パーソルグループの総力を結集し、
「多様な働き方の実現」「雇用のミスマッチ極小化」など、日本の雇用課題に全力で取り組む
パーソルホールディングス株式会社
水田正道さん 高橋広敏さん
「新たな労働参加」と「適材適所」を実現する
「多様性のある社会の実現」「雇用のミスマッチの極小化」に向けて、どのような取り組みを考えていらっしゃるのでしょうか。
水田: ポイントは、大きく二つあります。一つ目は、雇用のミスマッチの極小化に向けて、今働きたいのに働けていない人たちに「新たな労働参加」をしてもらうこと。そのためには新しい働き方、新しい雇用のあり方を創出することが必要ですが、人事担当者の皆さまと一緒にそれを開発していくことがとても大事だと認識しています。単に「派遣を使いましょう」「アルバイトの活用をしましょう」といったことではなく、各企業が抱える人と組織の課題に対して、我々は根本的な部分から一緒に考え、より良い方法を提案し、サポートしていきます。
高橋: 必要な人をなかなか採用することができない時に、今まで活用しきれなかった人たちを、新しい雇用の枠組みの中で、いかに登用していくかを一緒に考えます。例えば、小売業や流通業、飲食サービス業などの場合、1日8時間働ける人たちだけでなく、3~4時間なら働ける人たちも受け入れる枠組みを店舗単位で取り入れる、などといったことです。
オフィスワークの場合も同様で、例えば、当社グループでは今年4月に、さいたま市浦和区に「ジョブシェアセンター」をオープンしました。育児や介護などの事情により、就業時間が限られる方が都心へ通勤することなく職住近接で働けるセンターです。当社グループで受託している案件を集約し、複数の業務の中から、ジョブシェアセンターに適した業務を切り分けて組み合わせることで、このような仕組みを実現できました。ここでは、当社グループの「直接雇用の業務社員」という雇用形態で働くことができます。ジョブシェアセンターで行う業務には、PCを使わない封入・仕分けといった仕事から、専門知識が必要な入力・審査など、さまざまな仕事が混在するため、経験に応じて、ジョブシェアセンター内でのキャリアアップも可能です。今後、東京23区外や神奈川県、千葉県にも順次開設する予定です。こういった新しいワークスタイルをどんどん提唱していきたいと考えています。
水田: 二つ目が、適材適所。本人が本当にやりたい仕事ができていない一方で、企業の中での人材配置の偏りといった問題が至る所で起きています。企業内の「最適配置」の実現、さらには地域や日本国内での「最適配置」の実現も大きな課題です。しかし、これらの課題を単独の企業で解決していくのは難しいでしょう。
そこで、企業や地域をまたがった新しいマッチングを実現する場合や、日本全体で過不足が予想される仕事がわかっている場合には、パーソルグループがこれまで培ったさまざまな人材活用ノウハウやネットワーク(地域拠点)をご提供できるのではないかと考えています。例えば、大学と協同して新しい働き方のカリキュラムを考える。あるいは、「プロ人材」の紹介といった形で、専門性を有した人材を地域の企業とマッチングする「地方創生プログラム」を、国や地方自治体などの協力で進めていくような取り組みも進んでいます。
「新たな労働参加」「適材適所」に向けて、さまざまな取り組みを進めていく、ということですね。
水田: その通りです。日本社会全体を考えた時、この20年間、デフレ経済がずっと続いてきました。賃金も上がっていません。海外諸国のほうが賃金が高く物価も高いという状況が拡大しています。日本の相対的な競争力が下がっているのです。そんな日本を再生するために、人材サービス会社として何をすればいいのかというと、労働力人口が急激に減少する中、まずは働き手を増やさなければなりません。そして、働く人たちにこれから20年、30年、若い世代には40年、50年をどのように生きていくのかを考えてもらう。つまり、自分は何を生み出して、何をサービスしていく人になるのか。日本だけではなく、海外も含めて本当に価値のある仕事ができているのかどうかを模索してもらいながら、適切なサービスを提供していきたいと考えています。適材適所を実現し、そのために学び続けていかないと、日本の生産性はどんどん落ちていってしまいます。新しいフェーズに突入した現在、抜本的な対策を講じないと、日本の国力は下がるばかりです。
高橋: 働く個人の方々は、新しい働き方に対して不安があるかもしれませんが、パーソルグループのサービスを使うことで、より安定的に、一人ひとりがありたいと願う姿に近づくことを一人でも多く体感していただきたい。また、今までの雇用モデルのあり方では立ち行かないと考えている経営者や人事担当者の皆さまと、新しい雇用のあり方を一緒になって模索し、新しい枠組みを設計していきたいと思っています。そうすることによって、働く人と企業の双方にドライブがかかります。
パーソルグループとしての今後の経営体制についてお教えください。
水田: 事業会社に権限を委譲し、私と高橋はグループ経営に専念します。立場としては、私がCEO(社長)として経営戦略・ビジョンを示し、高橋がCOO(副社長)として業務執行に当たるという役割分担の下、各事業会社の特徴を生かしながら、グループダイナミクスを推進できるような経営を推進していきます。
グループダイナミクスを図るために、パーソルグループ内部の施策で何か力を入れていらっしゃることはありますか。
高橋: PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を行っています。新しい組織体制の下、経営統合によるシナジーを具現化するために、統合したほうが顧客に対して価値を発揮できそうな領域を、段階的にまとめています。
またグループが一体となって価値提供を行っていくことを目指す上で、2015年には、我々グループが目指す方向性を再度、明文化しました。創業者の篠原の大切にしてきた「経営理念」(雇用の創造、人々の成長、社会貢献)を土台にして、五つの「行動指針」(誠実、顧客志向、プロフェッショナリズム、チームワーク、挑戦と変革)を設定。目指すべき姿としての「ビジョン」(人と組織の成長創造インフラへ)を設け、それを実現するための手段としてブランド「PERSOL(パーソル)」が誕生しました。
また、各事業会社間の融合を図るために、トップ自らが直接コミュニケーションを取る機会を増やしました。一つは「トップマネジメント総会」。各グループの幹部層を中心とした上位約180人を対象に、直接的に意見交換をする場です。実際、「ビジョン」や「行動指針」を作成するプロセスの中で、このメンバーの意見を取り入れてきました。さらに、その下の層(部長クラス)700~800人に対しても半年に1度、リアルなコミュニケーションを図るために、「ビジョンリーダー会議」ということで、会社間の垣根を越えて話し合いの機会を設けています。さらに昨年7月、グループ全社員を対象としたグループ社員総会を全国6ヵ所で初開催しました。トップから直接、グループの未来について話をするだけでなく、ビジョンを体現した仕事の表彰などを通して、相互理解と一体感の醸成を進めています。今年も7月中旬から8月にかけて、我々経営陣が全国をまわり社員総会を開催します。
水田: グループダイナミクスを図るためには、そのような取り組みがとても大事です。実際、コミュニケーションを皆で行う機会は、各段に増えています。現在、グループ全体で約100社、3万人もの従業員がいますが、皆の意識が個別の会社という単位から、グループ全体という単位にシフトしてきたように思います。これだけの力が結集すれば、世の中のニーズに対して提供できることは非常に多いと考えています。