調査の結果は必ずしもそうなっていません。「あなたは転職についてどう考えますか?」と聞いたところ「それなりの理由があれば、1~2度の転職はしかたがない」と答える人が多数(51.4%)を占めていますが、一方で「しないにこしたことはない」と思う人の割合が前年度から3.3ポイント増えて24.8%に、逆に「それなりの理由があれば何度してもかまわない」と答えた人は同3.9ポイント減の18.0%となり、2位と3位が逆転しました(表(2)参照)。

表2 「転職」についてどう考える?


「将来への自分のキャリアプランを考えるうえでは、社内で出世するより、自分で起業して独立したい」と思っている人の割合も、前年度から3.6ポイント減って23.4%にとどまりました。全体として転職や起業に関して否定的な意見の割合は増加傾向にあります。

親の世代のリストラの影響で成果主義に警戒感?

企業に成果主義の人事制度が浸透してきた昨今の状況を新入社員はどのように受け止めているのでしょうか。「給与の決め方」について質問したところ、「各人の業績や能力が大きく影響するシステム」を望む人の割合は65.9%で大勢を占めていますが、ピークの3年前の73.3%からは大きく後退しました。これに対して「業績や能力よりも、年齢・経験を重視して給与が上がるシステム」を望む人の割合は、前年度から0.8ポイント増えて過去最高水準の34.1%となっています。「昇格」についても「年齢や経験によって昇格していく職場」を希望する人が8年ぶり3割を超え、年功制賃金を期待する傾向が強まっていることが分かります(表(3)参照)。


表3 「給料」の決め方(給与体系)はどちらがいいか?


今回の調査に携わった社会経済生産性本部経営革新部の岩井茂さんは、このような結果について次のように分析しています。

「新入社員の多くは、思っていた以上に就職活動が厳しかったと感じているようです。アンケートでは内定が出た会社数について聞きましたが、1社と答えた人の割合は65.8%でした。バブル期には内定が10社以上出た人もめずらしくなかっただけに、いかに就職を取り巻く状況が変わったかがわかりますね。就職活動が厳しかったぶん、せっかく苦労して入った会社だから、嫌なことがあっても我慢して勤めていたい、という意識が強くなっているのではないでしょうか」

岩井さんとともに調査を行った同本部プロデューサーの高橋史郎さんは、こんな指摘をしています。

「業績主義や能力主義を支持する新入社員が大勢を占める中で、年功制を期待する傾向が増加している背景には、彼らの親の世代の影響も少なからずあると思います。新入社員の親の多くは50代前半で、年功制を期待して入社したものの、今になって厳しいリストラにさらされている世代です。そんな親の姿を目の当たりにして、行き過ぎた成果主義を警戒しているとも考えられますね」

社会経済生産性本部では、10月から11月にかけて新入社員の追跡調査を実施し、12月に結果を発表することにしています。新入社員が実際に職務を担当していく中で、その意識はどう変わっていくのか、調査結果が大いに注目されます。

注)
表(3)は、社会経済生産性本部の調査結果をもとに「日本の人事部」編集部が作成しました。また表(1)(2)は同本部作成のものを転載させていただきました。

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