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あの仕事の「ヒト」と「カネ」

水族館飼育員

言葉の通じない水生生物と会話する
華やかさだけではない飼育員の日常

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日本は水族館大国だ。狭い国土にもかかわらず、大小さまざまな水族館が100以上存在している。水族館の定義は国によって異なるが、2011年の国際水族館フォーラム(IAF)の確認によると、世界で計431館の水族館が登録されていて、そのうち日本国内の登録数は70館。世界の水族館の約2割は日本に所在していることになる。日本人にとって、大変身近な存在ともいえる水族館。そこで働く飼育員の人たちは、どんな仕事をしていて、どのように生き物たちに接しているのだろうか。

多種多様な生物の命を預かる、責任重大な仕事

誰もが一度は、水族館に訪れたことがあるだろう。大きな水槽に囲まれ、海の中に立っているかのような非日常的空間。イルカやアシカによるユーモアあふれるショーを観たり、不思議な生き物の姿に驚いたり。そんな非日常的な空間の中で働くスタッフの姿に、憧れた人も多いのではないだろうか。水族館には、飼育員、トレーナー、獣医、本部機能など、さまざまな職種の人たちが働いている。スタッフ一丸となって、生き物たちの健康を守っているのだ。

飼育員の主な仕事は、生き物に餌を与えることや、健康を保つための水質管理、生命維持装置の点検、水槽の掃除などだ。病気の予兆や異常をチェックして飼育環境を整え、不調が見つかれば獣医に引き継ぐ。イルカやアシカなどのショーを開催する際の調教や、来場者を楽しませる企画の考案も飼育員の仕事だ。飼育員の仕事は、ペットの世話をするように愛らしさに満ちていると思う人もいるかもしれないが、決して単純なものではない。生き物はみな、生きられる環境が違うからだ。同じ海水であっても太平洋と大西洋では塩分濃度が異なるため、食べているものも異なる。太陽光の届かない海底で生きる深海魚もいれば、貴重で非常に飼育が難しい生き物もいる。多種多様な生き物の生命を預かるため、飼育員の責任は非常に大きいのだ。

貴重な海洋生物の研究・保護活動の最前線でもある

一方で、新たな生命の誕生に立ち会うなど、喜びを感じる瞬間も多い。すくすくと元気に成長していく姿を間近で見られるのは、飼育員の特権だろう。また縁の下の力持ちでありながら、来館者と距離が近いのも特徴だ。生き物を見て笑顔になったり驚いたり、ころころと変わる子どもたちの表情を見ることができるのも、飼育員のやりがいの一つといえるだろう。

夏も冬も水場で仕事。心身ともにタフであることが求められる

展示やショーなど、エンターテインメント性の高い華やかな面ばかり目に付くが、その仕事の多くは地道で、根気強さが求められる。10時や11時に開館する水族館の場合、出勤は8時台。見回りをして生き物に変化がないかを確認し、給餌をするところから1日が始まり、閉館から1時間後に退勤となる。水に触れる作業がほとんどのため、冬場は極寒だ。心身ともにタフで、責任感の強い人が飼育員に向いているといえる。

飼育員という仕事の難しさの一つは、言葉を持たず、表情も見えない水生生物と向き合わなければならないこと。魚類などの水生生物は表情や行動といった情報から感情を理解することが難しく、専門的な知識が必須だ。水生生物の知識のない人が飼育員として採用されるケースはほとんどなく、大学や専門学校で専門的に学んだ人が有利だと考えたほうがよいだろう。

また、生物を見守る観察力も重要だ。生き物たちの病気や異常に早く気付くことができなければ、翌日には手遅れになってしまうかもしれない。専門的な知識と観察力、身体的な負担に加えて、思ったとおりに動いてくれない生き物を相手に業務をこなす強い忍耐力が不可欠だ。言葉によるコミュニケーションがなくても、生き物たちと日々コツコツと信頼関係を築いていくことが、飼育員には求められる。

民間か公営か。安い給与水準か、職場を選べない環境か。

飼育員の応募倍率はかなり高く、就職を希望しても苦戦する可能性が高い。水族館の多くは定期的な採用を行っておらず、採用する場合、そのほとんどは欠員補充。飼育員になるために特別な資格は必要ないが、知識が必要となるため、水産系の高校や大学を卒業していると有利だ。具体的には、生命環境学部、生物学部、海洋学部、水産学科、生物地球学部、生命工学部などで学んでいるといいだろう。大きな水槽を有した水族館ではダイビングのライセンスが求められたり、海獣のいる水族館では獣医師免許の取得が求められたりすることもある。

水族館には民間と公営の二種類があるが、公営の水族館で働く場合はまず、公務員試験を受けなければならない。ちなみに公営には都道府県が経営する県営水族館、市町村が経営する市営水族館、県や市が共同で経営する官官混合型水族館、県や市に民間が加わって経営する官民混合型水族館などがあるが、公営だからといって規模がおとるわけではない。潤沢な資産力によって、安定的に経営できている施設も多い。

まるで会話をしているかのようなふれあいの様子に
大人も子どもも惹きつけられる

一方、給与水準はあまり高くない。公営であれば公務員給与に基づくが、民間の場合はアルバイトからスタートする場合もあるため、収入にはかなりの開きがある。基本給は地方の水族館で15万円程度、東京都でも18万円程度。したがって年収は、200万円~300万円ほどとなり、報酬が働くモチベーションになるという人には、なかなか厳しそうだ。一方、公営の水族館で公務員として働く場合は、民間で働くよりは給与水準が高くなるが、公務員である以上、数年ごとに異動をともなうため職場を選ぶことはできない。

このように給与が安い、職場が選べないというマイナス面はあるものの、飼育員になりたい人が後を絶たないのは、生き物と心を通わせ、見に来る人を幸せにする仕事に、お金以上の大きな価値を感じているからではないだろうか。

この仕事のポイント

やりがい生き物が育っていく様子を間近で見られること。子どもを中心とする来館者が、生き物を見て笑ったり驚いたりしている様子を近い距離で感じられること。
就く方法水族館には民間と公営があり、公営の場合は公務員試験に合格する必要がある。いずれの場合も、水族館飼育員は応募倍率が高い狭き門。新卒採用のような定期採用は行わず、欠員による採用がほとんどのため、こまめに水族館の求人をチェックしておくのがよい。
必要な適性・能力水生生物に関する知識が必須になるため、高校や大学で専門的に学んでいたほうがよい。また、精神的にも肉体的にもタフであることが求められる。生き物たちの異常にいちはやく気付く観察力や、生命を預かるという責任感も必要な適性。
収入公営水族館の場合は、公務員の給与に準拠するが、業界的に給与水準はあまり高くない。欠員募集によって採用されるため、アルバイトからスタートする可能性もある。社員の初任給は、地方で15万円、東京でも18万円程度。よって年収は200万円~300万円ほどとなる。

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