人事担当者のお悩みにお答えします。
こんな時どうする? ~ メンタルヘルス相談室
「メンタルヘルス対策」は、あらゆる企業にとって重要な人事施策のひとつ。しかし、担当者の多くは、自社の対策が有効に機能しているかどうかについて、頭を悩ませていることだろう。対策は実施しているが、メンタル不調者が増えているという事実に直面し、現在の取り組み自体を見直している企業も多いはず。それでは、企業として、今後どのような対策を行っていけばいいのか。今回は、企業からのお悩みにお答えしていきながら、「対策検討時」「対策導入時」「対策展開時」のそれぞれのフェーズごとの、メンタルヘルス対策について考えていきたい。
Case1:メンタルヘルス対策「検討時」
中途入社のメンタル不調者が急増…
こんな時どうすればいい?
当社では業務拡大に伴い、ここ数年は中途採用者数を増やしていますが、中途入社の社員がメンタル不調を起こすケースが、ここへきて頻発しています。中途入社の社員に対しては、キャリアパスに沿ったスキルアップ研修など、OJTとOFF-JTの両面でフォロー体制を整えていますが、ある一定のラインを超えられる社員と、その前に辞めてしまう社員とに二分される現象が起こっています。早期に退職する原因のひとつは、メンタル不調のようですが、これといった対策を立てることができずに困っています。このような場合には、どうすれば良いのでしょうか。
(相談者:愛知/食品メーカー)
まず確認しておきたいのは、中途社員がメンタル不調になった理由について、正確に把握できているかどうか、ということです。新しい職場環境は、中途入社の社員にとって、大きなストレスの原因になります。まずは、仕事のやり方や職場の人間関係など、職場環境の変化によって生じるさまざまな事柄に、早く慣れてもらう必要があります。そして、状況を改善していくためには、新しい環境に適応できず、メンタル不調に陥ってしまう傾向を全体的に把握することです。環境に適応していく上で、つまずきやすい「ポイント」や「時期」を見つけて、具体的な対策を講じていく必要があります。
例えば、「組織ストレス診断」を全社で行い、中途社員とその他の社員との結果を比較して、仕事の負荷、コントロール、周囲のサポートなど、一体どこに原因があるのか、確認してみてはいかがでしょうか。診断結果を基にして、中途社員がメンタル不調を訴えることが多いタイミングの前に、対象者に絞って「リラクゼーション方法」や「アサーションスキル」を習得できるセルフケア研修を実施したり、カウンセリングの窓口を開設したりするなど…。このような対策が既にできていれば、フォローアップの一環として、あらかじめ面談を設定することで、効果的な予防策を展開することも可能でしょう。
Case2:メンタルヘルス対策「導入時」
忙しくて、なかなか対策を推進できない…
何からはじめればいいの?
当社では、昨年からメンタルヘルス対策に本腰を入れて取り組むようになりました。しかし、人事総務部は部長を含めて4名しかいないため、対策を十分に推進できていない状況です。現場からは、「メンタル不調者が増えている」との声も多く、早めに対策を講じたいのですが、他の業務に忙殺されており、どこからテコ入れしていくべきなのか、考えられていません。そんな中、ある部署のメンタル不調者への早急な対応が必要になり、人事総務部長自ら、他の業務を一旦ストップさせて、取り組んでいくことになりました。そこで、今後は何かが起こってから対処するのではなく、予防の仕組み作りまでを念頭に置いた体制を目指したいと考えています。何から手をつけていけば良いのでしょうか。
(相談者:大阪/情報サービス業)
育成が難しい場合には、外部リソースの活用も
メンタルヘルス対策には、全体的な対策の立案や推進だけではなく、メンタル不調者への突発的な対応が必要になる場面が多々あります。そのため、メンタルヘルス対策の実務担当者には、部長・課長クラスではなく、どちらかというと動きやすい一般職・スタッフ職の方が向いているように思います。実際、企業の実例を見ても、一般職・スタッフ職が担当していることが多いようです。メンタルヘルス対策の第一歩としては、社内の意識向上が挙げられますが、そのための施策として、定期的な情報配信や利用促進活動など、地道で時間のかかるルーティン業務が数多くあります。このような活動に関しても、やはり現場に近い一般職・スタッフ職の方がアイデアを出しやすく、展開しやすいようです。
管理職でなければ、動きづらいケースもあるかもしれませんが、担当者が突発的な事態にも対処できるように、専門性を高めるための教育の機会と裁量権を与えておくことです。合わせて、管理職が全体的な方向性について、適宜確認していれば、十分に機能していくはずです。まずは、「動ける」担当者を育成し、対応が後手に回らないような予防策まで検討・実施できる体制作りから始めてみましょう。
担当者を育成する余裕がないのであれば、外部のEAPサービス提供企業やメンタルヘルス対策を取り扱う企業を活用するのも有効です。地道なPR活動のサポートだけでなく、職場復帰の支援やCISM(事故や地震などの緊急事態における心のケア対応)といったサービスを提供している企業もあります。問題点の整理から対策の展開方法まで、本気になって一緒に取り組んでくれる企業を探し、外部リソースとして積極的に活用していきましょう。
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Case3:メンタルヘルス対策「展開時」
個々の施策は順調だが、有機的に展開できていない
…今後どうすればいい?
当社では、相談窓口の開設やセルフケア・ラインケア研修など、これまで一通りのメンタルヘルス対策を実施してきました。個々の施策を地道に積み重ねてきた結果、社員のメンタルヘルスに対する意識も、向上しているように思います。しかし、施策全体を見た時、それぞれが効果的に組み合わさって展開していないことについては、問題だと感じています。そこで、これまでの施策を一旦見直し、どのように個々の施策を有機的に結び付けて展開していくべきか、検討しています。何をポイントとして考えれば良いのでしょうか。
(相談者:東京/商社)
メンタルヘルス対策で難しいのは、個人によってメンタル不調になるタイミングが異なる、ということです。現在サポートが必要ではない人でも、3ヵ月後にはメンタルダウンして、サポートが必要になるかもしれません。その時に、確実なサポートを得られるように、対策全般をデザインしておく必要があります。
同じ企業内でも、職場によって必要なメンタルヘルス対策は異なることも、対策を推進する上で難しいポイントです。メンタルヘルス対策を推進するために、全社共通の目標を設定することも重要ですが、職場ごとに働き方や雰囲気は異なるため、それぞれの特徴を考慮に入れた上での目標設定も必要です。
必要な人が必要な時にサポートを受けられるようにするには、まず、自分または周囲のストレスの変化に、気づけるようになることでしょう。これを目的とすれば、研修や情報提供の頻度、内容、目標設定が自ずと明確になります。また、職場ごとの特徴を把握するには、現場にヒアリングした上で仮説を立てた後、組織ストレス診断を活用して、仮説の裏づけを定量情報として把握しておくのが良いでしょう。職場ごとの雰囲気が診断結果に現れますので、漠然とその結果を確認するのではなく、「どの職場に何が必要か」という視点で分析してみてはいかがでしょうか。
【Epilogue】
「メンタルヘルス対策」は、定量的に測れない面が多く、問題も複雑に絡み合っているため、どこにポイントがあるのか、非常に分かりづらい。実際、人事担当者の皆様も、何から着手し、何を目標として対策を推進していけばいいのか、戸惑うことが多いだろう。そんな時こそ、今回取り上げたさまざまな事例を参考にして欲しい。まずは、自社の「現状」を把握することから始めるべきだろう。その上で、今後取り組んでいく施策を見極め、具体的な目標を設定し、施策推進のために最善な体制を作り上げていく…。企業と社員の一人ひとりが、真剣にメンタルヘルス問題について考え、積極的に取り組んでいく姿勢が求められる。
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