雇用保険の加入条件・範囲
雇用保険とは、会社が従業員に対して掛ける保険のことで、労働保険の一種です。雇用保険には加入条件があり、これを満たす従業員は雇用保険の加入者になることが必要です。会社としては、雇用保険が適用される「適用事業所」であるかどうかを把握する必要があります。65歳以上の雇用保険に関しては、近年改正や制度の新設があったため、変更内容を確認することが重要です。
雇用保険の加入条件・範囲
厚生労働省は雇用保険の加入条件を以下のように定めています。
- (1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。
- 期間の定めがなく雇用される場合
- 雇用期間が31日以上である場合
- 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
- 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 (注)
[(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。]
- (2)1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
(1)と(2)を満たす場合には、従業員は雇用保険の加入者になることが必要です。条件を満たす場合には、会社の住所を管轄するハローワークに届け出をします。従業員が雇用保険の被保険者となった月の翌月10日が締め切りです。
「適用事業所」の定義とは
続いて、雇用保険が適用される「適用事業所」について紹介します。
原則として、一人でも従業員がいる場合には雇用保険に入る必要があります。これは、「当然適用事業」と呼ばれています。ほとんどの場合、当然適用事業に当てはまるでしょう。
一方で、例外もあります。「暫定任意適用事業」と呼ばれるもので、従業員5人未満の個人経営の農林水産業などが当てはまります。暫定任意適用事業については、従業員の過半数が意思を示せば雇用保険を適用することになります。
農林水産の具体例は、以下の通りです。
- 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業(いわゆる農業、林業と称せられるすべての事業)
- 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業
被保険者の種類
雇用保険の被保険者には、以下の四つの種類があります。
・一般被保険者
・短期雇用特例被保険者
・日雇労働被保険者
・高年齢被保険者
一般被保険者
一般被保険者とは、「短期雇用特例被保険者」「日雇労働被保険者」「高年齢被保険者」のいずれにも当てはまらない従業員を指します。基本的には、従業員の大多数が一般被保険者です。パートやアルバイトについても一般被保険者に含まれます。
短期雇用特例被保険者
短期雇用特例被保険者とは、季節的に雇用される人、短期間の雇用に就くことを常態としている人のことを指します。代表的な例として、清酒製造に従事する杜氏が挙げられます。
なお、1年以上の雇用期間が継続した場合には一般被保険者となります。
日雇労働被保険者
30日以内の雇用期間を定めている従業員や、日ごとに雇われる従業員のことを指します。
ただし、連続する2ヵ月間で18日以上雇用される場合や、31日以上連続して雇用する場合には、翌月の初日から一般被保険者や短期雇用特例被保険者になります。
高年齢被保険者
高年齢被保険者とは、65歳以上の被保険者のうち、短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者に該当しない従業員を指します。
被保険者に該当しない場合
会社に勤めていても、雇用保険の被保険者とならない場合があります。法人の取締役、家事使用人、学生、法人の代表者や個人事業主と同居する親族も被保険者には該当しません。
雇用保険の対象は65歳以上に拡大
雇用保険は平成29年に適用範囲の拡大があり、65歳以上も雇用保険の対象となっています。新たに適用範囲に加わった三つについて簡単に紹介します。
高年齢求職者給付金
65歳以上の労働者も雇用保険の対象となることにより定められた給付金です。離職時に受給資格を満たしていると、65歳未満の方と同様に給付金を受けられます。
人事担当者としては、以下の受給資格を押さえておくとよいでしょう。
- 離職していること
- 積極的に就職する意思があり、いつでも就職できるが仕事が見つからない状態にあること
- 離職前1年間(病気やけが等により働けない期間があった場合はその期間を加えることができることがあります)に雇用保険に加入していた期間が通算して6か月以上(賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算)あること
教育訓練給付金
教育訓練給付金については平成29年1月1日以降、対象が広がっています。高年齢被保険者や、高年齢被保険者(高年齢継続被保険者)として離職した翌日以降、教育訓練が開始されるまで1年以内の場合も対象です。
育児休業給付金・介護休業給付金
育児休業や介護休業給付金についても、高年齢被保険者が要件を満たせば支給の対象になります。
雇用保険のマルチジョブホルダー制度
65歳以上の労働者について、令和4年1月1日から「マルチジョブホルダー制度」が新設されました。
マルチジョブホルダー制度
複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者が、2つの事業所での勤務を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であり、2つの事業所の雇用見込みが31日以上であれば、本人がハローワークに申出を行うことで雇用保険の被保険者になることができる制度です。
このように、主たる事業所での労働条件が雇用保険の要件を満たさない人にも、雇用保険の被保険者になる道が設けられました。
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