24年間リストラなし。お客様満足より社員満足
会社に大切にされている実感があってこそ、社員は力を出せる(前編)
株式会社日本レーザー 代表取締役社長
近藤 宣之さん
リストラを告げて社員に泣かれた……前職時代
なぜそれほどまで、人を大切にするようになったのでしょうか。
私は日本レーザーの元の親会社である日本電子へ24歳の時に入社し、28歳の時に民主的労働組合の委員長になりました。同一企業内に左翼的労組があり、激しい労労紛争が起こりました。血を見るほどの抗争もありましたが、我々は民主的組合運動で会社を守りました。そうして苦しい時代を乗り越えたにもかかわらず、1974年にはドルショックや石油危機で経営が悪化、また放漫経営もあって、企業再建のために1年間に1000名もが会社を去るというリストラに直面したのです。希望退職を募ると言いながら、実質的には解雇です。そうすると、年功序列によって給与が高い、長く勤めている人から肩をたたかれます。「長いこと労働組合費を払ってきたのに、この仕打ちはないよ」と嘆かれたことは忘れられません。
さらに84年にも、アメリカ法人のニュージャージー支社を閉鎖するため、全員解雇を言い渡すという経験をしました。90年にも、ボストン本社で2割の人員削減を行いました。「アメリカの会社とは違って、解雇される心配がないから日本の会社に入ったのに、結局同じじゃないか」と泣いて訴えられました。このように幹部や取締役として散々、リストラを行っていたわけです。
そんな経験から、自分が経営者になったら、絶対に人を大切にしよう、と考えるようになりました。赤字は会社を経営している以上、絶対にあってはならないことですから、会社を赤字にしないのが絶対条件。人を大切にしながら利益を出すことが、私の大命題となったのです。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。