【違反タイプ別に解説!】近時の最低賃金法違反にまつわる指導・トラブル事例と実務のポイント
特定社会保険労務士
角森 洋子
2. 減額特例許可制度
最低賃金法7条により、「都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令(筆者注:最低賃金施行規則5条)で定める率を乗じて得た額を減額した額により第4条の規定を適用する」と定められています。したがって、許可を受けていれば最低賃金を下回る賃金で使用可能となるケースであっても、許可を受けていない場合には、最低賃金法4条違反となります。
- 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者(精神または身体の障害がある労働者であっても、その障害が当該労働者に従事させようとする業務の遂行に直接支障を与えることが明白である場合のほかは許可しないこと)
- 試の使用期間中の者(当該業種、職種等の実情に照らし必要と認められる期間に限定して許可すること。この場合、その期間は最長6カ月を限度とすること)
- 職業能力開発促進法24条1項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能およびこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定めるもの
- 軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者(断続的労働を含む)
●参照
低賃金法第7条の減額の特例許可事務 マニュアルの一部改正について
(平成22年3月24日基勤勤発0324第1号)
3. 減額特例の対象にならないもの
上記の断続的労働に従事する者と同様に、監視労働も労働基準法41条(労働時間等の適用除外)の許可の対象となりますが、最低賃金の減額特例の対象とはされていません(昭和34年10月28日基発747号)。
監視労働の場合は、通常、夜間に仮眠時間をとることができるのですが、拘束時間は長くなっています。そうすると、大星ビル事件(最1小判平14.2.28)のように、仮眠時間を労働時間とみなしてその仮眠時間を加えた時間に基づいて1時間当たりの金額を算出した場合に、最低賃金額に満たなくなってしまうということがあります。
この最高裁判決が出た後も、厚生労働省からは、仮眠時間の取扱いについて特に通達が出されているわけではないので、監視労働における仮眠時間を労働時間とみなすか否かについては、労働基準監督署によって判断が違っています。仮眠時間を労働時間と判断することによって、時間当たり賃金額が最低賃金額を下回っている場合は、「賃金を引き上げるように」という指導を受けることになるので、注意が必要です。
ちなみに、大星ビル管理事件で、最高裁は、仮眠時間のすべてが労働時間であると判示したのではなく、「実作業への従事の必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていないと認めることができるような事情も存しないから、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる」としています。
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