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2011年賃上げの見通し
―労使、学識者451人アンケート調査

民間調査機関の労務行政研究所(理事長:矢田敏雄)では、1974年から毎年、来る賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、「賃上げに関するアンケート調査」を労・使の当事者および学識経験者を対象に実施しています。本記事では、2011年の調査結果より「実際の賃上げの見通し」「自社における定期昇給」などについて取り上げています。

※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。

【調査要領】

◎調査名:「2011年賃上げ等に関するアンケート調査」

1. 調査対象:被調査者4,828人(内訳は下記のとおり)
◇ 労働側 東証第1部および2部上場企業の労組委員長等1,959人(労組がない企業は除く)
◇ 経営側 東証第1部および2部上場企業の人事・労務担当部長2,025人
◇ 学識経験者 主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働関係専門家など844人

2. 調査時期:2010年12月7日~2011年1月12日

3. 回答者数および集計対象:1月12日までに回答のあった合計451人。対象別内訳は、労働側201人、経営側143人、学識経験者107人

4. 集計要領・方法:賃上げ額・率は東証第1部・2部上場クラスの一般的な水準を目安に回答いただいたもので、定期昇給込みのものです。「賃上げ額」「賃上げ率」はそれぞれ別個に調査し、具体的な数値の記入があったものをそのまま集計したため、両者の間には必ずしも関連性はありません。

実際の賃上げ見通し

  • 全回答者の平均: 5,316円・1.72%
  • 労使の見通し: 労働側5,345円・1.73%、経営側5,356円・1.73%。賃上げ率の見通しは労使で一致

額・率の見通し

東証第1部・2部上場クラスの主要企業を目安として回答いただいたところ、2011年の賃上げ見通しは全回 答者の平均で5,316円・1.72%となりました。厚生労働省調査における主要企業の昨10年賃上げ実績は5,516円・1.82%でしたが、これを率 では0.1ポイント下回る予測です。

各種調査によると、大手企業の“定期昇給率”は平均で1.6~1.8%程度とみられます。定期昇給部分を持たない企業もあるため一様にはいえませんが、今回の集計結果では、おおむね「定昇分相当の賃上げ」という見方がされているといえるでしょう。

労使別にみると、労働側5,345円・1.73%、経営側5,356円・1.73%で、賃上げ率の見通しは労使で一致しました。

賃上げ率の分布は、労働側・経営側とも先に触れた平均的な定昇率に近い「1.6~1.7%」が最も多く、次に多い「1.8~1.9%」を合わせると、1.6~1.9%の1%台後半に6割台が集中しています。

成果主義の広がりの中で、90年代以降、定昇制度の見直しを行った企業も少なくありませんが、なお何らかの 定昇部分を設けている企業にとっては、制度を維持するうえで定昇原資分の確保が賃上げの下限ラインと考えられます。大手を中心に企業業績は回復傾向にあり ますが、円高や長期化するデフレへの懸念、厳しい雇用環境は依然として続いています。このような先行きの不透明感が、“賃上げは定昇程度”とする見方を強 めているものといえるでしょう。

【図表1】 実際の賃上げの見通し(額・率)
【図表1】 実際の賃上げの見通し(額・率)

[注]賃上げ率は小数第1位まで回答いただいているが、平均値は小数第2位まで算出している(以下同じ)。

【図表2】 実際の賃上げ見通しにみる労使の差の推移
【図表2】 実際の賃上げ見通しにみる労使の差の推移

[注]上記の差は、 労働側の見通しから経営側の見通しを引いたもの。「△ 」は、労働側が経営側を下回っていることを表す。

留意点
「実際の賃上げ見通し」については、調査票上に以下のデータを提示し、それを目安として東証第1部・2部上場クラスの主要企業における2011年の賃上げがどうなるか、世間相場の観点から回答いただいた。なお、賃上げ額・率は定期昇給込みのものである。

  1. 厚生労働省調査による主要企業の昨10年賃上げ実績は5,516円・1.82%
  2. 上記から推測される大企業の賃上げ前基礎ベースは30万9,000円程度
  3. 定期昇給のみの場合は1.7%(5,250円)程度
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