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【ヨミ】ウェルビーイング

ウェルビーイング

「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」と翻訳されることも多い言葉です。世界保健機関(WHO)憲章の前文では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます(日本WHO協会:訳)」とされています。
 
出典:世界保健機関(WHO)憲章とは|公益社団法人日本WHO協会
 

更新日:2023/11/16

1.ウェルビーイングとは?その定義

「ウェルビーイング」(well-being)とは、心身ともに良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」とも翻訳されます。

さまざまな調査から、自分が幸せだと感じる従業員は、創造的で業務のパフォーマンスが高く、組織に良い影響をもたらすことがわかっています。ウェルビーイングでは「心身ともに健康であること」が重要で、後述する「健康経営」とも深い関係性があります。

ウェルビーイングは「幸福(Happiness)」とどう違うのか

ウェルビーイングは「幸福」と訳されることも多い言葉ですが、いわゆる「Happiness」とは異なります。幸福(Happiness)には瞬間的に幸せな気持ちを表すニュアンスが含まれますが、ウェルビーイング(well-being)には持続的なニュアンスが含まれます。

ウェルビーイングは、「うれしい」「たのしい」といった心理面の幸福だけではありません。「精神面だけでなく、身体的にも、社会的にも満ち足りた状態」を指します。たとえば、現状に満足して心身ともに健康であり、仕事や生活、収入などへの不満がなく、充実しているのがウェルビーイングです。世の中の風潮が、金銭で満たせる瞬間的な幸福だけではなく、「充実した人生」「満足できる生き方」といった持続的な幸福を追い求める流れに変わったことで、さまざまな状態を含めて「良い」と思えるウェルビーイングの考え方が広まりました。

ウェルビーイングの四つの因子

ウェルビーイングは、どのような要素から成立するのでしょうか。慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授の前野 隆司氏によれば、ウェルビーイングの幸せには四つの因子が関係しているといいます。幸せな人は四つの因子がすべて高く、ウェルビーイングを保つにはいずれも欠けてはいけません。

◎ウェルビーイングの四つの因子
  • 第一因子:自己実現と成長の因子(やってみよう因子)
  • 第二因子:つながりと感謝の因子(ありがとう因子)
  • 第三因子:前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)
  • 第四因子:独立と自分らしさの因子(ありのままに因子)

第一因子の「やってみよう因子」は、小さなことでもいいので主体的に何かを実現させることにより、幸福が得られる要素です。職場でいえば、経営理念を浸透させ、できるだけ従業員に任せる社風を育むことで、自己実現と成長を促せます。

第二因子の「ありがとう因子」は、人とのつながりによって満たされる要素です。職場で良好な人間関係を築き、人とのつながりを感じられる人は幸福を実感できます。ありがとう因子を持っている人は視野が広く、親切で利他的であるという特徴もあります。

第三因子の「なんとかなる因子」は、自己受容によってもたらされます。自分の長所・短所もあわせて認められるため、失敗を恐れずにチャレンジすることができ、自己肯定感の向上につながります。なんとかなる因子を持っている人は、良い意味で楽観的であり、視野を広くもつことが可能です。

第四因子の「ありのままに因子」は、人と自分を比べすぎないことを意味します。自分らしさをもち、ペースを守って動ける人は幸せです。

ギャラップ社の調査

ウェルビーイングに関する調査として有名なものの一つが、ギャラップ社(アメリカ)の調査です。140を超える国や地域で行われる幸福度についての大規模な調査で、その調査軸は「体験」と「評価」の二つからなります。

体験は、五つのポジティブ体験(よく眠れた/敬意を持って接された/笑った/学び、興味/歓び)と、五つのネガティブ体験(体の痛み/心配/悲しい/ストレス/怒り)をしたかどうかとなっています。

評価は、自分の人生に対する自己評価を10段階で聞くものです。

軸を体験と評価の二つに分けている理由は、人間が直近の体験の影響を受けやすいためです。なるべく印象のバイアスを取り除くため、体験と評価を聞くようにしています。

出典:Gallup’s 2023 Global Emotions Report

世界幸福度ランキング

同調査は世界幸福度ランキングでも活用されています。世界幸福度ランキングは、国連の持続的な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が発表する調査です。

2023年は、世界幸福度ランキング(World hapiness report)が発表されてから10年目にあたります。幸福度の測定方法はこの10年間で発展し、2023年に発表された調査では、コロナのパンデミックなど、人々の価値観や生活に大きな影響を与えた出来事が反映されています。前回2020年の発表と同様、1位はフィンランド。日本は2020年の62位から順位を上げて47位にランクインしました。

世界幸福度ランキングは、下記の六つの要因を用いて各国の幸福度を測定しています。

◎世界幸福度ランキングの六つの要素
  • 一人あたりのGDP(GDP per capita)
  • 健康余命(Healthy life expectancy)
  • 人生で何をするか選択の自由があるか(Freedom to make life choices)
  • 政府機関の腐敗(Perceptions of corruption)
  • 他人への寛容さ(Generosity)
  • 社会的支援(Social support)

2.今、ウェルビーイングが注目される背景

国連の諸機関や日本の官公庁も取り上げるほど、ウェルビーイングに注目が集まっています。

価値観の多様化

ダイバーシティという言葉に代表されるように、価値観は加速度的に多様化しています。性別や国籍、文化など、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まり、ともに仕事をするようになりました。こうしたことから、企業経営においては、従業員の多様性を尊重することの重要性が高まっています。多様性を尊重することでさまざまなビジネスアイデアが生まれたり、コミュニケーションが活発になったりする側面が大いにあるからです。

企業が従業員の多様性を受け入れ、異なる価値観やバックグラウンドを持つ人材がその能力をフルに発揮するための環境を整備することは、従業員の幸福感を増し、ひいては企業の競争力を高め、イノベーションにもつながります。

人材不足や人材の流動性の高まり

2020年における子どもの出生数が、85万人を切る見通しとなることが報道されました。この数字は1899年以降の統計上でも、最少の数字となっています。国内では少子高齢化が加速し、中長期的に見て深刻な人材不足に陥ることが予測されています。

終身雇用という概念は希薄になり、若者を中心に、価値観に合う組織を求め転職することが一般化しました。企業において、事業に貢献する人材の確保やリテンションは大きな課題といえるでしょう。

企業は利益だけでなく、従業員やその家族に対する幸福を追求する姿勢も、明確にする必要があります。そうすることで、企業に対する従業員の帰属意識やロイヤリティが高まり、従業員へのリテンションにつなげられます。

働き方改革の推進

安倍内閣が推進し、2019年4月からスタートした働き方改革。残業時間の上限規制や、産業医の機能強化、同一労働・同一賃金の適用などを定めるものです。企業は、多様な価値観やライフスタイルを持つ従業員が働きやすい環境を整備する必要があります。

また、昨今の人材採用は競争が激しくなり、マーケティング戦略を明確にすることの重要さが増しています。テレワークや副業が可能であるなど、魅力的な労働環境を整備することは、優秀な人材を確保することにもつながります。企業は、どのような働き方であれば従業員の幸福度が増してやりがいを感じるのかといった観点で、制度や仕組みを検討する必要があります。

新型コロナウイルス感染症の拡大

2020年に起こった新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの社会や仕事を大きく変えることになりました。自分や家族の幸福について、あらためて考えさせられた人も多いのではないでしょうか。

急速に普及したテレワークは業務効率化につながりましたが、同時に新たな問題点やストレスも表面化しました。コミュニケーションが断絶した中での業務に、メンタルの不調を訴える従業員もいます。そのため、従業員やその家族が健康でやりがいを持って仕事をするための考え方として「ウェルビーイング」に対する注目が高まっているのです。

SDGsでの言及

SDGs(持続可能な開発目標)という言葉が近年よく聞かれるようになりました。SDGsとは、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際的な目標のことで、2015年9月の国連サミットで採択されました。

SDGsでは17のゴールと169のターゲットが定められています。この目標の一つには「GOOD HEALTH AND WELL-BEING」があり、ウェルビーイングが注目されていることがわかります。

ムーンショット型研究開発制度

内閣府によるムーンショット型研究開発制度は、社会・環境・経済の課題を解決するための「破壊的イノベーションの創出」を推進するための制度です。

「2040年までに主要な疾患を予防・克服し、100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現」という目標に代表されるように、テクノロジーとイノベーションによって「Human Well-being」を目指すとしています。2020年9月から11月にかけては、新たな目標検討のためのビジョン公募も行われました。

3.ウェルビーイングの取り組み事例

イトーキ

株式会社イトーキは、健康経営に積極的に取り組んでいる企業の一つです。「従業員とその家族が活き活きと仕事やプライベートに取り組める健康」を目指していることが特徴です。

取り組み例

ウェルビーイングを意識したオフィス設計

イトーキの本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ トウキョウ ゾーク)」では、高集中エリアや個室ブースを設けることで、生産性の向上を図っています。ITOKI TOKYO XORKでの業務は、同僚との会話やコミュニケーションがしやすく、生産性が向上したという調査結果が出ています。また、ウェルビーイングな状態で働ける空間を認証する「WELL認証・ゴールド(インテリア)」を取得しています。

12の領域にわたる健康経営宣言

健康経営に関するテーマを12に分けて推進しています。社員の健康意識などの無形のものから、具体的な催し・社内の設備などの有形のものまで、あらゆる角度から施策を実施しています。

オリジナルの調査を実施

社員満足度調査やはたらきかた検診というイトーキオリジナルの調査で、ウェルビーイングを可視化しています。

味の素

味の素株式会社は「人財に関するグループポリシー」の中で、「社員のこころとからだの健康を維持・増進できる職場環境づくり」に努めると明記しています。また、目指す姿として、「味の素グループで働いていると、自然に健康になる!!」というテーマを掲げて健康経営に取り組んでいます。

取り組み例

健康に関する情報専用ポータル「My Health」

従業員が自分の健康データを管理するための専用ポータルを整備しています。毎年行っている健康診断の結果について、データが蓄積され経年推移などを確認できます。自分の詳しい健康状況の推移をデータで見られる仕組みは、従業員の健康増進に有効です。

健康管理アプリ「カロママプラス」の導入

AI管理栄養士が健康管理をサポートするスマートフォン用アプリを導入しており、個人の状況に応じた健康・栄養指導が受けられます。社員食堂と連携した取り組みや、女性に特化した健康増進の支援も実施しています。

禁煙や受動喫煙対策

禁煙セミナーやオンライン禁煙指導プログラムを導入することで、社員の禁煙を支援しています。

生活習慣病予防

2020年より、健康的な昼食の提供を全事業所で開始。食生活改善から生活習慣病の予防をサポートしています。

ローソン

株式会社ローソンは、その健康経営宣言の中で「健康は、本人だけでなく家族を含めた望みであり、会社の発展にとっても欠かせない要素」としています。

社長がCHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)となって健康経営を推進。社長直轄の組織として、専門知識を持ったスタッフが常駐している「ローソングループ健康推進センター」を設置し、各種施策を展開しています。

取り組み例

健康診断の結果にKPIを設定

健康診断の結果にKPIを定めている点が特徴です。血圧や肝機能など、6項目にわたって目標値が設定されています。

健康増進期間「元気チャレンジ」

年に2回実施されている健康増進期間には、1日あたりの歩数や食事の糖質制限などを実施するという目安が定められています。

ローソンヘルスケアポイント

定められたタスクの実行や、e-ラーニングを受講して合格することでポイントが付与される「ローソンヘルスケアポイント」という取り組みを実施しています。ポイント発行サービスを展開しているローソンならではのユニークな取り組みといえます。

健康白書の作成

2015年以降は、全社員の健康状況を集計・分析した「ローソングループ健康白書」を毎年作成・公開しています。この健康白書の中では健康増進施策の結果も確認でき、施策と結果両方を公開することで、効果的な施策は何だったかを知ることができます。

労働安全衛生

ローソンの各店舗では、整理・整とん・清掃・清潔・しつけの5Sを推進しており、作業手順などはマニュアルを参照して学べます。モチベーション向上や労働安全衛生の啓蒙を目的として、無事故・無違反者を表彰する制度も整備されています。

丸井グループ

丸井グループではウェルネス経営に取り組み、社員の約7割がなんらかのウェルネス活動に参加しています。

取り組み例

ウェルビーイング専門部署「ウェルネス推進部」の設置

同社では心と身体の健康のみならず「活力」も重視しており、「ウェルネス推進部」という専門部署を設けています。従業員が中心になって企業とのコラボレーションなどユニークな取り組みを行っていることが特徴です。

メンタル状態を支援する講座の開講や定期的なボランティアを通じて、地域コミュニティーと積極的に関わるなどの取り組みも行っています。

組織活性化プログラムの実施

管理職に特化した活力向上・組織活性化プログラムも実施しており、部長職以上の8割が参加しています。ウェルネス活動に参加したメンバーは、ワークエンゲージメントが高まるなどの効果も出ているそうです。

ストレスチェックの結果を各部署に反映

組織ごとにストレスチェックの結果を基にした重点改善項目を設定し、項目に応じた施策を実施しています。

メタボ率の改善プログラム

対象社員は、勤務時間内にメタボリックシンドローム改善プログラムに参加できます。健保組合の専門スタッフがアドバイスやフォローを行います。

外部からの高い評価

経済産業省による「健康経営優良法人~ホワイト500~」に4年連続、「健康経営銘柄2020」に3年連続で選定されており、外部からもその取り組みが認められています。

※取り組み内容、経歴は取材当時のものです

楽天

楽天グループでは、幸福度の高い組織作りのため、コーポレートカルチャー部門が率先して取り組みを実践しています。コーポレートカルチャー部門は、30人ほどのメンバーで組織されたチームです。個人・組織・社会のウェルビーイングを、「ウェルネス部」「エンプロイーエンゲージメント部」「サステナビリティ部」の三つから考え、実践しています。

取り組み例

企業理念の浸透

楽天では、毎週月曜日に、全社会議の朝会で楽天の経営哲学を英語でまとめた「Business-Do」を社員全員で輪読しています。社長自らが内容について解説し、対話する時間を設けることで、より深い理念の浸透を図っています。

メンバー間でのネットワーキング機会の増加

リモートワークが普及したのをきっかけに、コーポレートカルチャーの理解が深化するための機会を提供しています。英語版のラジオ体操やフィットネス、ウェルビーイングに関するセミナーを開催。「仲間である」ことを実感できる施策を実施し、社員間のつながりの強化に貢献しています。

積水ハウス

積水ハウスは、2050年までのグローバルビジョンに、「『わが家』を世界一幸せな場所にする」 を掲げています。従業員が幸せでなければお客さまを幸せにできないと考え、数々のウェルビーイングの施策に取り組んでいます。

取り組み例

全社員2万7000人に幸福度診断を実施

積水ハウスでは、2020年度から全社員約2万7,000人を対象に、慶應義塾大学の前野隆司氏が開発した幸度診断を実施しています。同社の結果は、全ての項目で平均よりも数値が高く、例えば「感謝力」の高さは、他人に何かをすることで幸福になることを示しており、社内でも高く評価されています。

さらに積水ハウスでは、ウェルビーイングな状態に重要なものは「企業理念」だと捉えています。企業理念を浸透させ組織風土を作ることで、従業員の成長や幸せを育てられると考えています。

「世界一幸せな会社」を推進する人材戦略

働き方改革とダイバーシティ&インクルージョン、そしてキャリア自律を人材戦略の柱に掲げています。上司と部下のコミュニケーションを活性化させるため、1on1のキャリア面談を実施。仕事の話だけで終わらないよう、面談を担当する上司2,500人に事前に動画研修を行っています。1on1キャリア面談の場が、働き方や仲間、ライフスタイルなどに触れる機会となり、充実した時間になるよう取り組んでいます。

4.企業にとってもメリットの多いウェルビーイング

企業にとってウェルビーイングはどれほど重要で、どのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか。

健康経営の推進

経済産業省では、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」としています。従業員の健康管理に取り組むことを投資と考え、業績向上に結びつける考え方です。

大手企業やスタートアップをはじめとして、福利厚生の充実や柔軟な働き方を認める形で健康経営を目指す企業が増えつつあります。

ウェルビーイングは健康増進だけでなく、その概念はモチベーション管理など精神面にも及びます。ウェルビーイングを推進することは、同時に健康経営にもつながるでしょう。

EVP(従業員価値提案)の向上

EVPはEmployee Value Propositionの略で「従業員価値提案」とも呼ばれ、企業が従業員あるいは求職者に提示する価値のことです。昨今、EVPを設定している企業としていない企業では、人材活用や採用などにおいて大きな差が生じつつあります。

ウェルビーイングを推進することは、EVPの向上にもつながります。EVPが高まることによって、従業員に対してだけでなく、人材採用においても好影響が期待できるでしょう。

離職率の低下やリテンション向上

従業員のウェルビーイングを定期的に計測することで、離職率の低下やリテンションに役立てることができます。ウェルビーイングを推進するには、エンゲージメントサーベイなどをはじめとした現状把握が重要です。

計測はアンケート調査などを行うほか、ウェアラブルデバイスなどを使い、従業員の活動状況や行動範囲などを分析することでも実現可能です。

従業員のコンディションを知ることで、適切なフォローアップ施策を打ちやすくなります。

ワークエンゲージメントの向上

ウェルビーイングの推進は、ワークエンゲージメントの向上にもつなげることができます。従業員の健康だけにフォーカスするのではなく、組織の中において健全に「やりがい」を持って仕事に取り組めているかも重要なポイントです。

例えば、ギャラップ社の12の質問やeNPS(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)などのサーベイで、「やりがい」を可視化するのも有効な手段です。

生産性向上

ウェルビーイングなどの取り組みにより、ワークエンゲージメントが高まれば、組織の生産性向上も期待できます。厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」ではワークエンゲージメントと生産性の相関関係が示されています。

ウェルビーイングの取り組みだけで、ワークエンゲージメントが高められるわけではありませんが、大きな構成要素の一つであることは間違いありません。組織におけるハイパフォーマーを増やすためにも、社員のウェルビーイング促進に取り組むことは、価値があるといえるでしょう。

リモートワークが急速に普及しつつある現状では、オンラインによるコミュニケーション機会をどのようにアレンジするかも重要になってきます。

5.ウェルビーイングを実践するための理論や考え方や手法

ギャラップ社の調査から考え方を学ぶ

上述のギャラップ社はウェルビーイングの構成要素を五つ定義しています。包括的に知ることで、ウェルビーイングへの理解が深まります。

(1)ウェルビーイング五つの要素

Career Well-being

自分の時間の使い方を知り改善することや、好きなことを仕事にすることでキャリアに対する納得感が得られます。

Social Well-being

日々の暮らしの中で深い人間関係と愛情を持つことで、社会生活が充実します。

Financial Well-being

支出や収入の状況をきちんと管理することで、経済的に健康的な状態になれます。

Physical Well-being

心身ともに健康で、物事を成し遂げるのに十分なエネルギーを持っている状態です。

Community Well-being

住んでいる地域のコミュニティーと適切な関わりを持つことは、充実感をもたらします。

(2)ウェルビーイングの二つの判断軸

ギャラップ社はウェルビーイングの度合いを判断する軸として「体験」と「評価」を定義しています。体験と評価の2軸で判断する理由は、それぞれが相互に関与しつつも、異なる概念だからです。

人間は直近にあったことの印象で物事を判断する生き物です。例えば、どれだけ充実した1日だったとしても、最後にたった一つネガティブな体験があるだけで、その日は最悪の1日と評価したりします。

予防医学研究者の石川善樹氏はこのことから、「1日の仕事をどう振り返り終えるかが重要」だとしています。

同氏は一定期間における「To Do」を振り返るのではなく、「To Feel」を振り返ることを推奨しています。よく「どのタスクを終えたか」に意識を向けがちですが、「印象に残ったこと」などを振り返ることで、「評価」が向上するとしています。

ウェルビーイングの三つの側面

科学技術振興機構社会技術研究開発センターが推進する「日本的Wellbeingを促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及」プロジェクトは、ウェルビーイングを三つの側面に分けて解釈しています。

(1)医学的ウェルビーイング

心身がともに健康的な状態であるかどうかを見るのが医学的ウェルビーイングの観点です。健康状態は年に1回受ける健康診断や、ストレスチェックなどで判断できます。自身の健康状態に対して、今までなかったような違和感や不調がないかどうか、普段から関心を持っておくと、いざというときも早期に気付けるでしょう。

(2)快楽主義的ウェルビーイング

気分などの精神的・感情的な状態に関する領域です。自己認知やホルモンの状態・心拍数などの生理的な体の状態を計測することで、自分の精神状態への理解を深められます。気分が落ち込んだときに何をすると気分が良くなるのか覚えておくと、精神的に安定するための一助になります。

(3)持続的ウェルビーイング

持続的ウェルビーイングは、心身ともに自身の総合的な能力を発揮し、意義ややりがいを感じ、気力に満ちて前向きな状態です。近年、この定義のように持続的な自分の状態を捉える観点が主流になっています。

参照:ウェルビーイングな暮らしのためのワークショップマニュアル|「日本的Wellbeingを促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及」プロジェクト

フローの状態(体験)

心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した「フローの状態」とは、何かに熱中して我を忘れる状態のことを指します。ミハイ博士は一流のアーティストやアスリート、科学者などがどのようなときに幸福を感じるかを追及する過程で、フローの状態を発見しました。

フロー状態になるための条件も判明しており、「具体的な目標がある」「目標が達成可能なものである」「進捗が計測可能である」「取り組み自体に価値を感じている」「意識が集中している」などがあります。

このようなフロー状態を体験することで、ウェルビーイングが向上するとされています。

PERMA理論

「PERMA理論」は心理学者マーティン・セリグマンが提唱している、ウェルビーイングの多面的モデルです。同博士はウェルビーイングの向上に関与する五つの要素を、下記のように定義しています。

(1)Positive emotion(ポジティブ感情)

うれしい・おもしろい・楽しい・感動・感激・感謝・希望など、前向きでポジティブな気持ちや感情を持っている状態のことを指します。

(2)Engagement(物事へ没頭する)

仕事や趣味などを問わず、時間を忘れて何かに没頭し、積極的に関わっている状態を指します。

(3)Relationship(他者との良好な関係)

自分以外の他者から、何かしらの援助を受けたり、自分が誰かに何かを与えたりすることで、他者と良好な関係を構築している状態です。

(4)Meaning(生きる意味や意義の自覚)

自分は何のために生きているのかというテーマに自覚的であること、生きがいなどを意識している状態です。

(5)Accomplishment(達成感)

プライベートや仕事といった領域を問わず、何かを達成することにより充実感を得られている状態です。

6.ウェルビーイングを学べる本・書籍

ウェルビーイングについて知識を深めたいと思ったときに役立つ書籍をまとめました。参考にしてみてください。

ウェルビーイングを企業経営に生かす「ウェルビーイング経営」を解説!

武蔵大学経営学科教授の森永さんの連載です。ウェルビーイングをどのように経営に生かすのか、学術的な観点からていねいに解説していくコーナーとなっています。

森永教授の「ウェルビーイング経営」研究室【第1回】 ウェルビーイング経営の探求:旅のはじまり

企画・編集:『日本の人事部』編集部

HRペディア「人事辞典」

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東京都 コンサルタント・シンクタンク 2020/12/12

 

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