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日本に根づくか消え去るか いま「成果主義」を問う

「成果主義」と「ストレス」と「人事コンサルタント」

川上 真史さん

ワトソンワイアット コンサルタント

「成果主義」に対する見方は昨年の後半あたりから、肯定的なものから否定的なものへと大きく変わりました。その背景の一つとしてしばしば指摘されるのは、「成果を出さなければ」とのプレッシャーがさまざまな職場ストレスを引き起こしている、ということです。実際、職場のメンタルヘルスは多くの企業で重要課題となっていますが、では、成果主義がストレスとどう関係するのか、ということについては、じつは判然としていないのではないでしょうか。 もう一つ、成果主義がうまくいかない背景として、「人事コンサルタントが暗躍したせいだ」という指摘もあります。企業の人事部が自分で勉強してというよりも、社内の事情もよく知らないコンサルタント会社に外注して成果主義を入れたために混乱が生じた、というわけですが、では、そこでコンサルタントが本来担うべき役割とは何か、についても、きちんと理解されていないように感じます。成果主義と職場ストレスの関係は、どうなっているのか? 成果主義と人事コンサルタントの関係は、どうあるべきなのか? 人事評価制度の第一人者であり、産業心理学者でもある川上真史さんに聞きます。

(取材・構成=岩崎義人、写真=中岡秀人)


ATRProfile
かわかみ・しんじ●1962年生まれ。京都大学教育学部教育心理学科卒業。産能大学経営開発研究所研究員、ヘイ・コンサルティングのディレクターを経て、97年からワトソンワイアットへ。外資系大手コンサルティング会社のコンサルタントとして、90年代から多くの日本企業で、成果主義的な人事制度の構築・定着を手掛ける。現在はコンサルティング業務の傍ら、早稲田大学で産業心理学を教え、大前研一氏が主催するビジネスブレークスルー大学院大学の教授も務めている。『仕事中だけ「うつ」になる人たち』(小杉正太郎氏と共著、日本経済新聞社)『会社を変える社員はどこにいるか』(ダイヤモンド社)『できる人、採れてますか?』(共著、弘文堂)など著書多数。
会社を変える社員はどこにいるか


成果主義は職場にストレスを与えているか?

「助走期間」がなくなって疲弊している若手社員

―― 多くの企業で「メンタルヘルス」が大きな課題となり、とくに「成果主義の導入が社員にストレスを与えている」と指摘されます。

それについては今年の3月、日本能率協会と共同で成果主義に関する大規模な調査(対象企業200社強、対象社員数7000人強)を実施したのですが、興味深い結果が出ました。(1)成果主義の導入に成功している企業(社員の能力アップや職場の活性化につながり、企業の競争力が高まったケース)(2)導入に失敗した企業(3)成果主義的な制度を全く導入していない企業――という3つのタイプの企業に勤める社員たちに、「職場で疲弊感を感じるかどうか」を訊いたのですが、この三者の結果が全く一緒だったのです。成果主義導入の成功や失敗、あるいは導入している/していない、にかかわらず、あらゆる企業で社員はみんな同じように「疲れて」いたわけです。

―― 成果主義が原因で社員にストレスが増えているわけではない、ということですか?

川上 真史さん Photo

ええ。このデータから見る限り、ストレスは成果主義だけが原因ではないですね。では、社員のストレス増加の原因がどこにあるかというと、私は、企業の中で仕事のやり方が変わってきた、というところにあるように思います。このことは、いまストレスの問題が20代の若手に多く起こるようになってきたことを見れば、よくわかると思うんですね。たとえば20年前なら、新卒とか若手の社員にはコピー取りをはじめ、誰にでもできるような仕事がいくらでもあった。つまらない仕事かもしれないけれど、それをこなしながら少しずつ仕事とは何かを知り、社内の人間関係もつくって、そして30代になって本格的な仕事に取り組む、という仕事のやり方でした。20代の仕事は「助走期間」であったわけです。でも今はそれがない。誰でもできる仕事は進歩したオフィス機器があっという間にやってしまう。オフィス機器ではできない単純作業もまだあるけれど、それも「正社員はそんなことをする必要はない。派遣やアルバイトにやらせろ」などと言われたりします。

―― 正社員の仕事のやり方にゆとりみたいなものがなくなってきた、と。

そう。一昔前だったら、「仕事だ」とか言いながらお客さんと飲んだり、遊んだりする時間だってありましたよね。何か突発的なトラブルや職場で緊急事態が起きたりしても、そういう「バッファ(緩衝)」の時間やエネルギーをトラブル解決に回すことができたのですが、今はそれができない。仕事上の「バッファ」がありませんから。何か起こったら寝る時間を削るしかないんです。そんなふうに仕事が変わってきていることが、とくに若手の社員にストレスを与えていると思いますね。

罰則的な成果主義では社員は何も達成できない

―― 成果主義導入をきっかけにして仕事のやり方が変わってきた、という側面もありませんか。

広義の意味では成果主義が影響しているところはありますね。「正社員は成果に直結する仕事にエネルギーを注げ。その他の仕事は正社員以外か機械がやれ」と、今の企業は言っているわけですが、それを促進するための制度として成果主義が導入されたと言うこともできますから。けれども本当に問題なのは成果主義そのものではなく、その運用の仕方なのです。今の企業の成果主義というのは、2つの方向性に分かれていますね。1つは「高い成果を出している社員たちにもっともっとがんばってもらうために彼らをアトラクトしよう(引き付けよう)」という方向性を持つ成果主義。もう1つは、「成果を出せない社員たちに対しては給料を下げる」という罰則的な方向性を持つ成果主義。同じ成果主義でも、運用の仕方によって強調されるところが違うんです。罰則のほうに傾いてしまうような企業では、ストレスが助長されるのは間違いないでしょうね。

―― 成果が出ないなら給料を下げるぞというのは、誤った運用方法だと。

そうですよ。罰をもって社員を動かそうなんて、ものすごく安易なマネジメント手法ですから。そんな運用をされたら、社員は仕事にやりがいを感じることなんてなくなるでしょうし、結局何も達成できないと思います。そこのところは冒頭に述べた調査の結果でもハッキリ出ています。ただし、これは厳密に言うと、「ストレス」というより「職務満足感」の問題と強い関係を持っているようで、成果主義が失敗すると職務満足感が下がるようです。ただし、職務満足感が下がれば、ストレスの問題は高まることになるのは間違いありません。つまり、ストレスの発生にはいろいろな要素が複雑に絡み合っているわけで、だから「成果主義的な制度を入れたせいで、ストレスが高まった」という一元的な見方はちょっと違うと思うんですね。

がんばり続けなければならないハイ・パフォーマー

―― 高い成果をあげている社員にもっとがんばってもらう、という成果主義は問題ありませんか。

これも問題が起こるケースがあります。コンサルティング業務で企業の現場を見ている私の実感なのですが、今、最も疲れている社員は、成果を出せない人たちじゃない、むしろ高い成果を出している人たち(ハイ・パフォーマー)なんです。

―― 成果を出している社員が疲弊している?

そうです。たとえば、オリンピックの金メダリストを考えるとわかりやすいと思うのですが、4年間かけて世界一という成果を生み出した。それはすごいことなのに、即座に次のオリンピックに向けて取り組みが始まる。そして「次も金メダルを」と暗黙のうちに要求される。これはすごいプレッシャーでしょう。アテネの競泳で金メダルを2つも獲った北島選手は今年、国内のレースで日本人選手に敗れ、さっそく潰れましたよね。同じ現象が企業でも起こります。やっと高い成果を出した社員がホッとするのも束の間、企業は「今期の成果についてはすべて対価を払います」と、その時点で「精算」されてしまう。そして次の期もゼロベースから高い成果を出すことを求められて、そこでちょっとでも躓くと「あいつは実力が落ちた」と言われるのです。

―― そのプレッシャーに耐え切れなくなったハイ・パフォーマーはどうなるのでしょう。

転職していくケースが多いですね。曙みたいに大相撲からK-1へ移ることになる(笑)。ここにハイ・パフォーマーの人材流出という問題が起こるんです。じつは、かつて、同じ問題が世界中で起きました。1995年頃までの世界中の人事に関するキーワードは「pay for performance(業績に対する支払い)」だったのですが、2000年頃から明確に出てきたキーワードは「attraction and retention」です。つまり、成果を出す人をもっとアトラクトして、それによってリテンションを高めよう(組織により長くとどまってもらおう)というものです。ハイ・パフォーマーに転職されると、それは企業にとって大きな損失になるし、社会全体にとっても効率が悪いと言えるでしょう。

一部の日本企業は現在、ハイ・パフォーマーの人材流出の問題に対処するために、「精算型」ではなく「投資型」の処遇も入れるようになっています。「投資型」の処遇とは、たとえば、年俸額をアップさせて、「これから先、よほどのことがない限り、永続的にアップした金額を毎年もらい続けることができる」という権利を保証するというものです。未来における永続的権利を現時点で付与するわけですね。反対に、たとえば賞与などは「精算型」の処遇で、「過去に生み出した成果を測定して、それに見合った金額を支払う」という考え方に基づいています。今の成果主義の考え方と同じですが、そこに「投資型」の処遇を入れると、社員は「年俸額がアップするから、今期の賞与は下がってもいいや、次の期に向けて思い切ったことをやってみよう」という気にもなれるでしょう。そうすることでハイ・パフォーマーの人材流出を防ぎ、プレッシャーを少しでも和らげる。これが成果主義に対する先端的な日本企業の動きですね。

―― ハイ・パフォーマーは、これからもずっとハイ・パフォーマーでいられるかどうか、不安になるでしょうね。

そう。彼らは常に「自分は優秀だ、絶対に成果を出せる」と言い聞かせていないと怖くなるし、周りにもそれを認めさせ続けていないと怖い。ハイ・パフォーマーは精神的にすごく不安定です。「自分は何でもできるけど、お前たちは何もできない」という態度が見え隠れするような、ものすごく偉そうなハイ・パフォーマーに私は仕事柄よく出会うのですが、あれは「いつか自分は高い成果を出せなくなるのではないか」という極度の不安から、そういう態度が生まれてしまうのです。

「援助希求」で自力では解決できない問題に対処する

―― 何とか成果を上げようとして、不安にかられたり、ストレスを抱え込んだりしてしまう。社員がこれに対処する方法はありますか。

結局、対処の方法は「成果を出し続ける」しかないのです。たとえば、重いストレスを感じて病院に行くと、医者から「あまり仕事を深刻に考えないで、土日はゆっくり休んでみてください」と言われる。でも、私自身の場合から考えてみても、大企業のクライアントを複数抱えて難しいコンサルティングを手がけているときに、それを気楽に考えるなんて、できるわけがない(笑)。それは無理だろうし、私がストレスを少しでもやわらげるためにできることは、やっぱりコンサルティングの仕事をうまくやることしかない。

―― いま抱えている仕事で成果を出すしかない。

ええ。ただ、そのときに成果の「出し方」を変えることで、かなり違ってきます。心理学ではストレスの原因を「ストレッサー」と言い、「ストレッサー」に対処しようとすることを「コーピング」と言います。これは早稲田大学の小杉正太郎教授の理論なのですが、「コーピング」には、「ストレッサー」から逃避したり、あきらめて我慢したりするような「消極的コーピング」と、自分で問題解決をしたり、誰かに援助を求めて問題解決しようとする――「援助希求」と呼ばれる――「積極的コーピング」があります。その中で、とくに「積極的コーピング」の「援助希求」をいかに取り込めるかがポイントになってきます。自分だけで問題解決するのではなく、誰でもいい、他人に援助を求めながら問題を解決していく。それが成果の出し方を変える、ということなのです。

今、40歳前後の管理職のマネジメント力が極度に落ちています。彼らのマネジメントスタイルは両極に分かれている。完全に放任・放置してしまうか、または「君たちは何もわかっていない」という態度で、自分だけが正しいというやり方を押しつけるかのどちらかしかない。そういうマネジメントをしている人に、誰かが援助の手を差しのべてくれるかといったら、誰もいないということになるんじゃないですか。結局、「援助希求」を取り込むことができなくて、成果の出し方を変えられない、重いストレス反応に行き着いてしまう、ということになるんです。

―― ハイ・パフォーマーはストレスを抱え込んでも「誰かに援助を求めるなんて嫌だ」と考えるかもしれません。

そうです。一般的に、援助を求めることは消極的だと考えると、そういう態度になりがちですね。しかし心理学では、援助を求めること自体、積極的だと考えるのです。援助を求めてでも、問題を解決しようとする動きだからです。自分で解決できないことに関しては、援助を求めている人のほうが、当然、ストレッサーは低減し、ストレス反応も起こらなくなる。これは間違いありません。

これも小杉教授の研究なのですが、ストレスは普通、5つのステップを踏みながら進行していきます。(1)疲労感 → (2)攻撃性やイライラ感 → (3)緊張感 → (4)抑うつ感→(5)うつ状態 ですね。私自身も経験がありますが、仕事をしていると(1)疲労感は確実に出ますね。(2)攻撃性やイライラ感もよく出てくる。私は、(2)攻撃性やイライラ感のステップに来ているなと思ったら、「体力的にも精神的にも限界が来ているので、休ませてください」と言うようにしています。(2)攻撃性やイライラ感が出てきたことは、私の場合、メールで結構わかります。メールを打つときに、極端に攻撃的な文章を書いてしまうんですね。人間の攻撃性というのは、面と向かっているときはほとんど出ません。相手の顔も見えない、声も聞こえないメールでは攻撃性が出やすいのです。でも、そんな攻撃性が出てきたら、仕事にならない。もしも(3)緊張感までいってしまうと、完全に仕事ができなくなる。だからストレス反応の中で、自分なりにここが限界だという目安は押さえておくべきでしょう。ストレス反応が出てきたら、「うちの会社はロクなものじゃない!」などと攻撃的に考えることなく、自分は今、ストレスを抱えているんだと自覚できるかどうか、そこが大事でしょうね。

成果主義導入をコンサルタントに任せて大丈夫か?

コンサル業界は「5年周期」で好況/不況を繰り返す

―― 川上さんは前職のヘイ・コンサルティグのコンサルタント当時、「日本で成果主義導入の先陣を切った」と言われる武田薬品工業のケースに携わっていますね。

ええ。でも、あのときの私には、武田薬品工業に成果主義を導入したという意識はどこにもなかったのですよ。武田にもともとあった人事制度をさらに精緻化し、本当に公平な制度をつくろうとしただけなのです。それが後から「成果主義」と言われたわけですけど。

―― その頃、90年代前半、企業が人事制度改革をコンサルティング会社に依頼するケースは多かったのですか。

いえ、ほとんどありませんでした。振り返ってみても、12~13年前までは、企業の人事部が外資系コンサルティング会社に依頼して、人事制度をつくるなんていう雰囲気は全くなかった。企業にそういう予算すらなかったですから。それが96年頃からでしょうか。断らなければならないほど急に依頼が増え始めたのは。

―― その頃まで、コンサルティング業界はどういう変遷を経てきたのでしょうか。

80年代から90年代の初めにかけては、「研修」の仕事がメインでしたね。コンサルティングというと組織開発や職場開発が中心で、その一環として研修をして、議論をしながら問題を解決する。コンサルタントはそれをガイドするのが仕事だったんです。  人事コンサルティングの業界には、好況/不況を5年ごとに繰り返す「5年周期説」というのがあります。これは日本の企業の変革期と安定期の周期に符号します。変革期になればコンサルティング業界は儲かるわけで、80年代後半の組織開発や職場開発、CIが花盛りの頃は、それに絡めて職能資格制度も導入されるなど好況でした。ところが90年代初めになると、職場開発をやったり職能資格制度を入れたりしているにもかかわらず「何の効果もないよ」ということになってきた。そこから、企業はちょっと改革をストップしようかという、安定期というか様子見の時期に入ったわけです。そうこうして様子見が後半になって出てきた動きが、「もう成果主義を入れるしかないよな」という変革の気運ですね。でも、どの企業も自分が最初に導入して失敗したくない。それが90年代半ば、武田や富士通が入れて話題になったとたん、それ行けと、一気にみんな同じものを入れた。「成果主義バブル」が起こったわけです。しかし、これも2000年頃になると、「成果主義を入れたけれど、何だかうまくいかない」ということになってきて、つまり再び様子見の時期に入って、現在のような「成果主義バッシング」の状況に変わってきている。というようなことを5年周期で繰り返しているんです。

人事コンサルタントの半数が「経験5年未満」

―― 最近は、そういう「5年周期」の状況の変化を経験したことが一度もないような若い人事コンサルタントも目立ちますね。

川上 真史さん Photo

そこが問題なのです。わたしは人事コンサルタントになって20年目ですけど、業界では極度に古株です(笑)。キャリア20年で古株なのですから、この業界はものすごく若いと言えます。十数年やってきたコンサルタントで初めて、前の不況期を経験している、ということになる。

―― 「今の人事コンサルタントが出してくる成果主義プランは一見、非の打ちどころがないように見えるけれど、現実性がない」という批判もあります。高いフィーだけ取って、あとはあなたの会社次第ですからと、さっさと退散してしまうコンサルタントもいると。

実際そういうケースもあると思います。コンサルティングというのは、適当に手を抜こうと思ったら、いくらでも抜けますからね。他の企業に導入した事例を一括変換して、そのまま別の会社用につくり変えることだってできてしまう。一部の倫理観のないコンサルタントは、それをやってしまっている。現在の人事コンサルタントの8割方は、経験が10年未満だと思いますね。もっと言うと、5割方が経験5年未満でしょう。でも、この仕事は、そもそもそんなに簡単にできるものではないんですよ。

それなのに経験の浅いコンサルタントが「成果主義を導入しなくてはいけません」などと言って、企業の人事制度をぐちゃぐちゃにしてしまう。それで、「やっぱり成果主義はダメじゃないか」ということになる。正直、いい加減にしてくれと思います(笑)。長くこの業界にいると、コンサルタントの無責任さもすごく感じます。

人事部と現場の思いを融合させていく大事な役割

―― 成果主義がうまくいっている人事部とそうでない人事部の違いは何でしょうか。

それは結局、「成果認識」の違いだけですね。現場を支援して、どう動機づいてもらえるかが自分たちの成果だと考えている人事部はうまくいくでしょうし、現場を説得して、どうすれば自分たちの考え方を納得させられるかが成果だと思っている人事部は失敗するでしょう。武田薬品の人事部がさすがだと思ったのは、たとえば、新しい評価制度がよくわからないという質問が社員から出たとき、「じつは人事部の私たちもまだよくわからなくて検討中なんです」とハッキリ言っていたことです。そのうえで、「だから申しわけないですけど、まず一度、みなさんが思ったとおりに評価していただいて、そのデータを基にさらに検討させていただけませんか」と語りかけていた。これはすごいですよ。人事部と現場が、敵・味方に分かれないでやれているわけだから。現場の社員たちが機嫌よくやってくれる人事制度にできるかどうか、ということがポイントなんです。

―― そのときのコンサルタントの役割は、どういうものですか。

人事部と現場は多くの場合、離れているものですし、だからこそコンサルタントが必要になるわけですが、人事部と現場の両者をきちんと見ながらお互いの思いを融合させていくのが大事な役割になってくる。そこでは、人事部と現場の思いを現実の制度として組み立てていく役割も大事だし、両者の間で触媒としてうまく機能して、お互いに納得できるところまでもっていく役割も大事です。また、社員の代表である組合と経営側の言い分をWin-Winの関係で組み立てられるかという役割も大事ですね。だからコンサルタントって、大変な仕事なんですよ(笑)。

「自己実現の欲求」から「エクスターナル・チーム」へ

―― 日本の企業は5年周期を繰り返しながら「成果主義」まで来た。では、これから5年後に来るものは何でしょうか。

かつては1つの組織に属してみんな仲間だという意識を持つ、いわゆる「社会性の欲求」の段階で多くの人が満足していました。ところが90年代後半になると、自分の成果をしっかり認めてもらいたいという「承認欲求」を感じ始めた。そうなってくると成果主義的な制度はどうしても必要です。今はそこに来ているわけですが、それが満たされてくると次はどうしても「自己実現の欲求」が出てくる。それが2005年以降の動きになるでしょう。「自己実現の欲求」とは、自分のやりたいことをもっとやりたい、ということですが、その実現に向けて「エクスターナル・チーム」がこれから出てくると思いますね。

―― 組織外の人たちともチームを組んで動く、という意味ですか。

そうです。たとえば社内では普段あまりぱっとしないのに、お客さんとはなぜかうまくいくという社員がいるでしょう。そのように、本格的な「チーム」でなくても、お客さんと自分があたかも同じチームのメンバーのような感覚で動く、これがエクスターナル・チームです。1つの組織は限られた有資源ですけど、エクスターナル・チームで動けば資源は無限大になる。そこまでいけば世の中もおもしろくなるし、仕事をしていても楽しいはずですよね。ただ、そのためには、社員は一人ひとりが「1」以上の価値ある資源となって、組織外の誰かとチームを組んで「掛け算」をしたらシナジー(相乗効果)を生み出せるようにならないと。

「1」以下、たとえば「0.8」の価値しかない人とチームを組んで「掛け算」をしてもシナジーは生まれないわけですからね。私が成果主義において重要視しているのが「成果認識」だということにも、これは関係してきます。成果のイメージを自分で捉えることができるかどうか、そこをしっかりやる必要がある。そうした方向性で考えると、企業にとって今後も成果主義は必須でしょうね。

川上 真史さん Photo

(取材は5月6日、東京・市ヶ谷のワトソンワイアットにて)


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