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【「特別な休暇制度」の導入&活用方法】「従業員の多能工化」との合わせ技で生産性もアップ!

特定社会保険労務士

假谷 美香

昨今、「特別な休暇制度」が注目されています。厚生労働省は、全国各地で特別な休暇制度に関するセミナーを行い、さまざまなパンフレットやリーフレットを作り配布しています。また、行政の取組みだけでなく、多くの企業で実際に「特別な休暇制度」が導入されています。厚生労働省ホームページに掲載されている、2013年4月1日時点の状況に関する調査(「平成25年度 特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度に関する意識調査」。以下、「意識調査」という)の結果によると、現在、約半数以上の企業が何らかの特別な休暇制度を導入しています。なぜ今、「特別な休暇制度」が必要とされているのでしょうか?

1. なぜ今、「特別な休暇制度」が注目されているのか?

(1)特別な休暇制度とは?

そもそも「特別な休暇制度」とは、正式名称を「特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度」(以下、「特配休暇制度」という)と言います。つまり、特配休暇制度は企業の福利厚生の一つであり、より安心して労働者に働いてもらうための制度と言えます。

厚生労働省が定めている「特に配慮を必要とする労働者」とは、以下の通りです。

  • 特に健康保持に努める必要があると認められる労働者
  • 子の養育または家族の介護を行う労働者
  • 妊娠中および出産後の女性労働者
  • 単身赴任者
  • 自発的な職業能力開発を図る労働者
  • 地域活動等を行う労働者 等

特配休暇制度導入の大きな目的は、労働者が心も体も健康で日々生活に充実感を持ち、仕事に対して意欲を燃やし、自分の能力を発揮できるようになることです。それを実現するために、まず、その手前の小さな目標として、(1)従業員の健康の保持と増進、(2)仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)、(3)モチベーションの向上といった三つを掲げています。

とはいえ、労働者がモチベーションをアップさせ、能力を発揮する方法は、休暇以外にも沢山あります。例えば、評価制度と賃金制度をリンクさせる、つまり、「頑張った人にはより多くの報酬を支給する」という制度もありますし、教育訓練によって、働く喜びに気づいてもらうという方法もあります。もちろん、これらをないがしろにしているわけではありませんが、今、厚生労働省は特配休暇制度の導入に力を入れています。理由は、以下のような背景によります。

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日本の労働環境において、昨今問題視されているのは、長時間労働です。長時間労働の抑制を目的として、2010年4月に改正労働基準法が施行されました。また、2014年度から、10月が「年次有給休暇取得促進月間」に指定されました。さらに、2014年通常国会で「過労死等防止対策推進法」が成立し、2014年11月の1ヵ月間は、「過労死等防止啓発月間」に定められています。

なぜ、厚生労働省はこれほど長時間労働の抑制に力を入れているのでしょうか? それは、長時間労働が働く人たちに健康障害をもたらすと考えられているからです。「健康障害」とは、身体のみならず、精神的なものも含みます。

日本は、欧米に比較して、年間の労働時間が圧倒的に多いと言われます。労働時間を減らし、健康障害を予防する施策の一環として、特配休暇制度の導入が注目されているのです。

(2)時代はどう変わったのか?

日本人の労働時間は、資料1・2のような変遷をたどっています。これらを見ると、高度成長期の日本人は、とにかくよく働いていたことがわかります。長時間労働なんのそのです。そして、働けば働くほど、生活が豊かになりました。1955年から1973年までの各年のGDP上昇率は、平均9.1%でした。当時は、充実感を伴った労働だったのです。

現代の日本では、高度成長期のような賃金の上昇は見込めません。労働という投資のリターンがそれほどないという状況が長く続くと、人は徐々に疲弊していきます。そのうえ、現代は非常にストレスフルな社会になっています。人間は、適度なストレスを受けることで人生に張りを感じ、充実感を覚えることがありますが、その程度も、過度なレベルにまで達すると、心身の健康を害する結果になってしまいます。

ストレスフル社会の原因としては、情報量の多さ、そして、人間的な絆やふれ合いの希薄さが考えられます。日々膨大な情報に接する中にあって人と人とのふれ合いは希薄になり、多くの人が自分の居場所を求め、心の充足感を求める時代になったと言えます。

■資料1 第7次国民生活審議会総合政策部企画委員会長期展望小委員会報告(抜粋)

(労働時間の短縮)
〔38〕…我が国の雇用労働者の労働時間は、1960年(昭和35年)頃までおおむね増加傾向にあったが、(中略)月間総実労働時間(作業員30人以上全事業所平均)をみると、1960年(昭和35年)の202.7時間を最高に、1977年(昭和52年)には174.7時間となった。

■資料2 産業別常用労働者1人平均月間総実労働時間数(抜粋)
産 業 平成2年 12年 22年 24年
調査産業計 171.0 154.9 149.8 150.7
建設業 184.4 170.3 173.2 175.4
製造業 176.6 164.7 163.3 164.6
情報通信業 162.9 160.3 165.2
運輸業、郵便業 174.3 174.2 173.1
卸売業、小売業 144.5 137.1 140.6

対象:常用労働者30人以上の事業所。
出典:厚生労働省大臣官房統計情報部雇用・賃金福祉統計課「毎月勤労統計調査年報(全国調査)」より作成

(3)今、日本人が欲するものは?

今、日本人が大切にしていることとは、何でしょうか? 経済指標の代表格であるGDPで見ると、1位アメリカ、2位中国、3位日本という結果です。しかし、2013年に国連が発表した「世界幸福度報告書2013」によれば、この3国の幸福度ランキングは、アメリカ17位、中国93位、日本43位でした。つまり、経済力がある国の国民が幸福感を感じているかというと、必ずしもそうではなさそうです。

筆者は、今、日本人が求めているのは精神的な豊かさ、そして充実感であると考えます。精神的な豊かさの源は何でしょうか? 人と人とのつながり、自己重要感、絆、家族等々、心の豊かさや充足感をもたらすものは、人によって違います。その対象は、時に家族であり、友人であり、仕事であり、そして趣味や学びであることもあります。特配休暇制度には、「仕事だけでなく個々の人間が大切にしているものにも時間の取れる、心にゆとりを持てる時間を制度として導入しよう」という考えが根本にあるのです。


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