労使および専門家の計406人に聞く
2022年賃上げの見通し
~定昇込みで2.00%と予測、2年ぶりに2%台となる~
労務行政研究所
民間調査機関の労務行政研究所(理事長:猪股 宏)では、1974年から毎年、来る賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に、「賃上げ等に関するアンケート」を実施しています。
このほど、2022年の調査結果がまとまりましたので紹介いたします。
1. 2022年の賃上げ見通し(東証第1部・2部上場クラス)
全回答者406人の平均で「6277円・2.00%」(定期昇給分を含む)となった。賃上げ率は20年以来2年ぶりに2%台に乗る予測である。労使別に見た平均値は、労働側6428円・2.05%、経営側6423円・2.04%で、両者の見通しは近接している。
2. 自社における2022年定昇・ベアの実施
22年の定期昇給(定昇)については、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が8割台と大半を占める。ベースアップ(ベア)について、労働側は「実施すべき」が70.8%で最も多いものの、経営側では「実施しない予定」が43.6%と最多で、「実施する予定」は17.0%にとどまる。
1.2022年の賃上げ見通し(東証第1部・2部上場クラス)
<回答・集計に関する留意点>
- 賃上げ額・率は東証第1部・2部上場クラスの一般的な水準を目安に回答いただいたもので、定期昇給込みのものである
-
賃上げ額・率を回答する際の目安として、調査票上に以下のデータを示している
①厚生労働省調査による主要企業の21年賃上げ実績は5854円・1.86%
②上記から推測される大企業の賃上げ前ベースは31万4357円程度
③定期昇給のみの場合は1.8%(5650円)程度
額・率の見通し [図表1]
22年の賃上げ見通しは、全回答者の平均で6277円・2.00%となった[図表1]。厚生労働省調査における主要企業の21年賃上げ実績(5854円・1.86%)から、423円・0.14ポイントのプラスとなっている。
21年は新型コロナウイルス感染拡大の影響から1.86%と8年ぶりに2%を下回ったが、22年は再び2%台に乗る予測である(1ページの<調査結果のポイント>参照)。
賃上げ率の分布を見ると、労使とも「2.0~2.1%」が最も多く(労働側37.3%、経営側31.9%)、「1.8~1.9%」が続いている(労働側12.9%、経営側22.3%)。
労使別の額・率の平均は、労働側が6428円・2.05%、経営側が6423円・2.04%となっており、見通しが近接している。
2.自社における2022年の定昇・ベアの実施
定昇の実施 [図表2]
労働側と経営側の回答者に対し、自社における賃金制度上の定期昇給(定昇。賃金カーブ維持分を含む)およびベースアップ(ベア。賃金改善分を含む)の実施意向・検討状況を尋ねた[図表2]。なお、労働側・経営側の回答者は、それぞれ異なる企業に属しているケースが多い点に留意いただきたい。
定昇については、労働側で89.0%が「実施すべき」、経営側で87.2%が「実施する予定」と回答。経営側の「実施しない予定」は3.2%にとどまった。参考として、「もともと(定昇)制度がない」と「無回答」を除外して試算すると、経営側の「実施する予定」は92.1%に上る。
このように、定昇については労使とも大半が実施に前向きな意向を示している。
ベアの実施 [図表2~3]
ベアに関して、労働側では「実施すべき」が70.8%で最も多く、「実施すべきではない(実施は難しい)」の23.9%を大きく上回った[図表2]。一方、経営側では「実施しない予定」が43.6%と4割以上を占め、「実施する予定」は17.0%にとどまっている。
[図表3]には、各年におけるベアを「実施すべき」(労働側)、「実施する予定」(経営側)との回答割合の推移を示している。
経営側では、企業業績の伸びや官製春闘などの影響を受け、ベアを「実施する予定」の割合が15年に35.7%と増加。16年以降は“20~30%台”で推移していたが、20年に16.9%と2割を下回り、21年は4.8%とさらに低下。22年は若干上昇したものの、17.0%と2割に届いていない。
なお、20年調査から経営側の設問項目に「検討中」を追加しており、19年以前とは回答傾向が異なる可能性があるため、比較の際は留意いただきたい。
ベアの21年の実績と22年の予定(経営側)[図表4]
経営側について、自社におけるベアの“21年の実績”と“22年の予定”を示したのが[図表4]である。21年の実績は、「実施しなかった」が68.1%と、「実施した」の26.6%を41.5ポイント上回っている。
21年の実績と22年の予定を併せて見ると、両年とも“実施しない”が38.3%と約4割を占め、両年とも“実施”は11.7%にとどまっている。
3.2022年夏季賞与・一時金の見通し
21年夏季からの増加・減少の傾向[図表5]
夏季賞与・一時金について、労働側と経営側には自社における“21年の実績”と“22年の見通し”を、労働経済分社の専門家(以下、専門家)には22年の世間水準見通しを、それぞれ「前年夏季の水準との比較」で尋ねた[図表5]。
まず、労働側を見ると、21年の実績は「同程度」が36.4%、「増加した」が35.2%で並び、「減少した」も28.4%と約3割であった。しかし、22年の見通しでは「同程度」が50.4%と過半数を占め、「増加する」は34.1%と3割台であり、「減少する」は15.5%と21年の実績と比べて低下している。
次に、経営側を見ると、21年の実績は「同程度」が36.8%、「増加した」が36.0%、「減少した」が27.2%と3割近くであった。22年の見通しでは、「同程度」が57.3%と21年の実績と比べて上昇し、「増加する」は27.2%と3割近くであり、「減少する」は15.5%にとどまる。
なお、専門家における22年の見通しは、「増加する」が59.8%と6割近くを占める。
1.調査時期: 2021年12月3日~2022年1月18日
2. 調査対象:
7651人。内訳は下記のとおり。
①労働側
東証第1 部および第2 部上場企業の労組委員長等1754人(労組がない企業は除く)
②経営側
全国証券市場の上場企業と、上場企業に匹敵する非上場企業の人事・労務担当部長4379人
③労働経済分野の専門家
主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタント
など1518人
3. 回答者数および集計対象:
労働側209人、経営側94人、専門家103人の合計406人。ただし、6ページの3.に
ついては、労働側236人、経営側114人、専門家102人の合計452人。
調査の詳細について
本調査の詳細は、当研究所編集の『労政時報』第4029号(22. 2.11)で紹介します。
◆労政時報の詳細は、こちらをご覧ください→ 「WEB労政時報」体験版
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