受入拡大迫る!
外国人雇用よくあるトラブルと対応
行政書士
佐野 誠
Q5 外国人社員を採用しても定着しない
弊社は製造業を営んでいますが、数年前から日本人社員の採用が難しくなり、現在では10名以上の外国人社員を雇用しています。しかし、社内には活気がなく、せっかく採用しても自社よりも給与が高い求人があるとすぐに退職してしまいます。外国人社員にやる気を出させ、活気のある職場を作り、戦力化していくには何が必要なのでしょうか。
A5
まずは「何のために外国人材を採用しているのか」を明確にすることが重要です。日本人社員の採用が難しいから、その代わりに外国人を採用しているのでしょうか。それとも、海外展開を計画しているため現地出身の社員が必要なのでしょうか。雇用企業によりその答えは異なりますが、ここがはっきりしないと何をすべきかが見えてきません。
中小企業における外国人雇用で多くみられるのは、人手不足から外国人社員を採用し、その後も日本人社員と同じことを求め続けるケースです。しかし、日本人社員と同じように日本語ができることを望み、同じように職務に就くことを求めても、うまくいきません。どんなに優秀な外国人材でも、生まれ育った環境や文化が異なれば、必ず考えや態度、行動などに違いが生じます。そのため「これぐらい言わなくても常識でわかるはず」といった考えは通用しないことがあります。まずはお互いに違いがあることを認め、それをどのように双方が協力して乗り越えていくかがポイントとなります。例えば、「言葉が十分に通じない」のであれば、日本語の勉強会を開く、業務に必要な単語集を作る、外国語のマニュアルを作るなど、様々な方法が考えられます。
このような日々の業務で発生する小さな問題を外国人社員と一緒に、一つずつ解決していく地味な努力が求められます。その際には「日本人ならこんな作業は必要ないのに」と考えがちですが、それでは降り出しに戻ってしまいます。「これを乗り越えたら企業が国際化する」、「もっと多くの外国人を雇用できる」と考えて、前向きに努力していかなければなりません。雇用したばかりの頃は、このような小さなトラブルが頻発しますが、地道に取り組めば、1~2年も経過すればおよその問題は解決していきます。
つまり、外国人を雇用するということは、常に業務に変化が生じ、改善と検証の繰返しが求められるということです。当然、日本人を雇用する場合よりも手間暇がかかりますが、これをせずに現状維持だけを求めるのであれば、外国人雇用は難しいと言わざるを得ません。外国人社員からの新しい意見や考えを積極的に取り込み、業務の改善・改良が繰り返されれば、業務の効率化、生産性の向上、ビジネスの国際化など多くの変化が生じます。外国人雇用の一番のメリットは、企業の国際化です。海外に進出する足掛かりとするためにも、変化を好み、積極的にチャレンジする姿勢で挑んでいってください。
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