顧客企業の経営指標の改善にコミットする
定量分析をベースとした科学的人事コンサルティング
株式会社トランストラクチャ 代表取締役 シニアパートナー
林明文さん
人事コンサルティングの世界に新たなメソッドを導入
トランストラクチャでは、どのような方向性でコンサルティングを行おうとお考えになったのでしょうか。
最初に、顧客となる企業を、おおよそ従業員数300~3000人の規模と定めました。それ以上の大企業になるとしっかりした人事があって、人事企画などの機能も持っています。逆に100人以下の規模であれば、経営者が直接社員に接しているはずなので、人事はそれほど充実してなくてもいい。ちょうどその中間の規模である中堅企業が、「仕組みとしての人事」を使って、管理していかなくてはならないのです。しかし、これくらいの企業が専門的な知識や経験を持った人事の陣容を整えるのは、かなり難しいんですね。こうした中堅規模の企業は、日本に数多くあります。「人事で何か課題がありますか」と聞けば、たぶんそのほとんどが「ある」と答えるでしょう。非常に大きい人事コンサルティングの需要があるわけです。
ところが、人事コンサルティング業界、つまり供給側の体制はほとんど整っていません。私たちは日本企業の中核である中堅企業に対して、できるだけ多くの充実したサービスを提供していきたい。そんな思いで当社を設立しました。
貴社のコンサルティングの特色をお教えください。
数多くの中堅企業に、高品質のサービスを提供していくというコンセプトですから、コンサルタント個人の経験・力量に依拠するビジネスモデルはとれません。そのために徹底しているのが、企業データを定量的に分析して、数字によって課題を「見える化」していく手法です。そのため、企業を分析する際には、十分な分析をした上でインタビューを行います。逆に言えばインタビューだけで判断はしないということです。企業の状態を正しく知るには、当事者の話を聞くよりもデータを見たほうがいい、という考え方なのです。
たとえば医師をイメージしてください。患者の体温も血圧も調べない、血液検査もしない医師はいないはずです。検査データを見ることが、病状を把握する最も近道だからです。そして、検査やその分析の段階では、ベテランでも新人でもアウトプットにほとんど差はありません。それはコンサルティングでも同様なのですが、日本の人事コンサルティング業界ではこうした手法がほとんどとられてきませんでした。人の採用や解雇といった重大なことに関わるのに、客観的なデータを使わないことなどありえません。ここが当社のコンサルティングの大きな特色だと思っています。
定量分析を人事コンサルティングに導入されたのは、貴社独自のアイデアなのですか。
もともとトーマツ時代の人事コンサルティングが、そのような手法だったのです。リストラの案件ならば、「企業をどういう形に再生するのか」「これだけのリストラをすればどれだけの効果があるのか」といったことを顧客に理解してもらわないといけません。しかし顧客は、経営者、株主、親会社、銀行などの人たちですから、人事用語を話してもわからないわけです。そこで共通言語である数字、データを重視するやり方になっていきました。また、私たち自身も若く経験が少なかったので、説得力を持たせるためには客観的な数字を見せていくしかありませんでした。
所属されているコンサルタントの方々にもその考え方は共有されている、ということですね。
その通りです。そして、データ重視と同時に、私たちのもう一つの特色が完全分業制のシステムであること。一般的にコンサルタントといえば、個人の経験・力量で顧客に対応するイメージがあるかもしれませんが、弊社では「調査担当」「営業担当」「制度設計担当」「導入支援担当」「教育担当」といったメンバーが集まり、一つのプロジェクトとして動かしていく方法を採用しています。現在、総勢約60人で、年間およそ200社の顧客に対応していますが、プロセス全体をコントロールすることを通じて顧客に満足していただく「アカウントマネジメント」こそ、最大の価値であると意識しています。
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。