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人事マネジメント「解体新書」 第24回
採用力を高めるための「面接」術とは?
~自社アピールと見極めのスキル

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

昨年後半からの急激な景気悪化に伴い、「就職氷河期」の再来が叫ばれているが、新卒採用に関しては、「バブル期」のように極端な減らし方をする企業は少ない。これは、バブル崩壊後の新卒採用抑制によって組織構成上にひずみが生じ、さまざまな弊害が生まれた経験を多くの企業が持っているからである。新卒採用は景況に関わりなく、一定数を採り続ける傾向はまだまだ根強いということか。そんな中で、応募者が志望を固める理由として、「面接者」からの影響を挙げるケースが多くなっている。ネットで必要な情報が入る分、決め手となるのは学生と直に接する「人」となるからだ。それに伴い、面接担当者にはこれまで以上の役割が求められるようになってきた。今回は、面接の基本を押さえるとともに、採用力を高めるために、いかに自社の魅力をアピールし、見極めのジャッジを行うかを整理していく。

採用の現場で起きていること

■なぜ、「採用ミスマッチ」が起きるのか?

景況の悪化によって、現在、多くの企業がリストラを進めている。その一方で、事業環境の変化に対応した新たな人材の確保、早期戦力化の実現、そして定着率の向上といった人的インフラを確立することが、今後、少子高齢化を迎えるにあたって、企業には重要な課題となっている。

当然のことだが、「採用ミスマッチ」は避けなくてはならない。ところが、バブル採用から少数精鋭、厳選採用へと状況が移ってきているにも関わらず、新卒者が入社後3年間で3割も辞めてしまうというミスマッチの実態が依然としてある。これにはまず、学生側の「仕事への理解が浅いこと」あるいは「企業の個性(風土・文化)に対する理解が不十分であること」などを指摘することができる。

一方、企業側を考えてみた場合にはどうか?厳しい経営環境の観点から、採用選考のプロセスが合理化され、担当者の負荷が大きくなっている。何より1人当たりにかけられる時間が少ない。また、採用選考の軸として「大学ブランド」や「能力試験」を重視する傾向が強まっていく中で、自社の求める人物像に合致した人物が採用できていない。実際問題、本来であれば採用するべき人材を採りこぼしているケースも少なくないという。

■なぜ、「面接」なのか?

この結果の根底には、「自社の求める人物要件を明確化できていない」「求める人物要件が社内で共有できていない」といった原因がある。事実、採用ターゲットが明確にならないまま選考を行ったために、学生に対して強い動機付けを行うことができず、単なる“数合わせ”の母集団形成になってしまっている企業がある。力を入れた割には、効果的な募集広告が展開できないといったジレンマが起きているのだ。

これを防ぐには、単なる数集めでなく、自社が欲しいと思う「求める人物像」を明確にし、それに合致した学生を母集団として集めることで「質」を高めていく、というアプローチにまとめることができる。

事実、いくら採用アウトソーサーに頼んだとしても、限界がある。たとえ優秀な学生であっても、自社に合うかどうかは別の問題なのだから。これはもう、自分で見て判断するしかないだろう。

こうした状況を考えると、やはり採用選考においては「人」の目を介した「面接」が大きな比重を占めてくる、というのもうなずける話である。大量採用にせよ厳選採用にせよ、近年、採用プロセスの中で面接が重要視されるのは、このような理由による。

面接の実際(1)目的と方法

2009年が明け、会社説明会と称して、実質的な採用選考を行う企業が多くなっている。しかし、面接の基本を理解しない上で選考に当たるのは、運転免許を持たずに車に乗るようなものである。まず、面接のイロハとして、その目的とどのような方法があるのかについて、記していく。

■面接の「目的」

そもそも面接とは、応募者とのフェイス・トゥ・フェイスによる口頭での質疑応答や、質疑応答の中での対応を通して、経歴や書類などでは伺い知ることのできない個人的な「特性」を把握することを大きな目的としている。さらに、入社後のミスマッチを起こさないための「確認」や「すり合わせ」を行う大切な「場」でもある。

2009年が明け、会社説明会と称して、実質的な採用選考を行う企業が多くなっている。しかし、面接の基本を理解しない上で選考に当たるのは、運転免許を持たずに車に乗るようなものである。まず、面接のイロハとして、その目的とどのような方法があるのかについて、記していく。 ||■面接の「目的」|| そもそも面接とは、応募者とのフェイス・トゥ・フェイスによる口頭での質疑応答や、質疑応答の中での対応を通して、経歴や書類などでは伺い知ることのできない個人的な「特性」を把握することを大きな目的としている。さらに、入社後のミスマッチを起こさないための「確認」や「すり合わせ」を行う大切な「場」でもある。

【面接の「目的」】

1.応募者の個人的「特性」を把握し、採用するにふさわしい人物かどうかを判定する
・職務に必要な能力、知識、スキル、適性などを備えているか(求める人材要件に合致しているか)
・自社のビジョンや経営理念、社風・風土に適しているか
・自社にふさわしい人柄・性格か>

2.応募者に仕事の内容と労働条件を伝え、理解を得る
・事前選考での不明な点、掘り下げたい点なども聞き、再確認する ・採用条件や労働条件などについて話し合い、相互理解を得る

3.応募者に会社の社風、経営理念、経営方針を伝え、理解を得る
・入社の決心を固める説得の「場」とする

4.採用後の配属部門、担当業務に関する情報を伝える
・正しい情報を伝え、入社後のミスマッチを防ぐ

■面接の「方法」

面接には、「個人面接(応募者が1人)」と「集団面接(応募者が2人以上)」がある。それぞれ、メリットとデメリットがあるので、相互をうまく組み合わせて行うことが望ましい。

●個人面接

2009年が明け、会社説明会と称して、実質的な採用選考を行う企業が多くなっている。しかし、面接の基本を理解しない上で選考に当たるのは、運転免許を持たずに車に乗るようなものである。まず、面接のイロハとして、その目的とどのような方法があるのかについて、記していく。 ||■面接の「目的」|| そもそも面接とは、応募者とのフェイス・トゥ・フェイスによる口頭での質疑応答や、質疑応答の中での対応を通して、経歴や書類などでは伺い知ることのできない個人的な「特性」を把握することを大きな目的としている。さらに、入社後のミスマッチを起こさないための「確認」や「すり合わせ」を行う大切な「場」でもある。

【メリット】

  • 相手が1人なので、相手に合わせて自由な形式で質問することができる
  • 相手の能力や関心の度合い、反応などによって、より突っ込んだ質問ができる
  • 面接の日時や場所などを、比較的自由にセッティングできる

【デメリット】

  • 応募者が過度に緊張する
  • 発言が慎重になる
  • 応募者の本音が出にくい

個人面接を行う際には、被面接者が“リラックス”できる雰囲気を作ること(明るい部屋を用意する、飲み物を出す、穏やかな口調で話しかける、「趣味」など答えやすい質問からスタートする、など)を第一に考え、応募者の緊張を解きほぐしてから、本題に入るようにしていく。

●集団面接

*                *

2009年が明け、会社説明会と称して、実質的な採用選考を行う企業が多くなっている。しかし、面接の基本を理解しない上で選考に当たるのは、運転免許を持たずに車に乗るようなものである。まず、面接のイロハとして、その目的とどのような方法があるのかについて、記していく。 ||■面接の「目的」|| そもそも面接とは、応募者とのフェイス・トゥ・フェイスによる口頭での質疑応答や、質疑応答の中での対応を通して、経歴や書類などでは伺い知ることのできない個人的な「特性」を把握することを大きな目的としている。さらに、入社後のミスマッチを起こさないための「確認」や「すり合わせ」を行う大切な「場」でもある。

【メリット】

  • 応募者間の相互比較ができる
  • 評価の際の客観性、公平性を得ることができる
  • 限られた時間の中で、数多くの応募者と面接することができる

【デメリット】

  • 応募者の個人的事情、背景を把握するのが難しい
  • 特定の(興味・関心を持った)応募者に対して、突っ込んだ質問ができない
  • グループ間の比較が難しい

集団面接の良さを引き出すためにも、

  • 応募者全員に関心がある(共通する、回答が可能な)話題を選ぶ
  • 応募者全員に、平等に発言の機会を与える(特定の者のみが長時間発言するようなことのないようにする)
  • 興味や関心を持った者に対しては、別途メールなどで話を聞くようにする
  • 質問者(司会者)と評価者(観察者)とを別に置く

といった工夫が必要だろう。

面接の実際(2)面接者の選出と対応

面接の場面では、必ずしも面接の専門家が担当するわけではない。普段は各自の担当業務を行い、採用選考のときに、全社的な対応が必要ということで駆り出されるケースのほうが多い。だからこそ、面接者の選出とその教育が大切になってくる。

採用面接者として最も大切なことは、応募者と対等の立場に立って接するということである。面接する側が横柄な態度を取っていると、面接される側は萎縮してしまう。また、自分の長所を見せることなく終わってしまうかもしれないし、応募者に対して不信感を抱かせる結果にもなりかねない。以下、採用面接者の選出と、心掛けるべきポイントについて記していく。

■面接者の「選出」に当たって

採用面接者が的確な条件を備えているかどうかは、採用基準の上からも、応募者に与える印象からも見逃せない問題である。その意味でも、面接に当たる人物には最低限、以下のような要件を備えていることが求められる。

【面接者に求められる要件】

  • 自社の経営方針、ビジョンをよく理解し、それを分かりやすく説明できる
  • 業界の事情や職務全般に通じている
  • 人間関係に通じている
  • 精神的にバランスが取れている
  • 要領を得ない質問でも、忍耐強く聞く姿勢を持っている
  • 他人に対し親切で、思いやりがある
  • 秘密が守れる

■面接に当たっての「心構え」

面接を行う者が事前に心掛けておくべき事項は多々あるが、その基本となる姿勢についてまとめてみた。

【面接に当たっての心構え】

  • 事実に即して行動などを聞く
  • 抽象的な質問や価値観などの質問からは、論理的能力は分かっても、人物・人柄など、本当の姿は分かりにくい。あくまで、事実に即した行動を聞くようにする
  • 話しやすい雰囲気作り、答えやすい質問設定を心がける
  • 応募者は緊張状態にある。いきなり核心を突く質問から入らないようにする
  • まず企業(面接)側から素直に
  • 応募者の多くは「給料や残業のことを露骨に聞いては不利だ」と考えている。こうした質問は、企業側から切り出していくことが大切である
  • 態度、言動、表情に気を付ける
  • 仮に「不合格」と判断しても、なげやりな態度や言動、面倒くさそうな表情は慎む

■面接に対する「考え方」と、「方法の統一」

面接候補者に対する事前の打ち合わせも重要である。打ち合わせでは、面接に対する基本的な考え方(ポリシー)と、方法の統一について確認し、すり合わせ作業を行うことが大切である。

【面接に対する考え方】

  • 特定項目の印象や全体的な感じによって、他の評価項目が左右されてはならない(ハロー効果)
  • 面接者の「好き嫌い」や「先入観」を排する
  • 評価を「普通」「どちらともいえない」など、曖昧な評価に集中することなく、できるだけ「差」を付けるよう評価する

【面接方法の統一】

  • 「質問」と「評定項目」を対応させるか、対応させないか
  • 「質問例」は予め用意するか、臨機応変に対応するか
  • 応募者への「勧誘的発言」を交えるか、否か
  • 圧迫的面接法(応募者の弱みを捉えて質問する方法。その反応や態度を観察する)を用いるか、否か
  • 「面接時間」の限度をどのように設定するか
  • 同じ場にいる面接者同士で、「面接終了のサイン」をどのように出すか

■質問項目とそのポイント

面接は限られた時間で行わなければならない。その中で、応募者の本質をつかむための質問項目とポイントを整理してみた。

【質問項目とポイント】

  1. 導入
    まずは応募者の今朝の行動など、話しやすい話題から入り、双方がリラックスして話せる雰囲気を作る
  2. 大学生活について
    大学生活の流れを順に追って聞いていく、あるいは何かのテーマについて絞って聞くのもよい。そこでの課題や成果を聞き、応募者の能力の範囲(コンピテンシー)を確認することが重要。自己紹介させるのもよい
  3. 志望理由
    うわべだけでなく、本音を聞き出す。「なぜ?どうして?」という問い掛けにより質問していき、相手を納得させるレベルにあるかどうかを確認する
  4. 会社の印象
    自社の事業展開などを説明し、その印象を聞く。事前に会社説明会を行っている場合は、省略してもよい
  5. 希望職種
    募集職種を明記していても、必ず聞く
  6. キャリア目標
    目標とする人物像やステップアップの具体的なイメージを聞く
  7. 質疑応答
    誤解のないよう、採用条件をすり合わせていく
  8. 他社との併願状況
    「これは」と思う人なら、他社との併願状況や面接のスケジュールをそれとなく聞く

■法律上、守らなければならない事項

応募者の面接に当たる者にも守らなくてはならない事項がある。次のような質問をすることは、「憲法」で保障された「基本的人権」を犯す恐れがあるので、聞いてはならない。

【基本的人権を侵す質問】

  • 本籍地や居住地に関する質問
  • 家族の職業や収入、住宅事情、資産などに関する質問
  • 思想や支持政党の有無、加入の宗教団体や尊敬する人物に関する質問

採用を断る時も、広告内容に反するような理由を付けたり、相手を傷付けるような断り方をしないよう注意が必要である。主観的な理由や、身体的な特徴を理由に断ることはあってはならない。また、「女性だから」「男性だから」という理由で断ったり、女性のみに「自宅通勤」を強要することは、「男女雇用機会均等法」に違反する。

面接の実際(3)手順と質問の工夫

ここでは、面接を進めていく際の具体的な事項について解説していく。

■基本的な「流れ」

一般的に、面接の基本的な流れは以下のようになっている。最低限、このフローは頭に入れておく。

【面接の流れ】

1.入室・挨拶
・あわてて面接の場所を片付けないよう、予め準備しておく
・応募者の緊張を和らげる話題を交えてから始める

2.基本的な質問から始める
・履歴書を元に、これまでの経歴、応募動機から質問を始める

3.必要情報を提供
・会社概要を説明する
・採用する職種の具体的な仕事内容を説明する

4.応募者に質問
・「面接評価票(シート)」を元に、応募者に質問する
・受け答えなどを細かくチェックする

5.応募者からの質問
・何か疑問や不安がないか尋ねる
・合否を尋ねられても、その場では答えない
・合否に関しては、連絡方法と時期を伝えるに止める

6.退室
・来社をねぎらう
・応募者は「顧客」であるということを忘れない

■「評価基準」の統一と共有化

実際に面接を行う際に、「評価基準」が担当者によって異なると、採用の公平性が保てなくなるばかりでなく、採用した社員の能力や意欲に、大きなバラつきが生じてしまう。そういうことのないよう、事前に「評価基準」の統一と共有化を図っておく必要がある。

【「評価基準」の統一と共有化】

  • どういう人材が望ましいのかをきちんと定める(自社が求める人材像を明確化する)
  • その人材が持つ要件は何かを具体化する
  • (職務遂行上の適性と能力を判定するという観点に立ち、合理的な評価基準を決める)
  • 人材要件を元に、簡潔な「面接基準票」を作成する
  • 面接関係者が評価基準の統一・共有化をできるようにする

ポイントはやはり、面接に当たる関係者に「評価基準」を周知徹底し、統一・共有化を図ることである。なかなか時間を割くことは難しいかもしれないが、評価のすり合わせのための「研修」を行いたい。

■「評価ミス」を避ける

面接では、応募者の容姿や外見、雰囲気、話術などに惑わされて「実態」を見損なう危険性がある。実際問題、第一印象が良いと、思わず即断してしまうことも少なくない。また、人それぞれに好みや先入観というものがある。さらには、面接担当者がその時の気分で相手を評価してしまうこともあるだろう。だからこそ、「評価基準」の共有化・統一を図ったり、何回かに分けて面接を行うのである。

「評価ミス」をしないためには、以下のようなことを考えに入れておく必要がある。

【「評価ミス」を避けるために】

  • 2人以上の社員によって面接を行う
  • 評価が分かれた場合には、他の社員による面接を行う
  • 上位者による面接の機会をセッティングして、上位者の判断に委ねる
  • 多数決で採否を決定する

■「質問」を分担する

面接を効率的に行う上でも、面接者が2人以上いる場合には、予め「質問」の分担を決めておく。そうしておかないと、質問が重複したり、質問と質問の間に空白が生じたりするからだ。あるいは、予め代表者を決めておき、その後他の面接者が追加的に補充質問をするというやり方でも構わない。

■「直後」に評価する

基本的に、面接は「観察」による評価なので、「最初の印象」を大切にする必要がある。その意味でも、面接後は時間を空けずに、直ちに決められた評価基準の下、公平かつ客観的に評価を行う。時間が経つと、印象がどんどん薄れてしまい、その結果、ありもしない余計なことに影響を受け、評価が正しくできなくなってしまうことがある。

■適切な「場所」で行う

面接を成功させるためには、静かで、清潔で、明るくかつ落ち着いた雰囲気の下で、行うことが必要である。そうした状況にある「別室」を用意すると同時に、以下のようなことがないようにする。

【面接場所としてふさわしくない状況】

  • 近くを社員が行き来する
  • 人が出入りする
  • 騒音でうるさい
  • 近くに置かれた電話が鳴る、その都度面接者が中座する(長電話する)
  • 机の上に不必要なモノが置かれている

■誠実、謙虚な「態度」で臨む

面接に当たる者が乱暴な口の聞き方をしたり、横柄な態度を取ったり、常識外れの発言をすると、会社そのもののレベルが問われてしまう。以下のような行動は慎しんで、誠実かつ謙虚な態度で面接に臨むようにする。

【慎むべき行為・態度】

  • 乱暴な口の利き方をしない
  • 面接してやる、採用してやるという態度を取らない
  • 応募者を見下す態度を取らない
  • 学校名で応募者の能力を判断しない(差別しない)
  • 自分の価値観や考えを一方的に話さない、応募者に押し付けない

■応募者の「考え」を聞く、「傾聴」する

面接は、応募者に対してさまざまな質問をし、その回答によって採用するにふさわしいかどうかを判断するものである。そういう意味では、面接はすべからく「傾聴」である、ということができるだろう。ゆえに、会社側からの質問だけで終わらせることは好ましくない。むしろ、積極的に応募者の気持ち(希望・意見)を聞く、という姿勢が重要である。そのためにも、以下のような配慮は欠かさないようにする。

【望まれる「傾聴」の姿勢】

  • 応募者から会社への要望を聞く(ただし、必ずしも全てに対して即答しなくてもいい)
  • 補足説明、発言の機会を与える

■自社を「アピール」するには

欲しいと思う学生に対して会社の魅力を伝えていくには、相手にとって魅力と感じるような視点から、具体的な内容を伝えていくことである。これまで傾聴し、ヒアリングしてきた情報を元に、本人の志向に合致するような話を中心にして、企業の魅力を打ち出していく。相手がどのようなことを基準に会社を選ぼうとしているのかをしっかりと見極めた上で、相手の志向に合う話をしていくことである。

そのためには、自社の魅力を洗い出し、その特長を整理し、自分の言葉で語れるようにしておきたい。企業の魅力の洗い出しについては、「組織の持つ魅力」「仕事の魅力」「風土としての魅力」「構成員の魅力」「労働条件の魅力」「自己実現の魅力」など、人事部側でいくつかの切り口を事前に用意しておくことだ。

■「労働条件」を適切に伝える

近年、採用のミスマッチが叫ばれているが、これも入社前に期待していた「労働条件」と、入社後のそれとが違うことが、大きな理由となっている。入社前に考えていた労働条件と実際が異なれば、誰もが失望する。しかも、期待のレベルが高ければ高いほど、失望の度合いも大きくなる。そうならないためにも、面接においては採用後の労働条件はもとより、仕事の具体的な内容をきちんと伝えることが不可欠である。

■「質問」は「人材要件」「コンピテンシー」から具体的に考える(=見極めのスキル)

大切なのは、応募者の何を見るかを面接者が正しく理解し、判断できるスキルを身に付けることである。さらに、最近の特徴として、「5年後、10年後のキャリアプランを語らせる」ことを主眼に置いた企業が増えている。これなどは、自立的な人材を求めるがゆえに、「能動的に行動できる人材であるかどうかを確認する」ための質問と言える。その意味でも新卒に対して、自社の求める「人材要件」「コンピテンシー」から質問を考えるのは有効なアプローチである。

質問を考える際には、能力の高い人が面談ではどういうことを話すのか、自社なりの「ディクショナリー」として具体的なツールを作成することである。どの企業にも、「職能要件」的なものはあるはずだから、そのレベルが高い人の日頃の行動や、面談ではどのような態度・話をしているかについて情報収集し、幾つかのパターンに整理して、面接の際に活用できるフォーマットに落とし込むことである。

以下に、求められる能力・スキルと、それを持っている人の面談での傾向について、「サンプル」を作成しておいた。こうしたものを参考として、自社なりのヒアリングポイントを作成してみてほしい。これが、面接担当者における「見極めのスキル」となっていく。

●求める能力・スキルと、それを持っている人の面談での傾向(例)
能力・スキル 面談での傾向
(1)達成行動力
  • やり遂げたことについて、複数の具体例をすぐに話すことができる
  • で、具体的な目標を色々な分野で設定する。その目標もチャレンジングである
(2)情報収集力
  • 活字媒体や公表されている情報だけに頼らず、個人的なネットワークを利用した情報収集で、裏づけを取った事実を具体的に話すことができる
(3)分析的思考力
  • 特定の選択の理由を尋ねられた場合、3つ程度の判断基準を間髪入れずに説明できる
  • なぜ特定の対応策を考えたのか、その理由をはっきりと説明できる
(4)対人理解力
  • 面接者の質問の意図をつかむのが早い
  • 過去の出来事を話しているときに、関係者の表情について説明できる
(5)対人理解力
  • 成功の理由として、自分のネットワークを活用した情報収集や協力をあげる
  • 色々な集まりや活動に積極的に参加した経験を、楽しそうに話す
(6)顧客サービス力
  • 相手の状況を把握し、的確な対応を取ったことで相手から感謝された経験を話す
(7)協働力
  • 仲間と一緒になって達成したことを話す際に、自分がやったことだけではなく、仲間がどのような貢献をしてくれたかを説明する
  • 自分がどう目的を達成したかだけではなく、仲間は何ができたのかを話す
(8)リーダーシップ
  • グループ内部での葛藤に際して、メンバーをどう処遇したらよいかを考え、効果的な解決策を見出し、一層の努力・協働力を生み出した経験について自信を持って話す
(9)自信
  • 思うようにいかないことがあっても、最終的にはうまくやり抜いた体験を持っている
  • 過去の失敗を自分の責任として受け止め、失敗の原因を冷静に分析し、成功のための踏み台とした経験を話すことができる
(10)柔軟性
  • 自分の言葉にとらわれず、理解しやすい言葉で、相手のペースで話をする
  • 状況変化に応じて、自分の立場や役割がどのように変化したかを明確に認識している

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

この記事ジャンル 新卒採用

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