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本誌特別調査
2017年度労働時間総合調査(労務行政研究所)
所定・総実労働時間、休日・休暇、時間外労働等の最新実態と長時間労働削減への取り組み状況

4 時間外労働の実態

時間外労働の実態[図表15]
1人1ヵ月当たり平均18.9時間

16年度の時間外労働時間は、全社または本社の男女計・1人1ヵ月当たりで平均18.9時間となった(時間表示は十進法。以下同じ)。

規模別では、1000人以上21.2時間、300~999人、300人未満それぞれ17.3時間。

また、男女別にも回答があった企業を見ると、男性20.9時間、女性12.0時間で、男性のほうが8.9時間長い。これを年間に換算すると、男性のほうが約107時間長いことになる。

【図表15】時間外労働の実態(全体または本社)
【図表15】時間外労働の実態(全体または本社)

法内残業分を含むか否かで見た実態[図表16]
「法内残業分を含む」ほうが、「含まない」よりも1.0時間長い

1日の所定労働時間を法定労働時間(8時間)より短く設定している場合、終業時刻を超えて実際に働いた時間が8時間に達するまでの、いわゆる「法内残業」が生じることになる。ここでは、[図表15]で見た時間外労働時間を、「法内残業」分を含むか否かに分けて集計し、比較した。

なお、労働基準法で定める割増賃金の支払い義務が生じない「法内残業」については、割増賃金を一切支払わないケース、通常の時間外と同様に支払うケース、通常とは異なる割増率で支払うケースなど、企業によって取り扱いが異なる。ここでは、こうした割増賃金の取り扱いとは関係なく集計している。

[図表16]を見ると、法内残業の取り扱いについて回答があった企業のうち、「所定労働時間は8時間」の109社を除いた116社では、「法内残業分を含む」が96社(82.8%)と8割以上を占める。1ヵ月当たりの時間外労働の平均は、「法内残業分を含む」18.6時間、「法内残業分を含まない」17.6時間で、「含む」ほうが「含まない」よりも1.0時間長い結果となった。なお、そもそも法内残業が発生しないケースである「所定労働時間は8時間」の場合の時間外労働は19.4時間であった。

【図表16】法内残業分を含むか否かで見た時間外労働の実態
【図表16】法内残業分を含むか否かで見た時間外労働の実態

休日労働分を含むか否かで見た実態[図表17]
「休日労働分を含む」ほうが、「含まない」よりも2.4時間長い

休日労働分を含むか否かで時間外労働を見ると、男女計では「休日労働分を含む」が平均19.5時間で、「休日労働分を含まない」は同17.1時間だった。「休日労働分を含む」ほうが、「含まない」よりも2.4時間長い。

男女別に見ると、男性は「休日労働分を含む」21.3時間なのに対し、同「含まない」は19.9時間で、前者が1.4時間長い。女性は「休日労働分を含む」11.9時間、同「含まない」12.4時間で後者が0.5時間長くなっている。

【図表17】休日労働分を含むか否かで見た時間外労働の実態
【図表17】休日労働分を含むか否かで見た時間外労働の実態

業種別の実態[図表18]
陸運の月平均30.1時間が最長

[図表18]に、業種別に見た時間外労働の実態を示した。業種によって集計(回答)社数にバラつきがあり、社数の少ないところでは必ずしもその業種の実態を反映していない場合もあるので、利用の際には留意いただきたい。

最も長いのは陸運の30.1時間で、以下、海・空運29.5時間、建設28.4時間、輸送用機器24.4時間、サービス24.2時間、倉庫・運輸関連23.1時間、情報・通信21.3時間と、長時間の業種は非製造業のほうで多い。

製造業・非製造業別の平均は製造業17.8時間、非製造業19.9時間で、非製造業のほうが2.1時間長い。

【図表18】業種別に見た時間外労働の実態(男女計で1人1ヵ月当たり平均)
【図表18】業種別に見た時間外労働の実態(男女計で1人1ヵ月当たり平均)

■所定労働時間と時間外労働との関係

月間所定労働時間と時間外労働時間との関係を見てみよう。両方のデータが得られた企業を、それぞれの平均値(月間所定労働時間159.08時間、1人1ヵ月当たり時間外労働時間18.9時間)を境に、以下の4パターンに分類した(いずれかが平均値と同じ場合は集計から除く。[図表]なし)。
(1)月間所定労働時間、時間外労働時間とも短い…67社(29.6%)
(2)月間所定労働時間は長く、時間外労働時間は短い…50社(22.1%)
(3)月間所定労働時間は短く、時間外労働時間は長い…37社(16.4%)
(4)月間所定労働時間、時間外労働時間とも長い…72社(31.9%)

所定内・外ともに平均を上回っている企業(4)が31.9%と最も多く、反対に両者とも平均を下回っている企業(1)が29.6%と続く。

上記は個別企業ごとに分類したものであるが、次に業種別の状況も見るため、業種別の平均値から得られる所定労働時間と時間外労働の関係を[参考2](省略)に示した。今回の調査では、所定、時間外とも長い傾向にあるのは陸運、輸送用機器、不動産など、反対に両方とも短い傾向にあるのは化学、金融・保険、ゴム、ガラス・土石である(ただし、集計[回答]社数が少ない業種では、その業種の実態を表さないこともあるため留意いただきたい)。

さらに、年休取得率と時間外労働の両方のデータが得られた企業について、それぞれの平均値を境に、両者の関係を分類してみた(年休取得率の平均は52.5%、時間外労働の平均は18.9時間。いずれかが平均値と同じ場合は集計から除く。[図表]なし)。
(1)年休取得率は高く、時間外労働は少ない…54社(26.6%)
(2)年休取得率は高く、時間外労働は多い…54社(26.6%)
(3)年休取得率は低く、時間外労働は少ない…52社(25.6%)
(4)年休取得率は低く、時間外労働は多い…43社(21.2%)

今回の調査では、年休取得率と時間外労働の間に明確な相関関係(例えば、時間外労働が多い企業では年休取得が進んでいない)は見られなかった。

分布状況[図表19]
「20~25時間未満」が21.5%で最も多く、30時間未満に88.6%が集中

男女計の全産業を見ると、最低1.3時間から最高79.9時間まで、幅広く分布している(なお、最高値79.9時間の企業は、法内残業分・休日労働分を含むデータである)。「20~25時間未満」の21.5%が最も多いが、以下「10~15時間未満」と「15~20時間未満」が各18.4%、「5~10時間未満」14.9%というように、分布はバラついているものの、30時間未満までに88.6%が集中している。

男女別では、男性は「20~25時間未満」22.8%、「15~20時間未満」16.7%、「25~30時間未満」16.0%とバラつきが見られる。一方、女性は「5~10時間未満」30.2%、「10~15時間未満」29.6%、「5時間未満」13.6%で、15時間未満までに73.5%が集中している。また、30時間以上の割合を見ると、男性は16.0%なのに対し、女性はわずか1.9%である。

【図表19】時間外労働の分布状況
【図表19】時間外労働の分布状況

推移[図表20]
11年度以降は17時間台だったが、14年度は4年ぶりに18時間台に乗り、以後増加傾向にある

[図表20]に、09年度以降の時間外労働の推移を示した。リーマンショック(08年9月)後の09年度は、深刻化する景気低迷により08年度を2.8時間下回る16.9時間。ITバブル崩壊直後の01年度(16.8時間)とほぼ同水準となった。その後10年度は18.3時間と増加したものの、以降は11年度17.9時間、12年度17.3時間、13年度17.7時間と、17時間台で推移してきた。14年度は18.1時間で、4年ぶりに18時間台となった。15年度はさらに増加し18.6時間、16年度は18.9時間と12年度以降4年連続で増加している。

[図表20]に当所調査と併せて示した厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(事業所規模5人以上・一般労働者)では、09年度の12.0時間が最も少なく、13年度以降は14時間台で推移している。

【図表20】時間外労働の推移
【図表20】時間外労働の推移

時間外労働の算出・確認方法[図表21]
「申告時間を基に、事後に管理者が確認して時間外を算出」が48.1%

今回の調査では、時間外労働の算出・確認方法についても調べた。時間外労働は、本来は会社が事前に命じることで行われることが望ましいものの、労働者の裁量に任せ、事後に確認・算出する場合や、事前に申請書を提出させ、上司から承認を得て行う場合など、幾つかの方法が考えられる。

「申告時間を基に、事後に管理者が確認して時間外を算出」が48.1%と最も多く、「その都度、事前に届け出て、管理者が承認した分を時間外労働とする」が28.9%と続く。事後の確認はせず、「申告時間をそのまま時間外労働として算出」している企業は8.5%にとどまった。

規模別に見ると、事後の確認によって時間外労働を算出する割合は規模が大きいほど高くなっている(1000人以上57.4%、300~999人45.8%、300人未満39.0%)。一方、事前届出制によって時間外労働を確認・算出する方法は、1000人以上21.3%、300~999人33.9%、300人未満34.1%と、規模が小さくなるほど割合が高くなっている。

【図表21】時間外労働の算出・確認方法
【図表21】時間外労働の算出・確認方法
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